「仕事もお金もなくても、劇場にくれば楽しかった」…大阪“マンゲキ卒業”芸人が語る、漫才を磨き続けた日々

「よしもと漫才劇場」の卒業メンバー3組にインタビュー!
今年7月末、大阪の若手芸人が活躍する「よしもと漫才劇場」(通称・マンゲキ、大阪市中央区)から、芸歴18年目以上となる芸人が卒業する。
「baseよしもと」「5upよしもと」「よしもと漫才劇場」と長年劇場を支え続けてきた祇園(木﨑太郎、櫻井健一朗)、吉田たち(こうへい、ゆうへい)、デルマパンゲ(迫田篤、広木英介)の3組に、漫才師として走り続けてきたこれまでの日々や、卒業後の展望を語ってもらった(※ラビットラは残念ながらスケジュール都合で欠席)。
■ 楽屋のソファ、シャワー室…マンゲキで過ごした、かけがえのない時間
──「よしもと漫才劇場」での日々を振り返ると、どんなことが印象に残っていますか?
ゆうへい:やっぱりみんなで楽屋にいるのが楽しかったですね。
広木:そうですね。楽屋に黒いソファがあるのですが、僕はもう出番以外は一切動かんぐらい、ずっとソファに座っていて。そういったことができなくなるのは寂しいですね。
迫田:僕は逆で、楽屋がうるさいときはイヤだったので。これからは自分のペースで空間を作れるのは嬉しいですね。

櫻井:そんな格好しているのに繊細なんや・・・! 僕はみんなと違って、シャワー室を楽屋として使わせてもらっていたので。でも、昨日は水が出なかったし、櫻井を入れないようにしているのか、備品もちょっとずつ置かれるようになってきているんですよね。
迫田:着替えとかも全部シャワー室でやっているんですよね? あまりにも着替えるところを見ないから、一時、櫻井さんに女性説が出てた。祇園は実は男女コンビじゃないかって。
櫻井:ひとりが落ち着くからね。シャワー室、ちょうどいい場所なので誰かに引き継ぎたいなという思いはありますね。使いたい人が殺到するかと思っていたんですけど、まだ今は問い合わせもないですね。

木﨑:楽屋のテレビでNHKがついていたら、迫田がいるのがわかるんですよ。日曜日の寄席だと、ずっと『NHKのど自慢』を見ている。「今のは合格やな」とか、のど自慢研究家みたいに勝手に解説していて。
迫田:『NHKのど自慢』に出ているのは素人なのに、僕らが漫才劇場の寄席で相手にしているお客さんの倍以上の人のお前で、ひとりで歌っているんですよ。その姿に、チカラもらうんで。
木﨑:そういう目で見てたんか! ただ好きで見ているかと思ってたわ。
ゆうへい:マンゲキメンバーが賞レースに出ていたら、みんなで一緒に応援する時間も、一体感が良かったですね。
こうへい:吉田たちはクーラーが苦手なので、夏場でも楽屋をキンキンにして欲しくないんです。でも、森ノ宮の漫才劇場だと僕らがいない間に、天才ピアニストのますみが温度を下げて、僕らがまた上げてと攻防をしていて。そんなことも楽しかったです。
■ お金も仕事もないハングリー時代「オロナミンCで空腹満たした」
──3組とも「baseよしもと」「5upよしもと」を経て「よしもと漫才劇場」に来られましたが、当時の気持ちなどは覚えておられますか?
櫻井:僕らの時は、劇場に芸人が自由に飲めるオロナミンCの自動販売機があって、それで空腹を満たすような時代だったんですよ。

こうへい:タフさはちゃうな、と思いますね。ハングリー時代があった、僕らの方が強い気はしますね。
広木:とにかくお金がなかった! それなのに、月の1/3くらいは飲みに行っていて、本当にどうやってお金をやりくりしていたのか。

櫻井:僕とこうへいは、先輩のお家に間借りして住ませてもらっていましたね。
こうへい:1万円で三畳一間、カーテンで仕切っただけの部屋に住まわせてもらっていたけど、ほぼ玄関で劣悪な環境ではありましたね。ベランダにビール瓶が投げ込まれたこともあったし。
木﨑:オートロックのマンションのはずなのに、朝起きたら、隣に知らないおじさんが寝ているような、そんな治安の悪い街に住んでいました。でも、ラフ次元・梅村賢太郎という“銀行”があって、結構融資をしてもらっていたので、金銭的には助かっていましたね。
広木:僕はずっと家賃滞納していたら、仕事に行こうとドア開けようとしても開かなくなっていた時があって。無理やりドアを蹴って外に出てみたら、大家さんがドアにガムテープをびっしり貼っていて。家賃払わないなら出ていけ!じゃなく、払わないならずっと家におれ!って。

──今の若手芸人さんからは聞くことがないエピソードですね。お金がなくて辛くても、漫才師を辞めなかったのは、なにかモチベーションがあったのですか?
ゆうへい:それでも楽しかった。というのはデカいかもしれないですね。お客さんが見に来てくれたら嬉しいし、ライブも楽屋も楽しくて。
迫田:なんか今はお金があるみたいな話はイヤやなぁ。
こうへい:今もあるわけじゃなくて、当時がなさすぎたって話なだけやから!

■ 劇場には感謝しかない「寄席こそが、吉本芸人の強み」
──マンゲキの卒業はどのように知ったのですか?
ゆうへい:『THE SECOND』で負けた2日後くらいにマネージャーからLINEがきたので、このタイミングかい! とはなりましたが、いつ卒業を通達されても、それはそうやろなとは思っていました。
櫻井:劇場公式サイトのプロフィール欄は芸歴順に並んでいるんですが、どんどん端っこなっていくんです。自分たちがもう一番上になっているから、次のタイミングだろうなとみんな覚悟はあったと思います。
木﨑:毎年、春になると噂も流れてきますしね。ちなみに、2年前に間違えて噂を流したのは僕です。
広木:噂の出どころの人がわかることってあるんや!

──みなさん、すごく落ち着いておられたんですね。前回お話を伺ったマグリットさんは泣いてしまったと話されていました(第1弾はこちら)。
木﨑:僕らはすでに「5up」で卒業を経験していますからね。あの時は、年齢も20代だったし、やばいやばいと焦る気持ちがありましたね。
──漫才師として、「よしもと漫才劇場」だから成長できたと思えることはありますか?
広木:土日に開催される寄席ですね。あれには大感謝です。
こうへい:僕らのことを知らん人もいっぱい来てくれるので、そんな人たちの前で漫才できるのはやっぱり楽しいですしね。
木﨑:賞レースの後にチャンピオンが生まれて、その人を見に来た一見(いちげん)さんにも知ってもらえる。ツートライブが『THE SECOND』で優勝した次の日の寄席で、僕らがツートライブの後の出番でトリだったりして。その時は、絶対順番逆やろ~と思うけど、なんとかせなアカンなと、そういう経験がチカラになっているのかなとは思います。

こうへい:ビビらなくなりましたね。学園祭で全盛期の8.6秒バズーカーの後に漫才しているので、『THE SECOND』などの予選で、どれだけ前の人達がウケていても絶対大丈夫と思えるようになりますね。
ゆうへい:1回、ふなっしーの後で漫才したこともあったよな。
櫻井:数年前まで千鳥さんとか来てはったよな。 かまいたちさんもいたし、今思うと、すごい劇場だし、すごい香盤(出演スケジュール)。ネタの中で僕らの名前を出してもらったときに、「わ、名前を言ってもらえた」と喜んだりして。
あと、僕らの後に濱田祐太郎くんの出番があるときは、「僕の目が見えたら、祇園のネタのあの部分を見てみたい」と言ってくれたりする。ちょっと楽しみで、僕はいつもそれを見届けてから楽屋に帰るようにしています。
ゆうへい:アインシュタインさんも、吉田たちのあとに出たら絶対に「僕らも双子でやっています」って言ってくれますね。

──そういう芸人さん同士の絡みがあるのもいいところですね。卒業後の目標はありますか?
広木:デルマパンゲはこれからツアーが始まります。今年は5カ所回るのですが、年々場所を増やしていけたら嬉しいですね。
迫田:僕は個人的に服を売ったりもしているので、デザインをして、パリコレみたいなでっかいショーをやりたいです。芸人をモデルにして、たまにケツを出しているヤツがいたりするのもいいかなと。

木﨑:今までは劇場の出番があるから、あまり長期のロケなどに行けなかったので、遠い場所にも行ってみたいですね。いろんなお祭りの営業に行ったりするのもいいな。
櫻井:確かに、外国のロケとかいいですね。
広木:2人の案を合致させて、いろんな海外の祭りを回っていったらいいんじゃないですか?『世界の果てまでイッテQ!』みたいな感じで。
木﨑:それだと漫才できひんから! 外国だと漫才しても伝わらんから。

ゆうへい:僕個人としては、吉田たちを見分けてもらいたいという目標があるので、漫才を軸に置きつつも、1人でもいろんな活動が出来たらいいなと思いますね。僕は子どもがいるので、NHKのEテレの教育番組などの声もやってみたいし。
迫田:じゃあ俺も、目標をそれにします。
櫻井:いや、Eテレにしては金髪すぎるやろ!
こうへい:僕は後輩を集めてもっとサッカーの時間を作ろうかな。「吉田たちシティ」というサッカーチームをやっているのですが、ラジオに呼んでいただいた縁で、桂文枝師匠にユニフォームを作っていただいたので、そこもアピールしていかなきゃ。次のワールドカップは仕事で行けたらいいなぁ。

■ 卒業芸人が本気で期待する”次のスター”とは
──みなさんが卒業された後の「よしもと漫才劇場」は、どんな風に変化すると思いますか? 雰囲気とか変わりそうですか?
木﨑:いやぁ、ぼくらが卒業しても変わらないと思いますよ。楽屋のソファに座れる人が増えて、今よりのびのびできるくらいじゃないかな?
ゆうへい:面白い芸人がたくさんいるので、僕らが抜けたらその分、また誰かが台頭してくると思いますよ。今までもそうでしたしね。

迫田:一歩一歩しっかり自分の道を踏みしめているのは、「幸のとり」と「彼岸花」です。彼岸花はちゃんと人気も出てきているのですごいです。本当におもしろい。
広木:僕も全く同じ、この二組ですね。
木﨑:人気が出て欲しいというか、「盆と正月」はステージ数のわりにめちゃくちゃ練習しているので、こういう人が日の目を見て欲しいと思います。ステージ数はまだ月に3回くらいしかないですが、毎日めちゃくちゃ練習しているので。努力が実って欲しいですね。
櫻井:「ナナ」の漫才好きですね。なるほどね、こんなんしはんねんや~と、すごく楽しみに見させてもらっていますね。
こうへい:僕が注目しているのは「東雲」ですね。単純にネタがすごく面白い。
ゆうへい:「天才ピアニスト」。
こうへい:誰よりも賞とレギュラーも番組を持っているわ!
ゆうへい:一緒に企画ライブをやっている、「ぎょうぶ」や「丸亀じゃんご」、「イチオク」あたりは、もっとちゃんとやって頑張らなあかんで、と思っています。
櫻井:なんで僕らの卒業のインタビューでピリッとさせるねん!
◇
3組は、7月8日に『デルマパンゲ迫田の((巨爆笑))ポスト大会』、7月24日に祇園単独公演『お待たせしました祇園でした。』、7月30日に吉田たち卒業公演『base、5up、マンゲキ17年間本当にありがとうございました。』を開催する。
ダブルアート、マイスイートメモリーズ、シゲカズです、マグリットによる
「マンゲキ卒業芸人」対談の第1弾はこちら!
◆7月8日『デルマパンゲ迫田の((巨爆笑))ポスト大会』

「卒業するということに、一切触れないでやろうと思っていて、通常通りにやっているライブのようにするつもりです」(左、迫田)
◆7月24日「祇園単独公演『お待たせしました祇園でした。』」

「僕たちの劇場人生を振り返りながら、最近のネタ、思い出のネタなどをやります。昔好きやった人や、最近好きになってくれた人にも楽しんでもらえるように作っているので、よろしくお願いします!」(右、櫻井)
「昔やっていたコントもやります。昔は漫才じゃなく、こんなことやってたんや!なんて思いながら楽しんでもらえたらうれしいですね」(左、木﨑)
◆7月30日「吉田たち卒業公演『base、5up、マンゲキ17年間本当にありがとうございました。』」

「劇場にいた17年間のすべてを、3時間に詰め込みます」(右、ゆうへい)
「17本のネタをやります。初めて見る人も、久しぶりに見る人も楽しんでもらえると思います」(左、こうへい)
取材・文/西村円香
写真/バンリ
提供/吉本興業
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