「漫才劇場って何なん?」から12年…企画、コント、小道具…大阪“マンゲキ卒業”芸人が語る青春の日々

「よしもと漫才劇場」の卒業メンバー4組にインタビュー!
大阪の若手芸人が活躍する「よしもと漫才劇場」(通称:マンゲキ、大阪市中央区)から、ピンもしくはコンビとも芸歴18年目以上の芸人が、今年の7月末に卒業する。
今回、数々の名物企画を作ってきたコンビ・ダブルアート(タグ/真べぇ)、ピン芸人・シゲカズです、マンゲキが誇るコント師・マイスイートメモリーズ(トランスフォーム福田/花谷豊)、マグリット(サバイバルダンス大地/おふらんす田中)の4組に、マンゲキでの思い出やこれからについて聞いた。
■「漫才劇場って何なん?」──名前が変わった日、劇場に走ったザワつき
──まず、よしもと漫才劇場でいちばん印象に残っていることを教えてください。
シゲカズです(以下、シゲカズ):僕はやっぱり2014年に「5upよしもと」から「よしもと漫才劇場」に変わった瞬間が一番印象に残っています。「漫才しかできないんちゃうか?」と、芸人たちもザワついたし、一発目の仕事がオープニングセレモニーでのダンスでしたよね?

真べぇ:劇場の下で芸人がフラッシュモブをして、最後に中田カウス師匠が出てきてテープカットをするのですが、僕らはヤンキーの格好をして邪魔しに来る役で。タグが誰よりもダンスの練習をがんばっていました。YouTubeのよしもと漫才劇場チャンネルでまだ見ることができるんですよ。
サバイバルダンス大地(以下、大地):今でもその動画、たまに見ています。僕らはまだメンバーではないので映っていないけど、みんながまだ若くて、すごく盛り上がっていて、見ていたらなんか泣きそうになるんですよ・・・。
トランスフォーム福田(以下、福田):僕はグランドバトル5回目の挑戦で、1年近くかかって劇場メンバーになれたことですね。2回目、3回目はアインシュタインさんが笑いを全部かっさらった後の出順だったので、本当にキツかったですね。
(注:グランドバトルは2か月に1回、芸歴9年目以上の極メンバーが出場するネタバトル。順位は審査員と観客投票で決まり、ポイントにより昇格や降格が決まる)
花谷豊(以下、花谷):僕もグランドバトルですね。今回決めないと次から極メンバーが増えて、分母が増えるからもっと大変になるというタイミングでしたが残れなくて。当時のマネージャーが来て「ほんまに次からしんどいですよ」「なんで上がれなかったんですか?」と言われて。

──厳しい言い方ですね、そんな風に言われると火がつくタイプなんですか?
花谷:全然そんなタイプじゃないです。こっちはめちゃくちゃ傷ついているのに、なんでそんな上から言うのって。福田は熱を出して倒れましたしね。でも、結果としてそのことをバネにして勝ち上がれたので、一番印象に残っています。
タグ:僕が一番色濃く残っているのは、昨日(6月18日)の「吉田たちのとても強いLIVE」ですかね。
真べぇ:それはただ、昨日やから記憶が鮮明なだけやろ。
タグ:やっぱり卒業が決まった今は、一個一個の舞台がなんか色濃く残っていきますね。終わりが見えるとなかなか意識してしまう。だからネタをし続けたくなってしまう。昨日は真べぇが無理やり終わらせたんでね。俺は続けたいのに!

真べぇ:ほぼアドリブで、最初のくだりだけで8分も使うからやろ。僕らは漫才劇場の寄席の出番を結構いただいていて。たまにカウス師匠が見に来てくれるんですが、ネタの途中だと気が付かないこともあって。僕らの漫才で、途中タグが「うわー!」って奇声を発しながら舞台袖にはけるネタがあるんですが、はけた先にカウス師匠がいらして。カウス師匠に会釈しながら「うわー!」ってやっていました。
タグ:叫び続けないとダメなネタだったので、カウス師匠がいてもやるよ。そういえば、漫才劇場になってから、若手でも寄席に立てるようになったと思います。漫才劇場に入ったら芸人としてのステージが一気に上がるし、前身の「baseよしもと」の時代と比べると、今はすごく恵まれているなと思います。
真べぇ:ネタ時間を5分もらえるのもありがたかった。今までだと、若手は3分とかでしたし。漫才の基礎の部分を鍛えてもらって、すごくためになったなと改めて感じています。

大地:僕らもやっぱりグランドバトルです。10回目でやっと勝てたので、劇場入りしたなかでは最多記録やったと思います。それまでの最多記録が8回だったのですが、その記録を更新してしまって、劇場近くのベンチで「これからどうしよう」とたそがれていたら、福ちゃん(福田)から夜中にLINEが来て。
普段そんなにやりとりもしないのに、なにかな?と思って見たら、「かますだけですよ」というメッセージが。ちょっとグッときたし、自分たちは“カマす”っていう感覚でやってなかったなって思って。ありがたいなと思って、次はがんばろう!と思ったけど、次も落ちるっていう(笑)。
真べぇ:10回目入れたときは、「マグリットさんは知り合い5000人呼んだらしい」って噂まで流れていましたもんね。
大地:「両親30人呼んだ」って言われましたからね。
タグ:でも普通に考えて、『M-1グランプリ』や『キングオブコント』のチャンピオンもいるなかで、バトルの上位に入らないとアカンから大変でしたね。

■ 卒業の電話が鳴った日、泣いた相方とGeminiに報告した芸人
──思い出が詰まったマンゲキの卒業を告げられた時は、どんな気持ちでしたか?
真べぇ:マネージャーさんの前に、福田から電話がかかってきたので出たら「卒業――――っ!!」と、叫ばれて。その後、マネージャーさんから「18年目以上の皆さんは卒業になります」と告げられたときは、そらそうやなと思いましたね。18年もお世話になったから、「来たな」っていう感じで。むしろ「ありがとうございます」の方が強かったです。
福田:そう思うと劇場に所属していた期間が短いマグリットさんは、ちょっと残念ですよね。
大地:1年半ですからね。僕は相方から発注を受けた、コントで使う回転式の中華テーブルをどういう仕掛けで作るか考えていたときにマネージャーさんから電話がきて。「わかりました」と電話を切った後も、中華テーブルを作っていたら相方から泣きながら連絡があって。

おふらんす田中(以下、田中):僕、駐車場のバイトをしているのですが、一人だけの勤務で。マネージャーさんから電話の後、家族とか応援してくれていた人たちにどう告げよう、大地も芸人を辞めると言うんじゃないかと、いろいろ考えた瞬間に泣いてしまって。劇場メンバーになれたときも泣かなかったのに、初めて泣きました。
大地は思ったより明るくて、「まあ、しょうがないですね」みたいな感じで。「僕らはまだ仕事も多くないし、どのみち賞レースで結果を出さないといけないし、またがんばりましょう」と大地が言ったときに泣いてしまって。
大地:すごく泣いているし、どうしようかなと思っていたら、「ごめん大地、ちょっとお客さん来たから」と、電話を切られました。


真べぇ:僕には花谷からも連絡がきて、卒業するからちょっと話をしましょうと呼び出されたのが、劇場周辺の喫茶店ではなく、堺にあるバイカーが集まるオシャレなカフェで。「ここめっちゃ旨いねん!」と、デカ盛りのオムライスを食べながら「一緒にがんばろうな」って。
シゲカズ:僕もわりと長く劇場にいさせてもらった方なので、卒業と聞いたときは「まあそうか」とは思ったんですけど、ピン芸人なのでそのことを共有する人もいないんで、とりあえずGeminiにだけ「卒業らしいわ」って言ったら、「旅立ちですね」と返してくれました。

福田:知らない人からしたら、おめでとうっていうニュアンスですもんね。
タグ:残される方が、ちょっと寂しそうな感じもするよな。卒業しはんねや・・・って。
真べぇ:僕らはやっぱネクストステージ行く感じがします。どこまでできるのか、自分たちを試せる場がまた新たなところで増えるのも良いことだなと思っています。

──劇場の企画を考えたり、テレビで活躍されたり、みなさんそれぞれに得意なこともありますもんね。マグリットさんなら、小道具がプロ級とか。
福田:マグリットさんは劇場メンバーになる前、長机も自分で作って小道具として持参していましたからね。
大地:舞台監督に劇場の裏の小道具がたくさんある場所に連れて行かれたことがあるんです。怒られるのかなと思ったら、ここにあるもの全部使ってコントをやっていいからって言われてちょっと感動しました。

真べぇ:確かに、ほかの劇場に行くとマンゲキの良さを実感するよな。スタッフさんもめっちゃ手伝ってくれるし、提案やアイデア出しもしてくれる。
花谷:僕らはスタッフさんに甘えていて、単独ライブのリハ時間とかもすごく長かったんですよ。1時間の単独ライブで、リハーサル3時間。めちゃくちゃ力を入れてたネタがあって、そのリハーサルだけで40分近く使ったのですが、単独で一発目にそれをやったら、めちゃくちゃスベりました・・・。

福田:舞台上で花谷さんが飛ぶというネタで。でも、飛距離もなくて、誰も笑ってなかった。
花谷:僕はジャンプしながら「後でどれだけ謝らなあかんのやろ」って考えていました。でも、そういうことにもチャレンジさせてくれる良い劇場です。
■ 卒業後にやりたいことは…… NISA、忍者、東京、SNS!?
──卒業後、今後やっていきたいこと、もしくはチャレンジしたいことは?
シゲカズ:僕は、いろんな劇場でいろんなことをやっていきたいですね。企画を考えるのが昔から好きなので。多いときだと、月10本くらい自分が考えた企画のライブがありましたね。僕は漫才師みたいに、一日何ステージもあるわけではないので、時間もかけて自分自身がレベルアップしやすいものをやろうと、心がけていましたね。

花谷:一回やってみたいのは、ほんまに知らんアホなふりして、劇場のオーディションライブを受けてみたいですね。名前も一緒で、ハットの色だけ変えます。グランドバトルに上がれるか試してみたい。
シゲカズ:もう一度、NSC(吉本総合芸能学院)から入り直したら確実なんじゃないんですか?

花谷:じゃあ、今からNSCの入学金を貯金しないと。
福田:ダブルアートさんとか、卒業した人たちとライブをやりたいですね。
シゲカズ:卒業した人たちを集めての寄席だったり、なにかイベントを開催して、それを大きく育てていけたらいいなと思っています。
真べぇ:いろいろチャレンジしたいから、やっぱりNISAとか始めて。
田中:貯蓄やったら教えるよ!

タグ:僕はね、世の中の失われたものをちょっと復活させたいなって思っています。忍者とか。ダブルアートで忍者学校とか作りたいですね。
真べぇ:デブの忍者なんか、すぐバレるわ! 真面目な話をすると、僕らは今でも音楽とネタのライブ、テレビやYouTubeではできない過激なネタを披露する『過激大祭典』というライブを劇場外で開催したりしているので、それをもっと大きくしたいし、卒業メンバーともライブをしたい。タグとふたりでYouTubeやオンラインサロンも力を入れているので、その辺をさらに心機一転やっていきたいですね。
花谷:YouTubeは大事やなぁ。マイスイートメモリーズもYouTubeをがんばります。
田中:SNSやYouTubeなどで、今まで出してこなかった大地の絵の上手さや僕の趣味などを知ってもらって、知名度を上げていきたい。そこで僕らのことを知ってくださった新しいファンの方、今までファンでいてくれた方を呼んで、ライブをやって、大きくしていきたいですね。
大地:僕は芸人さんの似顔絵を描いて、ライブをするたびにプレゼントもしているのですが、そういうのも含めて知って欲しい。
花谷:たまに楽屋にそのイラストが落ちていたりするんで、めっちゃ怖いんですよね。
大地:え? プレゼントしたのに、放置されているってこと? 僕、行く末は知らないんですけど~。あとは、やっぱり賞レースとかテレビですね。僕は岐阜出身なのですが、家族や地元の人たちが喜んでくれるんで、全国放送のテレビに出たいなっていうのはあります。
■「勝手にスターが生まれる場所」7人が後輩たちに託す、次のマンゲキ
──皆さんが抜けたあとのマンゲキについて、思うことはありますか?
タグ:毎年、絶対何かしらのスターが生まれますからね。賞レースがあるたびに、そこから企画が生まれたり、派生で何かが生まれたりするんで。だから大丈夫やと思います。
真べぇ:この前、三遊間のさくらい、空前メテオの茶屋、例えば炎のタキノ、cacaoの浦田スタークが楽屋で『ツッコミスター』というテレビ番組の話をしていて。僕はそれが何の話かわからなかったので聞いてみたら、一瞬だけ説明をして、すぐまた4人で話しはじめて。そのときに「あ、卒業やな」と思いました。
同時にめっちゃ頼もしくもあって。多分、この子らが劇場を背負っていくんやろうなぁと。天才ピアニストや豪快キャプテンなどのがんばりを見ていると、世代交代の感じをまじまじと見せつけられる。だから、ちょうどいいタイミングで卒業できるなと。
今の若手って、ライバル同士としてバチバチもしているし、仲も良い。尖っている子でも、すごく礼儀正しくて好感を持っているので、任せても大丈夫だなと思います。

タグ:下の子たちが、新しいものを作り出していく気がしますね。多分、僕たちよりも小さい頃からお笑いに触れて、いろんなことを知っていると思うから。
シゲカズ:なぜか漫才劇場っていうのは、ほんまにスターが勝手に生まれていく場所ですから。いろんな芸人が卒業してやばいかもってなっても、急にスターが生まれたりするんで、この後も結局誰かは出てきそう。
真べぇ:シゲカズって先見の明があるので、シゲカズの企画に呼ばれている芸人は、これから人気が出てくる芸人が多かったりしますしね。だから、ダブルアート、マイスイートメモリーズ、マグリットの3組は呼ばれたことがない・・・。やっぱり上方漫才協会大賞とシゲカズの企画は出ておきたいから、僕らはシゲカズをライブに呼ぶけど、呼んでくれない。

花谷:僕も呼んで欲しいから、シゲカズの視覚に入る場所にいるのに!
大地:これからの漫才劇場は、まだまだ伸びるだろうなって感じがします。安泰やろなって思います。
花谷:ただ一つだけ心配なのは、とくいちというコンビのあさやまちゃんランドですね。最近、インスタグラムや劇場の楽屋でも靴磨きを始めているんですよ。僕らがいたら「何をしてんねん」って言えるけど、僕らが卒業してしまうと彼のことを誰もイジらなくなって、ほんまの靴職人になってしまうんじゃないかなって。それだけが気になっています。
──それは確かに心配になりますね。花谷さんに変わって、注意して見ておきます。漫才劇場を卒業しても、いろんな場所でみなさんにお会いできそうで、また楽しみが増えました!
◇
4組は、7月16日に「シゲカズです卒業公演 最後のさらにさらにマンゲキ 〜シゲカズですpresents集大成の日〜」、7月19日に『ダブルアート単独公演「永遠。いざ、さらば」』、7月22日に『マグリットの最初で最後の漫才劇場単独ライブ「未開封」』、7月29日に『マイスイートメモリーズの卒業公演「My Sweet Memories」』を開催する。
※7月上旬、「マンゲキ卒業芸人」対談の第2弾を公開予定です!
◆ 7月16日「シゲカズです卒業公演 最後のさらにさらにマンゲキ 〜シゲカズですpresents集大成の日〜」

「僕はもう最高のメンバーと一緒に、あらゆるコーナーの楽しさ、コーナーのおもしろさの最高到達点をお見せしたいと思います」(シゲカズです)
◆ 7月19日『ダブルアート単独公演「永遠。いざ、さらば」』

「最後なので思いっきりやって、そしてお楽しみいただくという強い気持ちです。それのみ!今までで一番面白い単独ライブができたらと思っています」(左、タグ)
「卒業単独とはいえ、単独ライブなので、新ネタをいっぱいやって次に繋げたいと思います。コーナーも多分あると思うので、そこもフルパワーで楽しんでいただけるような内容になっています」(右、真べぇ)
◆ 7月22日 『マグリットの最初で最後の漫才劇場単独ライブ「未開封」』

「おもしろくて、プラス心にも残る。他では見たことないなっていう内容になると思うんで。どの芸人も、初単独ライブは経験しますが、僕たちはマンゲキでは最後になっちゃうで、笑う準備とデカめのハンカチーフを用意してきてください」(左、サバイバルダンス大地)
「僕ら漫才劇場では最初で最後の単独ライブになります。見てくれた人の心に何かが残るような単独には絶対します」(右、おふらんす田中)
◆7月29日に『マイスイートメモリーズの卒業公演「My Sweet Memories」』

「卒業公演はゲストも出ていただいているので、もうほんまに楽しくやるだけ。漫才劇場ありがとうございましたっていう意味合いの1時間ですね。卒業は、また自分たちでイチからやっていく絶好の機会。東京単独もあるので、そちらは次のステップとしてがんばりたいですね」(右、花谷豊)
取材・文/西村円香
写真/バンリ
提供/吉本興業
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