「本能寺の変」黒幕=織田信澄って? 3世代で“大河ドラマ”、サラブレッド俳優が熱演【豊臣兄弟】

2時間前

『豊臣兄弟!』第26回より。謀反を疑われ、処分するまで謹慎を言い渡される織田信長の甥・信澄(緒方敦)(C)NHK

(写真8枚)

豊臣秀吉の名参謀と言われた弟・豊臣秀長(小一郎)のサクセスストーリーを、仲野太賀主演で描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。

7月5日放送の第26回「信長を笑わせろ!」では、大河ドラマで本格的に描かれるのは初となる信長の身内が、本能寺の変の黒幕として浮上するという驚きの事態が。さらに秀吉の代表的な戦ながらも、勝利報告だけでスルーされた「鳥取城の戦い」は、調べれば調べるほど詳細をはぶきたくなる戦いだった。


■ 謀反を疑われる甥・織田信澄…第26回あらすじ

四国制覇を目指していた長宗我部元親(磯部寛之)を切って、新たに三好家と手を結ぶことになった織田信長(小栗旬)。三好康長(妹尾正文)を招いた茶会で、息子・信孝(結木滉星)に四国攻めを命じるが、そこで何者かが信長を襲撃。

居合わせていた甥・織田信澄(緒形敦)が、信長をかばったために事なきを得るが、その直後に信澄が元親と談判をしていたことが判明し、信長は謀反の疑いで蟄居を命じる。

『豊臣兄弟!』第26回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第26回より。織田信長を襲撃した賊を退治する明智光秀(要潤)(C)NHK

羽柴(豊臣)秀吉(池松壮亮)と小一郎が、一族をあげて信長をもてなして説得したことで、信澄は赦免されることになった。

信澄の舅・明智光秀(要潤)は二度とこのようなことがないよう信澄に言い含めるが、信澄は「真の父を殺された身」と本性を表し、光秀にも足利義昭(尾上右近)からの、信長討伐の文が見つからぬよう忠告。その内容を知っていたことに驚く光秀に対して、あれは自分が書いたことを冷酷に告げた・・・。

■ 大河ドラマで本格初登場、織田信澄とは?

『豊臣兄弟!』第26回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第26回より。舅・明智光秀(写真左、要潤)とともに安土城にいる織田信長の甥・信澄(写真右、緒方敦)(C)NHK

信長の気まぐれかつ残酷な仕打ちの数々に精神ズタボロになったところに、恩人と慕う「公方様」足利義昭から届いた謀反の催促メール。

これはもう本能寺確定! やっちゃえ光秀さん! と視聴者は盛り上がったが、なんとこの第26回で、新たに「織田信澄黒幕説」まで投下されるという異常事態が起こった。というのもこの織田(津田)信澄、本能寺の変が起こったときに、光秀の娘婿という理由で、勝手に光秀サイド認定されてしまった「悲劇の武将」という認識が強いからだ。

『豊臣兄弟!』第6回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第6回より。狩りで兄・織田信長を褒める弟・信勝(中沢元紀)(C)NHK

信澄は、信長に謀反を起こして殺された弟・織田信勝(中沢元紀)の嫡男。先々週の荒木村重(トータス松本)の例を見るまでもなく、謀反人の身内は処刑されてしまうのが戦国の掟かと思いきや、意外と身内に甘い信長は、信勝の子どもを全員助けて、信勝の元家臣だった柴田勝家(山口馬木也)に預けた。

『豊臣兄弟!』では描かれなかったが、東大寺正倉院にある特別な香木「蘭奢待」を信長が切り取ったときに、信澄も側にいたと言われている。

『豊臣兄弟!』第26回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第26回より。織田信長(写真右、小栗旬)から謀反を疑われる甥・信澄(写真左、緒方敦)(C)NHK

そんな重要な場に立ち会わせるぐらいだから、信長は早くから信澄を重用することを考えていたのだろう。20歳になるかならずかの頃には、琵琶湖畔にある大溝城を任されるという大抜擢を受け、さらに本願寺制圧後の大坂の警固を任されるなど、信長の息子たちに負けないほど優遇されている。

実際に「優れた人物」と評する記録もあるが、一方で検知に反対した僧侶を何百人も処刑にするなど、信長に負けないほどの辣腕も振るっている。

『豊臣兄弟!』第26回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第26回より。負傷して苦悶する甥・織田信澄(写真右、緒方敦)の表情に、弟・信勝の面影を見る織田信長(写真左、小栗旬)(C)NHK

しかし「本能寺の変」が起こると、光秀の娘婿ということで関与を疑われ、丹羽長秀(池田鉄洋)らに討ち取られることになる。これは一般的には無実と言われているけれど、『豊臣兄弟!』では「本当に関わっていた」という、ある意味逆張りとなる選択をした。

信澄が本格的に大河ドラマで描かれるのはこれが初となるが、ここまでキーパーソン的な扱いになるとは・・・。祖父も父も大河ドラマで主演を務めた緒形敦の、従順な甥からダークプリンスへと変貌する演技にゾッとさせられたが、来週以降の暗躍にも期待しよう。

■ 秒で飛ばすのも納得…凄惨すぎる「鳥取攻め」

『豊臣兄弟!』第26回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第26回より。鳥取攻めや、織田信長の襲撃事件について話す羽柴秀吉たち。写真左から、小一郎(仲野太賀)、羽柴秀吉(池松壮亮)、織田信長の甥・信澄(緒方敦)、明智光秀(要潤)(C)NHK

今回の『豊臣兄弟!』の秀吉&秀長は、鳥取攻めを成功させて帰還したところから始まった。ただこの鳥取攻めが勝利報告だけで済まされたことに対して、SNSでは「秒で飛ばされた鳥取城の戦い」「秀吉大河はスルーせざるを得ない」などの残念がる声が、少なからず見受けられた。

というのもこの鳥取城の戦い、先々週に描かれた三木城の「三木の干殺し」を上回るほど過酷な兵糧攻め、通称「鳥取城の渇(かつ)え殺し」が行われたからだ。

味方を温存できる籠城戦を好んだ秀吉(そして多分秀長もお気に入り)は、鳥取でも財力をフルに使って、周囲の米をすべて買い占め。さらに城周辺の非戦闘員も城内に追い込んで、人口密度を上げるというダメ出しまで行った。

兵糧の備蓄がほとんどなかった鳥取城はすぐに飢えに苦しめられ、餓死者が続出。大勢のやせ衰えた人たちが包囲する柵にすがって「出してくれ!」と泣き叫んでいたなど、壮絶な記録が数多く残っている。

さらに、そこで終わらないのが、開城後に振る舞われた粥を食べた半数以上の人々が死んでしまったという逸話だ。これは秀吉側が毒を盛ったわけではなく、極度の飢餓状態からいきなり食事を取ったときに、身体に異常を来たして、最悪の場合死に至る「リフィーディング症候群」だったと推察されている。

『豊臣兄弟!』第24回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第24回より。涙する小一郎(写真左、仲野太賀)を慰める兄・羽柴秀吉(写真右、池松壮亮)(C)NHK

城が自分たちのものになった今、一刻も早く飢えた人々の腹を満たすために配った粥が、逆に命を奪ってしまった・・・ドラマでは描写されなくても、「なんでじゃー!」と叫んでいる秀長の顔が浮かぶような気がする。

それほど強いインパクトを残した戦だっただけに、数年前には鳥取城のマスコットとして、兵糧攻めの飢えに苦しむ女性をモチーフにした「かつ江(渇え)さん」が選ばれたという、嘘のような本当の話も。

苦情の声が殺到し、わずか3日でマスコット引退に追い込まれたが、秀吉の黒歴史を改めて世間に認知させたという点では、短いながらも立派な宣伝隊長だったと言える。描かれなかったのが惜しいような気もするけど、くわしく描かなかったのが正解という気もする「鳥取城の渇え殺し」。気になる方はぜひ、かつ江さんともども検索してほしい。

大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。7月12日放送の第27回「本能寺の変」では、備中攻めの総仕上げとして、秀長が信長を迎えに京へと向かうことに。一方、家康を招いた饗宴で失態を見せた明智光秀が、本能寺に宿泊した信長を急襲するところが描かれる。

文/吉永美和子


【写真】織田信長の三男役は、三苫薫の兄

【次回予告】本当に“黒幕”は織田信澄なのか!?

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