よう知らんけど日記

第70回 結石恐ろしすぎ。

2014.6.20 18:16

5月☆日
結石話、続報。 人生初入院。痛すぎて着の身着のまま、財布と保険証と携帯だけ持って、救急車で知らん病院に入り、そのあとはストレッチャーに乗せられたまま移動してたので、ここどこなんやろ状態で過ごす。翌日昼までは痛み止めが切れるたびに激痛復活やったけど、痛みが収まったら、点滴刺さりっぱなし以外はごく普通の健康状態。3日後には無事に退院となりました。
結石は一回なった人はまたなる確率が高いらしく、あの痛さはほんまにもう勘弁なので、結石情報をめっちゃ検索。ゆでてないほうれん草と、一般に高脂血症とか痛風とかと共通する酒・肉・脂肪系は悪そうとは知ってたけど、原因となるシュウ酸が多い食べ物に、紅茶とチョコレートが!! えー、紅茶1リットルは飲むからなー。お酒をやめろって言われるより、紅茶飲まれへんほうがつらい。それに、原稿書いてるときは、お茶とチョコレートが必需品なのよ。どうしよ。
他には、夜遅くに食べてすぐ寝る(寝ると何時間もトイレに行かないので濃縮される)、水分を取らずにあまりトイレに行かない、などが悪いそうなので、みなさまお気をつけください。紅茶は(コーヒーもココアも原因となる「シュウ酸」入ってますよ~)、一緒にカルシウムとったらええそうなので、牛乳入れてください。

5月☆日
ほんですっかり痛くなくなったし、「水飲んで歩いてください」(重力で石が下がってくる)と言われて退院し、たまった仕事を片づけつつ余裕で過ごして、3日後。ソファでテレビ見てたら急に腰が痛い。あれ? ちょっと無理な体勢で座ってたから? と、前回とは痛い場所も痛さの感じも違うのでぼけぼけで腰痛かと思ってたらどんどん痛くなってきて、えー、石出るまではまだ痛くなるんやとやっと気づき、病院でもらってた強力痛み止めを。効くまでの数十分、どんどん痛なってきてつらかった……。仕事関係の人から続々寄せられた経験談によると、大きい石を超音波で砕いたら砕いたで、そのかけらが出るたびに激痛とか……。結石恐ろしすぎ。

5月☆日
そんなに簡単に石は出てくれないようで、痛みに怯え、詰め詰めになった仕事に泣きつつも、これだけはなんとか、ということで痛み止めやら準備万端でやってきました、5月といえば日比谷野音のROVOです! 今年は13年目にして初のワンマン。いつもならROVOの登場は日が暮れてからやねんけど、この日はさわやかな初夏の空の下、わたしも体調がまだまだなので珍しく座ってゆっくり見てたので、音をじっくり聴けて、ああー、なんて美しい音楽なんやろうかと、ほんまにいい時間を過ごしました。こんなすごい音作れるなんて、この世でいちばんかっこええことやんな。
しかも、この日は、ライブ終了後に音源を買えるという、その日の音をその日に買って帰れるんですよ! 技術の進歩すごい。会場外で整理番号の順番くるのを待ちながら、完全に燃え尽きた若い男子たちが路上に転がって熟睡しているのを見ているのも、なんかしあわせな夜でした。

5月☆日
TBSチャンネル2で山田太一脚本ドラマの一挙放送。70年代、80年代の作品が主。1981年の『想い出づくり。』は、初の群像劇連ドラらしく、古手川祐子、田中裕子、森昌子の3人が主演。結婚したら自由にできないからその前に思い出を作りたい、と旅行を計画したとこから始まる話やねんけど、3人の年齢が24歳。そうか~、当時は24歳はもう嫁に行って当然、そしてその前に自分らしく、みたいな感じが「イマドキ女子」やったんやろね。
他の山田太一ドラマ見てても(上村一夫『同棲時代』を沢田研二・梶芽衣子主演でドラマ化したものも!)、同じチャンネルで放送してる向田邦子原案久世光彦演出シリーズ見ても、その他当時のサスペンス、刑事物見ても、男が女に無理矢理関係を迫るみたいな場面がやたらある。こんなんお茶の間でばんばん流れてたん? と心配になるような結構暴力的な場面も。もちろん一部のドラマから当時の世の中が全部わかるわけじゃないけど、男女関係のあり方とか、暴力の描き方とか、時代でだいぶ変わったんやってよくわかる。

それにしても、若いころの田中裕子の妖気がすごい。地味な顔やけど、それだけによりいっそうとらわれたら逃れられなそうな色気を発しまくり。そら、ジュリーを射止めたんやもんなあ。
ついでに「想い出づくり。」のタイトル、「。」がついてる。毎回のサブタイトルも全部「。」で終わってる。そうか~、「。」はモー娘。とかじゃなくて山田太一が発祥やったのか!

5月☆日
大阪に帰るのに品川駅乗り換えようとしたら、構内でガンダムのBlue-rayの販促イベントやってる。最初のシリーズの劇場版3部作なので、ブースから『めぐりあい宇宙』のエンディングテーマがエンドレスで流れてくる。わたし、これ聴くと完全に条件反射で泣きます。2秒で涙が流れてくる。ガンダムの劇場版3部作は小学3年以来100回以上見てて、しかも『めぐりあい宇宙』がいちばん好きなので、完全に体に染み込んでるんですよ。ちょっとイントロが聞こえただけで、冒頭の田中一郎のナレーションからア・バオア・クーまでが走馬燈状態でよみがえってしまう。なにに泣くのかって言われたら、あの宇宙空間で光が点滅してさびしい感じが、もうなんともいえないんですわ。あの寄る辺ない宇宙の空間に、ガンダムのすべてがある。……とか、いきなり品川駅で呆然としてしまって、不用意にガンダムを流すのはほんまやめてほしい(笑)。しかし、ここにきてBlue-ray BOXセット。どんだけ商売するねん! DVDのBOXセット持ってるのにうっかり買いそうになるやないですか!

5月☆日
さて、このところ月1ペースで東京ー大阪を往復してるのですが、東京から新幹線乗るときに楽しみにしてるのが「メルヘン」のサンドイッチ。メルヘンのサンドイッチ食べるために大阪に帰りたいぐらい。品川にも東京駅にも店舗あるねんけど、とにかくめっちゃ種類がある。「ホタテフライとアスパラ」とか「チキンしそロールカツ」とかおかず系もおいしいし、なによりフルーツ系が! 生クリームにフルーツ入ってるやつね。今回は「甘夏&いちご」にしたけど(おいしかった!)、マンゴー、びわ&キウイ、バナナ、小倉、とおいしそうすぎて選ばれへん。
そして復路は、新大阪で「自由軒カレー煎餅」と「点々の餃子」と「中之島ビーフサンド」と「551」と「りくろーおじさんのチーズケーキ」と……。食べ過ぎやね。

5月☆日
5月下旬のこの時期に新幹線に乗ると、水の張られた田んぼがきれい。湖にいるみたいに、そこらじゅう水で、景色が映ってきらきらしてる。それに「麦秋」で麦畑が実ってるのもたいへん美しい。麦の穂は稲よりオレンジっぽくて、黄金色な感じやなあ。

5月☆日
「天才画家の肖像 曽我蕭白 奇想天外の美」(BSプレミアムで再放送)。蕭白の絵もエピソードももちろんおもしろかったんやけど、衝撃は解説するために取材されてた日野日出志。『蔵六の奇病』ですよ、『地獄小僧』ですよ、目玉うまうまですよ。黒い表紙の恐怖漫画の中でも強烈で、 同じ空間に漫画本があるだけで怖くて、小学校の教室で友達が回し読みしてるのですらやめてほしいと本気で怯えておりました。
その日野日出志さん、初めてお姿を拝見したのですが、白髪ポニーテールに作務衣のこぎれいなおじさま。え~っっっ!? 仕事部屋も蛍光灯に照らされたマンションの一室、資料は山積みやけどすっきり片づいてる。目につくのは大きめの神棚ぐらい。
これはまれにみるギャップありすぎ事例やわ~。そりゃあ作者と作品が別なのはよくわかってるけど、やっぱり薄暗いどんよりしたぼろぼろの部屋で背中を丸めて咳込みながら描いててほしかった。しかも、パソコンやし! ペンタブ使こてはるし! そしてささっと絵を描きながら、いかに不快感を演出するかを理路整然と解説してはって、わたしはまさにその演出に思うつぼな子供やったわけやから、作家としては超有能な人なんやなあ。ま、あのすっきりしたお顔であんな漫画描いてはるいうのも、底知れない怖さがあるけど。
そして5月も終わろうとしてますが、まだ結石は出てきてません……。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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