よう知らんけど日記

第137回 萩尾望都ファンの夢が今ここに降臨!!

2021.2.18 11:08

カテゴリ:未分類

10月☆日 

ROVOのライブに行きました。渋谷のO-EST。コロナの状況になってからライブに行くのは初めて。演劇も行ってないなあ。映画館はちょいちょい行ってる。 

まず連絡先を書いた紙を提出し、入り口で検温。これだけでも会場の人めっちゃ大変。会場内は、パイプ椅子を距離あけて交互に並べてある。わたしは2階席(椅子が2列になってた)の前列で、その会場全体が見渡せる位置。ROVOのライブは20回は行ってるけど、もちろんいつもとはだいぶ様子が違う。途中に換気休憩があるアナウンスがあり、席で立ってもいいけどその場から動かないようにとのこと。普段と比べたら人数は何分の一くらいなんやろなあ。それでも、ライブが始まったらそんなことはさっぱり忘れるくらい素晴らしくて、音楽と自分だけになるいつものROVOのライブで、さらに新アルバム『ROVO』の曲が、こんな展開で来たんや! てめっちゃ楽しくなる感じで、心身の隅々まで満喫しました。VJに火の鳥(手塚治虫の)出てきたりして、違う世界に飛んでいけるような感じもよかったなあ。ライブ、わたしの生活の中の楽しみで、それに行かれへんようになってることが信じられへん感じなのやけど、やっぱりこれ必要やで、というか、ほんまこの時間のためにわたしは毎日働いてるのやわ、と心底思いました。ライブに当たり前に行ける日々になってほしいなあ。大変な中でライブを実現されたROVOのみなさん、会場や関係者のみなさん、ほんとうにありがとうございます。 

11月☆日 

定期検診に通ってる病院で血液検査の結果を聞きに。先生が「あれ? うーん、なんやろなあ」と、今までに聞いたことない反応。めっちゃ貧血らしい。元々若いころから貧血気味&低血圧で、ヘモグロビンは基準ぎりぎりかちょっと下、毎日のように立ちくらみ、朝礼でもよく倒れてたタイプなのやけど、確かにわたしも見たことない数値が。なんか病気が隠れてて内臓で出血してたらあかんということで、念のためCTを撮りに行くことに。そうかー、貧血かー。夏前ぐらいから駅の階段のぼるだけでめっちゃ息切れして、でもマスクしてるし、家から全然出てなくて運動不足やし、と思っててんけど、酸素が運べてなかったのやね。納得。 

ところで、この先生初めてあたったのやけど、絶対関西人。「なんか思い当たることある?」と聞かれて、「これとか? これとか?」と答えたら、「ちゃう。……ちゃう。……全然関係ない」とわかりやすい回答。わたし病院とかでついつい遠慮してしまいがちやねんけど、すごい話しやすくて、「ほなこれは?」みたいな感じでがんがん聞けてしまった。 

11月☆日 

『よう知らんけど日記』で春、夏と書いてきた「おもに家生活で何を着るか問題」にほぼ結論が。外に出ないし、思い切ってもう部屋でしか着いへんのでいいやん、そして動きやすさ&運動できる重視やで、ということで、スポーツブランドのレギンスと上もタイトなTシャツに。こうすると自分の体型がようわかって運動する気になるしね。そして近所に買い物行くぐらいやったら上からスウェットとか着たら出られるし。それで、やる気の湧くヒョウ柄とかおもろい柄を探してて、それもスポーツブランドには強そうな柄がようさんあることもわかった。特に「PUMA」。プーマだけにヒョウ柄が豊富!! アニマル取り揃ってるやん!! 

で、全身ヒョウ柄タイツ状態で仕事してるんですが、なんで「ピューマ」やなくて「プーマ」なんやろ? と気になって検索。ドイツの会社でドイツ語なのね。そしてイギリスでもプーマって発音することが多いのね。さらに、「PUMA」と「adidas」は兄弟で元はいっしょに会社やっててんけど仲悪なって分かれたのね。などいろいろ勉強になりました。さらに、ピューマとヒョウとチーターの違いも知りました。 

11月☆日 

仕事で大手町の読売新聞社へ。1階ホールに入った途端、見たこともないくらい豪華な胡蝶蘭がすごい数並んでる。正面には日本酒の樽がずらーっとひな壇状態。なんやろか?? と思ったら、巨人が優勝したのやね。大阪にいるときは、プロ野球のことって何もせんでもお天気情報のように自然と入ってきたのやけど、東京に来てからは周りに野球好きの人もおらんし、今はテレビも見いへんから、どこが強いとか何位とか全然わからんようになってるんよね。思いがけず祝賀なところに居合わせました。 

外に出たら、丸の内周辺の街路樹やら店はこの季節のきらきらイルミネーション仕様になっており、歩いてる人は少なくてさびしいのやけど、一気に年末感が溢れてました。 

11月☆日 

CTの検査へ。フリーランスなもので健康診断の機会がなく(区の検診の案内とかは来るのやけどなかなか行けず)、気をつけとかんとなんかあっても気づくの遅れるよね。人間ドック行ってからもう4年経ってるもんなあ(去年と思ったら3年経ってる現象)。 

結果的にだいじょうぶでした。ほっとしました。貧血は鉄剤を飲むことに。 

この数年、忙しくて病院とか全然行けてなかったので、コロナでまず外国に行く仕事が皆無になり(外国に行かなかったのは7年ぶり)、国内も遠くに行く仕事やイベント系がほとんどなくなったので、病院とか事務的な用事とかを片付ける期間にはなっている。そして、この何年か忙しすぎていろんなことができてなかってんなあ、とも思う。 

健康診断、だいじですよ! 

11月☆日 

東大阪市の永和図書館で講演。ほんまは3月にある予定が延期になってたのがようやく実現してんけど、またもやコロナの感染者が増えてきたので厳重対策で実施。河内永和駅まで、新大阪から東おおさか線1本で行けるんやね。初めて乗りました、東おおさか線。なんか新鮮。永和図書館は春にできたばっかりで、きれいやし、子供の本コーナーとかオーディオブックとか充実してていい図書館。図書館の本棚が並んでる間にいると無条件に落ち着くよねえ。上階の広い部屋で、本来は200人ぐらい入れるところに50人限定で講演をさせてもらいました。窓の外を近鉄電車が走ってるのが見えて、秋晴れのいい天気で、地元の図書館らしい老若男女のお客さんが熱心に聞いてくれはって、とてもいい時間でした。 

サイン会で少しお話ししたら、みなさんだいたいご近所で、歩いて来たとか自転車で来たという人が多くて、近所に図書館あるのいいよねえ、としみじみ思いました。 

帰りの東おおさか線からはちょうど夕日が見えて、西が海の大阪はほんま夕日きれいな街やなあと、ちょっと胸が詰まる。どこにも寄らずに友達も誰にも会わないで帰るのがちょっとさびしくなりつつ、まっすぐ新大阪へ。 

ちなみに、行くときと帰るときで2回、新大阪駅の「美々卯」でうどん食べることに成功しました!  美々卯最高。 

11月☆日 

友人宅で集まってごはん会。何か月ぶり!? ていう感じで会う友達やってんけど、ほんまにどうでもいい話しながらごはん食べるて人生でいちばん楽しくて幸せな時間やんな。こんなささやかやけどもっとも重大なことができへん毎日って、ほんまにつらい。 

このところノンアルコールの飲み物がもっとあったらいいのにと思ってるのやけど、この日は別の友達に教えてもろたドイツのノンアルコールビールを持ち寄り。日本では禁止されてる作り方で、普通に作ったビールからアルコールだけ抜く製法らしい。期待値が高すぎたため、やっぱり普通のビールではないよね……とはなってんけど、日本のノンアルコールビールに比べるとだいぶビール感がありました。アメリカとかヨーロッパの一部の国ではノンアルコールのカクテル=モクテルがだいぶ充実してきてて、日本でも増えてほしいなあと思う。そんなにお酒いらんときでも、お店でウーロン茶しかなかったらなんか負けたような気持ちになってついお酒頼んでまうんよね。 

そして、このあとまた人とごはん食べられない状況に……。 

11月☆日 

『若草物語』のグレタ・ガーウィグ監督版『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』をやっと観た。この物語を書いた四姉妹の次女ジョーの後日譚と物語の中身が交互に展開することでうまいこと現代の視点が入ってなるほどなーと思うアレンジになってていい映画やった。四姉妹の衣装がとにかくかわいい。それから、最初は次女ジョー、それから四女エイミーに恋するローリー役のティモシー・シャラメがどう見ても萩尾望都のキャラクター。前から思ってたけど、19世紀の衣装を着てるといっそう『ポーの一族』感が増して、完全にエドガーにしか見えない。萩尾望都ファンの夢が今ここに降臨!!という感じで、家に帰ってからツイートしたら知ってる作家やデザイナーの人から「そう!!」と大興奮のリプがたくさん来て、盛り上がってしまった。見た目やキャラ的には『残酷な神が支配する』のジェレミーがよりぴったりなんやけど、ジェレミーはあまりにつらい話なので演じてもらうには胸が痛む、と皆さん言ってたのがなんだかよかった。ティモシー・シャラメ主演の萩尾望都映画が実現するまでがんばって生きたいです。 

11月☆日 

ところで『若草物語』、わたしの最初の印象は完全に『ガラスの仮面』で、映画観てるあいだいちいち『ガラスの仮面』のあの場面やな、ベス(北島マヤ)は『野ばら』弾きながら死ぬんやな、と脳内に浮かんできてしまった。刷り込みってすごい。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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