よう知らんけど日記

第116回 今回の引っ越しで確信。「サッサ」最強!

2019.9.19 20:40

6月☆日 

引っ越し直前に下見に来たときに気づいたのやけど、台所のカウンターがちょっと高い。これまでの平均は85センチやけど、90センチのタイプらしい。内見のときには気づいてなくて、わたしたいへん背が低いため、わー、使いにくいかなあ、どうしよう、と心配に。ところが、検索してみると、出てきたのは「90センチにすればよかった! 85だと低くて使いにくい!」ばっかり。皆さん、身長高いのね……。85にすればよかった、っていうのが1つだけ出てきて、あっ、仲間がいるんやん!って喜んだら「ウチはおばあちゃんも使うから」。………。はい、昭和の身長、っていうか、小学5年生くらいの身長ですんません。足下に踏み台置くとかどうしようかといろいろ検索してたら、「台所用厚底スリッパ」というのを発見。6センチヒール。実際使ってみると、スリッパなしでも洗い物は意外に楽で、ただ、包丁でなにか切るときに力が入れにくいのと、鍋の中が見えにくいのが困る。6センチ増量するとだいぶ楽になりました。それでも平均身長より低いんやけどね。 

6月☆日 

ひたすら段ボール箱を開け、持ち越した粗大ゴミを捨て、そして書店営業やイベントの日々。一応、すぐに使いそうな本とか洋服とかは最初から分けといたからなんとかなってるけど、段ボールと積み上がった荷物の隙間で生活。商店街が近いので食べ物は外食とコンビニとかで乗り切れてて、便利なとこに引っ越して助かった……。 

ところで、引っ越しとはホコリと掃除の戦いでもあるのですが、今回の引っ越しで確信しました。「サッサ」最強。黄色い紙みたいな、昔からずーっとある金鳥のあれですよ。ホコリ、めっちゃとれるし、取った分は戻らない。いやー、やっぱりロングセラー商品は意味あるね! 強いね「サッサ」! 

6月☆日 

片付け、掃除全般に苦手な超絶めんどくさがりのわたしがおすすめする掃除関連の生活用品は、①コロコロのフローリングでもくっつかへんやつ。粘着部分がしましまになってて、床や家具やガラス、どこでも使える。ホコリもよう取れるし、楽です。②マキタの充電式クリーナー。これはご存じの方も多いと思いますが、新幹線の掃除でも使われてるというアレです。ちっちゃいし小回りきくし、ささっと使えるし、フローリングだけの家ならこれで十分。出すのがめんどくさくない、これ重要です。③同じ理由で掃除機はとにかく軽いのがおすすめ。めんどくさがりの人には手入れせなあかんサイクロンより紙パックがいいよ。④台所の生ゴミ入れるのは、メッシュになってる袋で折り返すとそのまま立てられるやつ。三角コーナーいらんし(ということは三角コーナーを洗わんでいい)、水はめっちゃ切れるし、捨てるのも楽です。とにかく手間をかけない、なるべく楽するが生活信条です。 

7月☆日 

ほんまは引っ越し直後に来てもらうはずがどう考えても人が立ち入る隙間がないので10日ほど延ばしてもらっていたケーブルテレビの工事に来てもらい、やっとネットとテレビが開通。インターネットは携帯にテザリングつけてるから全然いける、と思ってたけど、2週間もテザリングだけでパソコン使うとやっぱりデータ量結構いくね。HDDレコーダーがちゃんと映らず、もしや引っ越し作業中になんかあったかとひやひやしましたが、どこか誤作動してたらしく、無事に接続できました。と、いっても、わたし、ずーっとテレビをほぼ見てなくて、HDDも長いこと録画してないんよね。「よう知らんけど日記」の連載始めた頃は、1か月の録画時間が300時間とかになってたのに。そもそも「よう知らんけど日記」の始まりってテレビ日記やったしね。引っ越す前の半年くらいは、どこが不具合なのかわからないけどBSが映らなくなっててそのまま放置してたので(家が散らかりすぎてて修理の人が呼べない状態)、それも映るようになったしまたドキュメンタリー見ようかな。 

7月☆日 

テレビ見いひんようになったんは、複合的な理由があるんやけど、そもそも10年くらい前からケーブルテレビで昔のドラマかNHKやBSのドキュメンタリーしか見てなかったので、世間でのイメージのテレビってもうずっと見てなかったんよね。いちばんの理由は、特にバラエティとかワイドショーやけど説明とかテロップとかCMのあとでとかこのあとなにかが、みたいなのが多くなりすぎて、そういういらん情報ばっかりで本来の情報が限りなく少なく薄くなって、あまりの「遅さ」に「いらち」が作動してしまって見れなくなった。ニュース番組さえバラエティみたいになって、煽りナレーションとか芸能ニュースばっかりになったし。最終的にまったく見なくなった直接のできごとは、小林麻央さんの病気の暴露記事やってん。わたし自身、父親が癌で亡くなったんやけども、病気がわかってからってほんまに大変で本人はもちろん家族もすごく厳しい精神状態やから(姉の麻耶さんも番組中に倒れてはったし)、それをあんな形で「スクープ」みたいに記事出して、そんなん報道でもなんでもないし、そんなことする権利も理由もまったくないやん、しかもワイドショーも一斉にちっちゃい子供いるのに追いかけ回して、絶対に1秒もそんなん見いへん、テレビつけへん、と思った(ネットのニュースも一切見ないようにしてた)。海老蔵さんは隠してるのも苦しかったから結果的によかったみたいなことを言うてはったけど、それはそう言うしかないやん。もっと別の方法がいくらでもあったやん。もちろん、それまでにも似たようなことは何度もあって、ほんまにこれがとどめとなってテレビをつけること自体がいやになってしまって、その直後にアイオワに出発したので、生活の中からテレビがなくなってしまったという感じなのです。 

7月☆日 

とはいえ、自分はテレビで育って(ほんまに。毎日10時間とか見てたし)、今でもいいドラマとかドキュメンタリーとかたくさんあって、そういう番組や作ってる人は応援したいし、ツイッターとかであの番組がよかったっていうのを見たりしたら、またテレビ見ようかなって思うんやけどね。こういうのって習慣で、テレビをつける習慣自体がなくなって、リモコンどこ? みたいになってるから、さてどうなるやら。で、テレビ見いへんようになって生まれて初めて時間を有効に使える真人間になったかというと、ネット見てるから怠惰度はまったく変わりません。 

7月☆日 

あとテレビが見れない理由は、特に連ドラがそうなんやけど、決まった時間に見るのが難しいんよね。不規則な生活してるのもあるし、仕事の書ける書けないに非常にムラがあるタイプなので、書けてるときに中断はできないし、その時間をコントロールできない。録画しとけばいいのやけど、気になるドラマのスタートを一通り録画してというマメさもなく……。見逃し配信も増えてきたけど、まだまだ使い勝手がよくなかったり、連ドラ全部見ると高くなったり。ラジオぐらい配信が充実して、チャンネル横断していろいろ見られたらええのになあ。というわけで、すっかりラジオっ子です。片付けとかしながらでも聴けるし、出演してる人の人数が少ないのがいい。これはテレビでもそうなんやけど、出演者、2人か3、4人くらいまでがいい。人数増えれば増えるほどおもしろくなくなる法則。ラジオは基本、出演者少ないからね。茶化したりいじったりも少なくて、聞きたい話をしっかりやってくれることが多い。 

7月☆日 

近所に外食に行くと、東京やし、学生がけっこういる。男女別のグループが多いけど、明らかに今、その人と次の関係に持ち込もうとがんばってますね、って男女もいたりして(男子から女子、女子から男子、両方います)、若いっていいね! みたいな感じになる。わたしは、大学が公立やし郊外やし駅から離れてるしで、いわゆるドラマとか漫画に出てくるような、サークルとか合コンとかの学生生活からは遠かってんよね。だから、わー、ほんまにこういう学生時代があるのやー、と感心して眺めてしまう。わたしが行ってた大学の周り、学生が帰りに寄ったり集まって飲むような店も全然なかったもんね。それはそれで楽しいこともたくさんあったんやけど、こういういかにもな学生生活もちょこっと体験してみたかったなーとか思う。あっ、というか、よう考えたら、高校生のときは合コンとかサークルみたいな世界が怖くて公立の大学に行ってんやった。まあだから、実際この中にいたら帰りたくなるんやろな。 

7月☆日 

友達に手伝ってもらって、段ボールはなんとか順調に片付いていく。荷造りもそうなのやけど、「人にやってもらう」はすごい重要で、物の来歴とか思い入れとかとにかく一切のエピソードは片付けるときには邪魔になるのよね。これはこっちのといっしょに置いたほうがいいかなあ、とかも含めて。時間も広さも余裕があってゆっくり片付けられたら自分で吟味して整理しながらやるのがいちばんやけど、考えるだけでも体力使ってしまうし、とにかくざくざく作業を進めなあかんので、友達に助けてもらってる。おかげで思ったよりも早くスペースができてきて(といっても、半分くらいまだ段ボールぎっちりやけど)、朝ごはん作るとか、本読むとか、少しずつできることが増えていって、そうそう、こうやってちゃんと「生活」したかったから引っ越したんよね、と思う。片付けられないのに(片付けられないから)物を増やすわたしを助けてくれる友達、ほんとにありがとう。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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