神戸にある「コンバースの聖地」、名物店主は伝説づくしの81歳

2022.5.29 08:05

神戸・元町商店街で「柿本商店」を営む店主の周春陽さん(81歳)

(写真15枚)

■アイテム選定のコツは?「長年の経験があるから」

そして話を訊いていると、店の奥から何やら資料を取り出してくれた周さん。コンバースの創業者マークイス・ミルズ・コンバースの大きな写真を見せてくれた。

「柿本商店」創業者の周さん(左)と「コンバース」創業者のマークイス・ミルズ・コンバース(右)

──わぁ、貴重な資料をありがとうございます。

創立したんはこの人や、1908年にな。この会社、最初は長靴だけ作っとったんよ、やけどあんまり売れなくて、赤字になっとった。それで運動靴の部門に変えるにあたって、有名なバスケット選手のチャック・テイラーの名前を借りたわけ、そしたらよう売れた。これが歴史の始まり。

※チャックテイラー:1940年代〜1970年代頃に作られたモデル「オールスター」の総称

──「柿本商店」はブーツ、「コンバース」は長靴が始まりだったんですね。

そういうことやね。ちなみに「コンバース」は2017年に100周年を迎えて、わしは50年以上この仕事をやってるという。

──ということは、周さんは「コンバース」の半世紀をともに生きてらっしゃる。

そうやね、かつては韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、ビルマ、タイ、インドへの納品を港に積んでって、博多〜横浜を往復して、月に20日は出張に出かけていた。その間は嫁さんにお店を任せて、わしと若い衆2人で東西走り回ってたね。

陳列棚の1番上にあるのが(左から)「柿本商店」誕生のきっかけとなったブーツ、そして「コンバース」が手がけていた長靴

──今は店頭にずっと立たれていると思いますが、毎日こちらに?

うん、定休日以外はね。まあ、ずっとここに座っているだけだけど、もう81歳だからね(笑)。仕事も毎日やっとったら習慣になってくるから。

──ずっと気になっていたことがあって。これだけの品数を揃えるのは相当難しいと思うのですが、どのように仕入れしてはるんですか?

東京の本社がみんな直接来てくれる、袋にサンプルを入れて。そこでもう1年分の注文するようにしてるの、ややこしいからね(笑)。

──1年分を!? 商品選定のコツとかがあれば聞きたいです。

商品はその場ですべて即決やね、長年の経験があるから。これは売れる、これはあかんみたいに選んでいく。

──その周さんの勘や直感から「柿本商店」が出来上がっていったんですね。実は父親も若いときからここで靴を買っていて、今こうして私もここに居て(記者は25歳、ちなみに父親は55歳)。

うんうん、「孫連れてきたで!」いう人も多いよ。客はまあまあついてるからね、こっちから言わんでもお客さんの方が流動してくれる。まあ、あと4〜5年か、生きとううちは頑張るよ!

──最後に、周さんが考えるコンバースの魅力はなんですか?

魅力か。言うても、わしは履いたことないけどな〜(笑)!

取材は朝の11時頃だったが、オープン直後からひっきりなしにお客さんが訪れていた

「柿本商店」を一代で築き上げ、各地からファンがこぞって訪れる人気店へとその存在を確立させた周さん。生粋の商売人であり、自身が全うする仕事について話す周さんは、達観していて日本の「仕事人魂」が溢れる人物であった。

そして、コンバースの聖地に足を運んだ際は、ぜひ周さんにコンバースについて尋ねてみてほしい。彼が知らないことは、おそらく無いだろう。場所は「元町商店街」(神戸市元町通)、営業時間は朝11時〜17時半(休日は〜18時)。定休日は木曜日のみだが、月曜日も臨時休業をすることがある。

柿本商店

住所:神戸市中央区元町通4-1-14
営業:平日11:00〜17:30、休日11:00〜18:00
電話:078-351-0997

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