イキった黒田官兵衛、なぜすぐ味方に? 兵庫県が“修羅の国”だった戦国時代【豊臣兄弟】

『豊臣兄弟!』第21回より。別所賀相(写真左、田中美央)に尋ねる小寺官兵衛(写真右、倉悠貴)(C)NHK
仲野太賀主演で、豊臣秀吉の弟・豊臣秀長(小一郎)が、兄とともに天下一統を果たすまでを描いていく大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。
5月31日放送の第21回「風雲! 竹田城」では、秀吉&秀長が送り込まれた播磨国が、当時どれだけ不安定だったかを調べてみた。そんななかで黒田官兵衛が、なぜ簡単に織田方になびいたのだろう?
■ 播磨攻め編、始まる…第21回あらすじ
荒木村重(トータス松本)に代わって、播磨攻めを任された羽柴(豊臣)秀吉(池松壮亮)。播磨は様々な国衆が織田方と毛利方に分かれて、村重も手に負えない状態だった。
村重は秀吉と小一郎に、姫路城城代・小寺(黒田)官兵衛(倉悠貴)と引き合わせるが、官兵衛は様々な噂を流すことで、主だった国衆をすべて織田方に引き入れたと報告し、秀吉にこの城を譲るとまで申し出た。

織田信長(小栗旬)のように強い人間が、播磨を治めるのにふさわしいと言う官兵衛に対して、秀吉に同行していた竹中半兵衛(菅田将暉)は、播磨のすべての国衆に人質を出すよう求める。
それに従って嫡男を差し出した官兵衛は、秀吉の西播磨侵攻に帯同し、軍議にも参加するように。官兵衛の力を探るために、わざと隙のある作戦を出していた半兵衛に対して、秀吉は彼がなにかを急いているように感じるのだった。
■ 舞台は兵庫県へ…攻め込まれる“修羅の国”
この第21回は、特に兵庫県民たちが大いに盛り上がった回ではなかっただろうか。兵庫県を構成する旧5国のうち、播磨&但馬が大フューチャーされた上に、摂津国の伊丹に城を構えていた荒木村重の出番も増加。
ここまでは近畿と言えば、「戦国の舞台の地」ということを観光の売りにしている滋賀県にスポットが当たっていたけど、兵庫県もなかなか台風の目・・・というか、修羅の国だったのだ。

もともと播磨国は、足利幕府の四大勢力の一つ・赤松家が治めていたが、幕府の要職に付いていた大半の家と同じく、戦国時代になると下剋上によって没落。ドラマの中でも国衆の一つ扱いされるほどの、ワン・オブ・ゼムに成り下がっていた。
赤松家を追い落としたのは、絵図にもさり気なく名前が書かれていた浦上家だけど、そこに隣国の尼子家や、このコラムでもたびたび名前が出る三好長慶などが次々と攻め込んで大混乱。秀吉が「土地が豊か」と評していたように、周囲の大名にとっては非常に魅力的な国だったわけだ。

その後、尼子氏は、毛利家の現当主・輝元の祖父で、1997年に中村芝翫(当時橋之助)主演で大河ドラマにもなった毛利元就によって滅亡。長慶も逝去してホッとするのもつかの間、今度は新たな支配者として織田信長が登場する。最初は織田と毛利は友好関係にあったので、播磨国にはようやく平穏が訪れた。
しかし、信長に京から追放された足利義昭(尾上右近)と毛利家がタッグを組むと、織田と毛利の境界線上にある播磨国は、たちまち日の本一厄介なエリアとなってしまう。
■ 拍子抜け…なぜ、黒田官兵衛はすぐ味方に?
野球がわからない人には大変申し訳ないけれど「1ヶ月後には阪神とヤクルト、どっちが首位になってると思う?」と同じぐらいのレベル(にしちゃっていいのかな)で、織田と毛利のどっちが勝つのかはまったくわからない状況だった。
というか、京から追放されたとはいえ、まだ征夷大将軍としての地位は保持している義昭と、各地の大名たちを悩ませた一向一揆の本拠地・本願寺が毛利方に付いていたので、どちらかというと毛利を優勢と見た人の方が多かったのでは・・・と思う。

そんななかで黒田官兵衛が、なんの疑いもなく織田方について、周囲の国衆まで調略したのは、さすがに先の先を読む軍師らしい判断力・分析力の高さだ。彼が信長を高く買っていたのは、あれだけゴタゴタが続いていた播磨国を、たちまち平定した過去を知っているからではないだろうか。
言っちゃなんだけど、輝元はリーダーとしてはやや判断力に欠けて、それゆえにいろんな好機を逃しがち。周囲の味方が多い毛利VS孤高のリーダーシップの織田を天秤にかけた結果、後者を取ったのだろう。

そんな信長の部下の中でも、百姓の身分から織田家の中心的な家老にまでのし上がった秀吉に官兵衛が興味を持つのは、やはり自然なことのように思える。そして、秀吉もまた、優秀かつ斬新なアイディアを持つ若手の意見に耳を傾けるタイプだから、この2人は実際にウマが合ったのだろう。
それにしても同時代のトップクラスの軍事的才能を持つ半兵衛と官兵衛の「W兵衛」を、両方とも配下にすることができた秀吉、改めて戦国一の幸運の星のもとに生まれたとしか思えない。
■ 先輩・菅田将暉を、倉悠貴は乗り越えられる?

そんな官兵衛を演じるのは、『豊臣兄弟!』の脚本・八津弘幸が手掛けた朝ドラ『おちょやん』(2020~21年)で、主人公・千代の弟・ヨシヲ役で注目を集めた倉悠貴。かわいい弟とヤクザな青年の2つの顔を見事に演じ分け、その後も様々な作品で演技に磨きをかけてきた。
彼が演じる官兵衛は、冷静な策士というよりも、国衆への調略が上手く行ったことで「俺、ちょっとイケてない?」と、自己肯定感爆速モードに入った野心家キャラになった。

しかも、官兵衛は明らかに、織田家で最も重宝される軍師・竹中半兵衛を乗り越える気まんまん。この半兵衛を、今最も勢いのある俳優の一人と言える菅田将暉が演じているわけだから、この2人のリアルな立場とかぶるようで、実にナイスキャスティングだった。
菅田の豊か過ぎる顔芸に対して、ちょっとした目の動きだけで、怒りや当惑などの心の内を巧みに表現した倉。この先しばらくこの2人の因縁は続きそうなので、次の演技合戦を楽しみにしたい。

そして、ちょっとネタバレになるけれど、このあと官兵衛は、信長を裏切った荒木村重に長期間幽閉されて、身体的にも立場的にもかなり危険な状態に追い込まれる。ここで村重を演じているのが『おちょやん』で、ヨシヲを社会の底辺に追い込むきっかけを作った父・テルヲを演じたトータス松本ってのが・・・『豊臣兄弟!』キャスティング担当狙い過ぎだってば(笑)。
来週は村重の謀反のきっかけと言われている「信長に刀に刺した饅頭を食わされる」事件が起こるようなので、官兵衛の試練はそう遠い先ではなさそうだ。
◇
大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。6月7日放送の第22回「播磨大誤算」では、順調だったはずの播磨攻略の形成が一気に逆転すると同時に、秀吉に思いがけない災難が降りかかるところが描かれる。
文/吉永美和子
【最新相関図】“播磨攻め”に新キャスト続々
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