大阪とコロナ禍の軌跡、危機に直面した府職員がとった行動は

2020.5.31 09:30

今回のコロナ禍で大阪独自の策を講じた健康医療部

(写真15枚)

「『府民にわかりやすく』と大阪モデルの誕生」

4月後半、対策本部会議でも医療崩壊を防げている状況が報告されるなか、当初5月6日までとされていた緊急事態宣言が、5月末まで延長されることになったことを受け、府は新たな局面を迎える。

5月2日の会見で吉村知事は、「日々、出血を伴う休業要請。出口がないほどつらいものはない。何を目指しているのか、どういう状況になれば要請を緩和していけるのか。つまり、このウイルスと共存する道を模索していかなきゃいけない。出口戦略を作って、それを府民のみなさんにわかりやすい形でお示ししたいと」と明言した。

臨時会見を開いた吉村洋文知事(5月2日・大阪府庁)
この日、臨時会見を開いた吉村洋文知事(5月2日・大阪府庁)

「異例の指示に『不可能なことではない』」

世界でも、日本国内でも、前例のない指標を出すことに対し専門家たちは顔を見合わせて難色を示した。しかしこのとき、藤井部長は「不可能なことではないと思った」という。

その理由を、「健康医療部では、府で感染者が発生した1月29日から、どれだけ陽性者が出ても、必ずデータをとり、分析をしていた。そのなかで、この指示を出したから2週間後にこういう結果が出ているとか、いま思えば、あれが感染拡大のシグナルだったというのを把握していた」と説明。

さらに、「知事の指示は、毎日見つめている医療部のデータを府民のみなさんにわかりやすく共有できるようにするシンプルなもの」と、事も無げに話す。

とはいえ、「誰もが見てわかりやすい指標にするのは簡単なものではなかった。GW中、健康医療部のみんなで2日間何時間も会議して指標を考えた」という。

そして、「5日の対策会議で発表して専門家の方たちに提示し、ご意見をいただいてそのまま通ったのがこの指標。あくまで私たちのデータ蓄積に基づくもので科学的根拠がないのが欠点です」と打ち明けた。

独自基準「大阪モデル」を説明する吉村洋文知事(5月5日・大阪府庁)
独自基準「大阪モデル」を説明する吉村洋文知事(5月5日・大阪府庁)

このとき、提示されたのが「大阪モデル」と呼ばれる独自指標による判断基準。現在は若干の改定がされているが、当初の案は(1)新規陽性者におけるリンク(感染経路) 不明者の前週増加比、(2)新規陽性者におけるリンク不明者数、(3)確定診断検査における陽性率、(4)患者受⼊重症病床の使⽤率の4つを基準とした。

これらの値が7日間続けて基準値以下を示した場合に、段階的な要請解除を始めることを決め、これが出口戦略に。また逆に、すべてが基準値に達した場合には、府民への自粛要請が段階的に実施される「入口戦略」になる。

このとき、吉村知事は「府民が今、大阪がどういう状況なのか一目で分かるように緩和なら緑、注意は黄色、警戒は赤にして、どこかをライトアップ。それを見れば一目で大阪がどういう状況かわかるようにしたい」と提案。その後、通天閣や太陽の塔などに協力を仰ぎ、大阪のシンボルがライトアップされることで現在の状況がわかるようになった。

「大阪モデル」は、府が今どういう状況で、自分たちがどう行動したらいいのかを府民に示し、また休業要請がいつまで続くのか不透明ななかで、目標と道筋を作る救いに。今後は、第2波が来たときに感染者が拡大する兆候を見極めるための指標にもなり、府民とコロナの状況を共有し、行動変容につながる大きな存在へとなっている。

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