よう知らんけど日記

第96回 こたつ出そうかな…でも寝てまうし…。

2016.2.26 13:06

1月☆日
いつからか、年末年始はオールスター的な特番が減って、テレビ、特にBSやCSのチャンネルは一挙放送が大流行。マッド・マックス、スティーブン・セガール、男女7人夏・秋物語、空から日本を見てみよう、吉田類の酒場放浪記、孤独のグルメ(これは去年もやってた)、旅情ミステリーくくりで浅見光彦に十津川警部、鬼平犯科帳……年末年始感の漂わない特集がずらーっと。BS1は『映像の世紀』で、傑作シリーズではあるけど、これで年越しってどんよりするというか、なんか新年早々絶望感漂うし……。
『孤独のグルメ』は去年も見たのに今年もまたまんまとハマってしまい、出てくるお店を検索しまくる、そんな新年の始まりです。

1月☆日
元日にケーブルテレビでCNN見てると、まだ「去年」なのがおもしろい。アメリカの年越しは「ゆく年くる年」的な厳か感はまったくなくて、パーティーで大騒ぎなんやけど、なんかようわからん全裸のねえさんリポーター(少なくともわたしよりは年上)がずーっと出てて、これがもうほんまに全裸でそうとう開けっぴろげっていうか広げすぎで、もちろんモザイクは入ってるんねんけど、アメリカのセンスがわからなすぎ……。
中東(ドバイでは超高層ホテルが火事やのに向かいで花火上げてるというシュールな光景が)、ヨーロッパ各国、ブラジルと次々に年が明けていき、ようやく午後2時にタイムズスクエアでカウントダウン。2015年と2016年の隙間の不思議な時間。

1月☆日
年末に油断して「濃い丸餅」を買い逃したお正月。近所のフレンチでおせち売ってて、百貨店のとかに比べるとかなりお買い得なので、今の家に越してきてからは毎年これ。お昼過ぎてから妥協して買った濃くない丸餅で雑煮(大根、人参、かしわ、三つ葉で味噌の適当に関西風です)。2015年後半が仕事ぎちぎちになって仕事以外でもいろいろしんどい感じやったので年末の締め切りが終わったらちょっと休憩しようと思ってたので、とにかくなんもせんとひたすら読書。散りきらずに残った木の葉を眺めつつ、暖冬やなーと、というかそれすらも感じることなく部屋にずーっといて、結局、ポストよりも外に出たのは5日の夕方でした。

1月☆日
下北沢の[B&B]で、セサル・アイラ『文学会議』(新潮社クレスト・ブックス)刊行記念、訳者・柳原孝敦さんと書評家・豊崎由美さんのトークイベントへ。2年前に翻訳が出た『わたしの物語』(松籟社)がですね、豊崎さんの評にひかれて読んでみたら予想をはるかに上回るおもしろさというかわけのわからなさというかふざけ加減と凝縮された知性のバランスが最高で、それはこの『文学会議』でもいっそう発揮されてる。タイトルと冒頭を読んでも誰も予想できない展開。普段ネタバレが気にならないわたしも、こればっかりは驚きを楽しんでほしいから何にも言えない。いろんな解釈が成り立つ、そしてどれが正解ってわけでもなく楽しめる懐の深い世界でもある。イベントの後の打ち上げに参加させてもらって、そこで話した『わたしの物語』に関するわたしの解釈が大ウケしまして、でもめっちゃネタバレになるんで、ちらっとも言えないんですよね~。うー、言いたい! 読んだ方、連絡ください。

1月☆日
原節子追悼企画でBSやケーブルで出演作をちょいちょい放送してる。その流れで、小津安二郎監督作を目についたら見てて、原節子は出てないけど『秋刀魚の味』を放送してたのをつい見入ってしまった。終盤、岩下志麻がずっと片思いしてた人との縁談をやっと進めようとした兄が「向こうもおまえのこといいと思ってたんだけど、もう決まっちゃったんだってさ」としれっと告げる場面で、いらんこと言うなや! とテレビの前でおばちゃんのようにつっこんでしまう。岩下志麻は凍りついてるのに、「意外にあっさりしたもんだね、よかったよかった」とのんきな父と兄。弟が「どうしたんだよ、姉ちゃん泣いてたじゃないか」と言ってくれるものの、その次の場面が岩下志麻が白無垢で挨拶(別の人と見合い結婚)&一人になって寂しそうな父、ってそれはないやろ、泣きたいのは娘のほうや! と、時代が違うのはようわかってるんやけども、一人で腹立ちが収まらず(それにしても岩下志麻がめっちゃかわいい。『極妻』の片鱗もない)。

1月☆日
いきなり寒い。いきなり大雪。月曜の朝から東京は電車止まって大混乱。出勤しない仕事なのでテレビのニュースなんかを見ててもあまり状況がつかめないのですが、寒い中、路上で何時間も並んでる人とかいて、これ、会社の人が「来んでええよ」と連絡するべきやんなあ。携帯あるんやし。昼過ぎて出勤しても帰りも早めに帰らなあかんやろし、こんだけ無理して行ってもそない仕事にならへんと思うのやけど。雪つもってるわ、雨降ってるわの中、何時間も待つ人に近所の喫茶店がコーヒー配ってるのをええ話っぽく放送してたけど、いやいや、もっと根本的な問題があるやん。あれって行かんかったらやっぱり怒られたりするのやろか? 体調悪くなった人ようさんいてそうやし、雪とか台風とか地震とか通勤・通学難しなったら来んでもええよ、ってことにしといたらええのになあ。

1月☆日
寒いー。ぬくいと油断してたところにいきなり寒なったらこたえるわー。こたつ出そうかな……でも寝てまうし、と葛藤しつつ、今のところ出さずに乗り切ってます。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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