兵庫県伊丹市、籠城中のAさんからのお悩み相談です。「聞いてください。職場で“怪事件”が多発しています」

共感できる?職場のお悩み…
本日のお悩み相談のコーナーです。今日は兵庫県伊丹市のAさんから、こんな相談が寄せられています。
「聞いてください。今務めている職場がヤバすぎます。
もともと派閥がたくさんある職場なのですが、最近、高額の領収書がなくなるとか、出入りの業者が急に姿を見せなくなるなど、”怪事件”が続いていて、職場の空気がギスギスしています。
肝心の社長は、問題を全部チャットGTPに丸投げしているという噂もあり・・・私はどうすればよいでしょうか?」
「そんな会社今すぐ逃げて!!」「え、うちの会社やん」と思ったあなた、実はこれ、現代の話ではなくて、実在の戦国武将・荒木村重が主人公の映画『黒牢城』(6月19日公開)の世界。
織田信長さんとの関係を切り、「有岡城」(兵庫県伊丹市)を拠点とする社長の荒木村重さん。そんななかで、社内(城内)で事件が次々と起こってしまう。裏切りモノがいるようだけど、誰なのか? そこで荒木さんが頼るのが、黒田官兵衛さん。さて、投稿主のAさんは早々に退職した方がいいのだろうか?(退職できればの話だけど・・・)
上記のお悩み相談を『黒牢城』に当てはめてみたら、こうなる!?(タップして開く)
「聞いてください。今務めている職場がヤバすぎます。
もともと派閥がたくさんある職場なのですが、最近、高額の領収書(茶壷の名品「寅申」)がなくなるとか、出入りの業者僧侶・無辺)が急に姿を見せなくなるなど、”怪事件”が続いていて、職場の空気がギスギスしています。
肝心の社長(荒木村重)は、問題を全部チャットGTP(黒田官兵衛)に丸投げしているという噂もあり・・・私はどうすればよいでしょうか?」
「第166回直木三十五賞」を始め、数々の文学賞に輝いた作家・米澤穂信によるヒット小説『黒牢城』を、黒沢清監督が長編映画化。実は、他人ごとではない今の問題にもつながってくる。ビジネスドラマ的な楽しみ方もできる、異色の映画の見どころを紹介する。
◆ 次々に起こるトラブル…『黒牢城』の世界
【解決すべき問題は?】
(1)密室で少年を殺したのは誰?
(2)いきなり変貌した敵の○○
(3)もう1人の殺人と消えたお宝
(4)裏切り者がいる!?

ただでさえコンフリクト(争い)があるのに、4つも問題が起きてしまう。はたして、だれがどのように解決するのか──。容疑者は、密室と化した社内(城内)に居る誰か。社内のステータスと人間関係からチェックして、犯人になりそうな人を想像しながら一読を。

【謎を探るのはこの2人!】
現代だったら▶誰を信じるべきか…悩める社長
荒木村重(本木雅弘)

社員の退職、空気の悪い会議、そして不可解なトラブルが続き、組織の空気は崩壊寸前。強気だけど、誰よりも不安。「誰を信じればいいんや」という恐怖に追い詰められている(でも弱音は部下に見せられへん…)。
●映画『黒牢城』では…
主君を追放して摂津国を手に入れた下剋上大名。武勇に優れ茶道にも通じている。あることがきっかけで織田信長に謀反を起こすが、城の内外で怪事件が連続発生し、「見えざる敵」を探し回っている。
現代だったら▶社長が秘密裏に抱える、AI級知性の顧問
黒田官兵衛(菅田将暉)

交渉人としてやってきたエリート。今は地下に隔離されているが、頭脳はキレッキレ。社長の村重が社内トラブルをこっそり持ち込んでくると、現場を見ずともデータだけで解決策を提示してくれる。ただし会社や村重への忠誠心はゼロで、皮肉や愚痴を交えながらアドバイスをくれる。
●映画『黒牢城』では…
織田家の使者として有岡城を訪れ、そのまま地下牢に幽閉された、戦国トップクラスの軍師。人並み外れた分析力を活かして、村重からの情報だけで事件の真相を明らかにしていく、戦国版の安楽椅子探偵。
【裏切り者は誰だ?!有岡城の人々】
現代だったら▶経営陣の裏を熟知する社長夫人
千代保(吉高由里子)

社長の一番近くにいて、会社の裏事情や社長の本音を誰よりも把握しているキーマン。表立って経営に口は出さないが、社内の人間関係のパワーバランスを冷静に見極めている。だけど、過去にトラウマがあるようで・・・。
●映画『黒牢城』では…
村重の妻。熱心な一向宗信者で、長島一向一揆の虐殺の生き残り。村重が唯一弱音を吐ける賢妻だけど、精神的に危いところが。
現代だったら▶表面的には頼もしい、古参幹部
荒木久左衛門(青木崇高)

会社の行く末を心配している、社長を昔から知る古参幹部。コンプライアンスよりも「社長の機嫌」や「社内の派閥」を優先するため、事態を余計にややこしくする典型的な保身派上司。
●映画『黒牢城』では…
村重の下剋上を助けた重臣。なにかと村重を鼓舞する熱血漢だけど、実質的なナンバー2だけに、後釜を狙ってないとも限らない?
現代だったら▶社長への忠誠心100%な若手エース
乾助三郎(宮舘涼太)

実直で、何より社長への忠誠心が人一倍強い。「どこまでもお供します!」と残業も厭わない、社長お気に入りの特命若手社員。ただ、いつもトラブルに巻き込まれてしまう、ちょっとアンラッキーなタイプだ。
●映画『黒牢城』では…
村重に仕える「御前衆」の一人で、警護した先でさまざまな事件に遭遇する。素直でまっすぐな性格だけに、彼だけは無実であってほしい。
現代だったら▶ドライな関係性の派遣社員
雑賀下針(柄本佑)

会社がプロジェクトのために高い報酬で引っ張ってきた、外部の超凄腕テクニカルスペシャリスト。「私は成果物で会話するんで」と、社内ルールを無視して我が道を行く。扱いが難しいけど切ることができない。
●映画『黒牢城』では…
信長と対立する本願寺から派遣された「雑賀衆」の鉄砲名人。下請けゆえに村重への忠誠心はほぼないから、何をしてもおかしくない。
現代だったら▶本音が見えない、シゴデキ第一秘書
郡十右衛門(オダギリジョー)

表向きの役職とは別に、社長の密命を受けて動く裏のトラブルシューター。組織がピンチの時、表沙汰にできない「ヤバい案件」を処理したり、競合他社との裏取引を画策したりする影の実力者。
●映画『黒牢城』では…
「御前衆」の一人。村重の右腕として、命令を過不足なくこなす超有能な家臣だけど、常にポーカーフェイスで腹が読めないのが不気味。
◆現実の人間関係と重ねて楽しめる? 戦国ミステリー
戦国大名・荒木村重は織田信長のやり方に反発し、籠城作戦を決行。有岡城(現・伊丹城跡)は織田軍に囲まれ孤立無援に。村重は信長と対立する毛利家の援軍を待ちながら、城と人々を守ろうと苦心していた。
そこから繰り広げられるのは、今も昔も変わらぬ、上司と部下、会社の悩ましい人間関係。思わず、共感してしまう心情。ただ、この作品の魅力はそれだけではないのだ。

無人島を舞台にした密室連続殺人事件は星の数ほどあるけれど、戦で籠城中の城・・・しかも織田信長に対抗して、1年近く有岡城に立てこもった荒木村重という実在の人物・事件・場所を舞台にするという驚きの発想。
さらにこのとき本当に城内に囚われていた名軍師・黒田官兵衛を、『羊たちの沈黙』のレクター博士のオマージュのような、ダークな探偵キャラに据えるだなんて、歴史好きなら「そうきたか!」と感嘆するような設定だ。
さらに映画化をしたのが『CURE』『回路』など、人間の深層心理や恐怖心をグリグリえぐるような世界を作り上げてきた黒沢清監督だけに、疑心暗鬼にまみれた人々の人間模様が、いっそうスリリングに浮かび上がってくる群像ミステリーになった。

雪の中の密室殺人に始まり、大将首が行方知れずになる、密書を携えた僧侶が討たれるなどの事件が次々に発生。その1つ1つの謎を、村重からの説明を元に官兵衛が解いていくのだが、次第に2人が打ち解けて、村重の秘めた本音──死罪を極端に嫌がる理由や、史実的にも未だに不明な信長からの離反の訳も明らかになっていく。
この謎解きやプロファイルのスリルに加え、家臣団が状況の悪化に比例してどんどん険悪になったり、逆に正常バイアスで無駄に楽観的になっていく姿を見ると、今も昔も「組織」というのは変わらぬものだとわかってくる。
「会社がピンチのとき、こんな感じだったな」とか「あんな風になんでも『大丈夫』って言って、なにも考えてない先輩いたな」とか、現実の人間関係と重ねて楽しめるだろう。

そして、一見バラバラに思えた事件の数々は、次第に一本の糸でつながっていく。それと同時に、村重を憎んでもおかしくない官兵衛が、進んで謎解きに協力した理由も暴かれる。さらにさらにその理由が、やはり今なお目的がわかっていない、村重の最後の選択につながっていくのだ!
後世で「戦国一の卑怯者」と呼ばれるとわかってても、その道を選ばざるをえなかった村重のリーダーの悲哀に、感慨深さを覚えることになるだろう。

このように、いろんな人の琴線に触れるポイントがあちこちに仕掛けられた一大エンターテインメント『黒牢城』。実はNHKの大河ドラマでも、ちょうどそろそろ「有岡城の戦い」が描かれるという、神タイミングで公開される。
ぜひこの歴史のミステリーに触れてみて、機会があったら有岡城跡地(JR伊丹駅から歩いて0分!)を聖地巡礼してみて。映画『黒牢城』は6月19日全国公開。

映画『黒牢城』
2026年6月19日(金)全国公開
原作:米澤穂信「黒牢城」(角川文庫/KADOKAWA 刊)
監督・脚本:黒沢清
出演:本木雅弘 菅田将暉 吉高由里子 青木崇高 宮舘涼太 柄本佑 ユースケ・サンタマリア
吉原光夫 坂東龍汰 荒川良々 渋川清彦 渡辺いっけい オダギリジョー
配給:松竹
©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会
https://movies.shochiku.co.jp/kokurojo-movie/
文/吉永美和子 イラスト/よしださきこ
提供/松竹ナビ株式会社
映画『黒牢城』
2026年6月19日(金)全国公開
原作:米澤穂信「黒牢城」(角川文庫/KADOKAWA 刊)
監督・脚本:黒沢清
出演:本木雅弘 菅田将暉 吉高由里子 青木崇高 宮舘涼太 柄本佑 オダギリジョー
配給:松竹
©米澤穂信/KADOKAWA ©2026 映画「黒牢城」製作委員会
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