90歳横尾忠則「僕の終末絵画」パワフルな連作と止まらない遊び心『連画の河』が神戸に

ますます明るく鮮やかに!《Self-portrait》2025年「横尾忠則現代美術館」展示風景
兵庫県西脇市出身の美術家・横尾忠則氏が、6月27日に90歳を迎える。横尾氏が80代後半より取り組んだ連作『連画の河』の展覧会が、「横尾忠則現代美術館」(神戸市灘区)で5月23日にスタートした。
◆ 年を経てさらに明るく鮮やかに!背丈より大きなキャンバスの作品群

「年を経るごとに明るさや鮮やかさが出て、絵の具の扱い方がますます自在になっているんじゃないか」と話すのは、同館学芸員の鈴木慈子さん。

本展のオープニングに駆けつける予定が、体調不良で急遽欠席した横尾氏の近況を尋ねると、横尾氏は今も毎日、東京・世田谷のアトリエに通い、制作を続けているという。今回は大事をとってキャンセルとなったが、本展とは異なるテーマの作品に、日々精力的に取り組んでいるそう。
そんな横尾氏による「世田谷美術館」で好評を博した、2023年から2024年を中心に制作した64点の作品『横尾忠則 連画の河』が神戸に。神戸会場独自の展示として、各作品に対応したドローイングや切り抜きなど、横尾氏のスケッチブックも登場する。

90歳を迎えて、なおパワーみなぎる作品を生み出し続ける横尾氏渾身の作品群が楽しめる本展は、150号と横尾氏の背丈より大きなキャンバスがメインで、体力の衰えを、まったく感じさせない。しかも作品に記された日付を見ると、大作にもかかわらず10日ほどで仕上げられている作品も多い。

◆ 加古川から始まる『連画の河』。横尾忠則とともに旅した先に待つものは?

本展は、故郷・兵庫県西脇市の加古川と架かる鉄橋を背景に、同級生たちと撮った記念写真をもとに描いた1994年の『記憶の鎮魂歌』からスタート。和歌の「連歌」のように、前の絵から誘発されたインスピレーションをもとに次の絵を描き、その絵から得た着想でまた次を描く、ということを繰り返す流れがとられた。


一連の「連画」は、ひとつ前の作品に対してだけでなく、アトリエ来訪者との会話や、テレビや新聞から得た時事的な事柄などの影響も色濃く受けて描かれている。

「途中で出てくるメキシコのモチーフは、制作時にアトリエを訪れたフランス人から『農夫になる』を、メキシコみたいね!と言われたことに影響を受けたようです」と鈴木さん。確かに帽子がメキシコっぽいかもしれない。展覧会では、時にぶっ飛んだ方向に流れていく作品を順番に追う体験がユニークだ。

横尾氏本人も「初めの10数点は『連歌連画』として認識していますが、そのうち何が何だかわからなくなっていきます。われわれの住むこの世界は、いずれ崩壊する運命にあるかもしれません。『連画』の流れは、その地球と人類の消滅への運命と、どこかで結びついているのでしょうか。別の言い方をすれば、『連画の河』は、僕の終末絵画かもしれません」とコメント。

なお、今回の展覧会について横尾氏から「オープニングに行きます」と同館へ前のめりな連絡があったそうで、「来る気満々」だった横尾氏を迎える側も準備も万端だった。そうしたことから、今回の展示は「特に力が入った自信作だったのではないか」と鈴木さんは推測する。
◆ 故郷・兵庫県西脇市で新たな「Y字路」開拓を進め、ソウルフードのラーメンも堪能
横尾氏の作品を収蔵・展示する「西脇市岡之山美術館」(兵庫県西脇市「日本へそ公園」内)の細川さんによると、横尾氏は一昨年に久しぶりに創作の原点である故郷・西脇に帰ったそう。

その際、展覧会のもとになった記念撮影と同じように、同級生を集めて鉄橋の下で写真を撮影。また、代表的なシリーズのひとつ「Y字路」のモデルとなった地をまわり、さらに隣の黒田庄町に赴き、これまで描いていない「Y字路」もめぐったそう。そして、「新たなY字路を描きたい」と話していたということなので、もしかすると今後、「Y字路」の新作が生まれることがあるかもしれない。

またユニークなエピソードとして、西脇のソウルフード「大橋ラーメン」を食べた話も披露された。「大橋ラーメン」は、播州織の織物工場で働く女工さん好みの甘いラーメン。行列ができる人気店に足を運び、西脇ならではのグルメも楽しんだそうだ。
代表作「Y字路」シリーズの新作の可能性含め、90歳を迎えてなおパワーみなぎる作品を生み出し続ける横尾氏の次作が注目される。

『横尾忠則 連画の河』は「横尾忠則現代美術館」で2026年5月23日~8月30日まで開催。開館時間は10時〜18時。月曜休館(7月20日(月・祝)は開館、7月21日(火)は休館)観覧料は一般800円。詳細や関連イベント等は公式サイトで確認を。
取材・文・写真/太田浩子

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