饅頭やベビーカステラを販売……大阪・阿倍野の映画館、フードメニューが独自路線なのはなぜ?

「あべのアポロシネマ」のフード売店。2カウンター設置されているのも珍しい
映画を観るお供として欠かせないフード&ドリンク。定番はポップコーンやチュロスだが、「あべのアポロシネマ」(大阪市阿倍野区)はひと味違う。
定番メニューは抑えつつ、ライスバーガーやカツサンド、ワッフルをはじめとし、奈良銘菓『らほつ饅頭』や大阪土産の塩昆布『舞昆』、京都すずなり屋のベビーカステラなど、とにかくメニューが変化球かつ充実しているのだ。
日頃から同館に通う筆者は、なぜフードメニューがここまで独自路線を走るのか気になっていた。そこで長年同館のフード&ドリンクメニューの開発に携わってきた今村さんに、詳しい話を訊いてみることに。

■ ベビーカステラに饅頭、変化球なフードメニュー
──あべのアポロシネマさんのフードメニューは独特なものが多いと感じるのですが、アイデアはどのように出しているのでしょうか?
私は開発に10年以上関わっていますが、当館では社内でフードやドリンクのメニュー案を出し、会議で通ったものを販売するという形を取っています。そのため大手と比べても、比較的自由にさせてもらっていると思います。
──自由度でいうと、大仏の「螺髪(らほつ)」がモチーフの『らほつ饅頭』を扱っているのは、今村さんが大仏好きだからだと小耳に挟んだんですが・・・。
好きというか、周囲の人が大仏グッズをくれることもあって自然と集まってくるんです(笑)。
らほつ饅頭を販売する奈良祥樂さんは主に奈良のお土産を扱っている会社で、当初は他の商品で何かアプローチできないかという話だったんです。結局その商品ではなく、奈良祥樂さんのリーフレットに掲載されていたらほつ饅頭に惹かれまして、当館で扱わせてもらうことになりました。

──そんな裏話が!実際のところ、お客さんからの反響はいかがでしょう?
らほつ饅頭は奈良名物なので、他のエリアではあまり販売されないんですよ。なので饅頭を目当てに当館に訪れる人も多いようで、売り切れることもありますし、「次いつ入ってくるの?」という問い合わせもあるほどの人気です。

──なるほど。映画館で「ベビーカステラ」というのもなかなか珍しいですが、これも何かきっかけがあるのでしょうか。
実は、私自身が大のベビーカステラ好きでして。休みの日にいろんなお店を見つけては食べ歩くほどなんです。ただベビーカステラはどうしても人手が必要となり、回転率が悪くなるという関係もあり、劇場で扱うのは難しいかなと思っていました。
そんな折、近所にすずなり屋さんの店舗がオープンし、通っているうちになんとかウチでも扱えないかと考えるように。すずなり屋さんは冷凍でも販売でき、劇場用に対応できるよう色々と準備をしてくださったこともあり、そこからはトントン拍子に進んでいきました。
ちなみにベビーカステラと一緒に持ち帰り用バッグも販売しているんですが、これは全国の店舗でも扱っていない当館オリジナルの商品なんです。

■ 企画段階で幻となった「舞昆ソフトクリーム」も
──よく見るとドリンクも「レモンコーラ」など珍しいラインアップですよね。
レモンコーラはサントリーさんに相談した上で、当館オリジナルで販売しています。なのでメニュー表にあるロゴもオリジナルで作成しました。レモンコーラという商品はサントリーさんでも扱っていないので、コーラとレモンのブレンドはなかなか苦労しましたね。
昔はドリンクメニューももっとたくさん扱っていて、今の1.5倍くらいは種類がありました。期間限定でエナジードリンクの『ZONE』やコーンポタージュなども販売していたのですが、どうしても場所が限られてしまいます。厳選し、今の形に落ち着きました。

──ちなみに、企画段階で断念したアイデアなどはありますか?
舞昆のこうはらさんの塩昆布「舞昆」を置いているんですが、舞昆を使ったポップコーンやソフトクリームを開発しようとしていたことがあります。ただなかなか味がうまくいかず・・・。ポップコーンだとどうしても味にムラができなかったこともあり、断念しました。

──舞昆のソフトクリームが企画案にあったとは・・・!同じように、既存メニューを組み合わせたメニューはあるのでしょうか。
ワッフルソフトクリームやフロートは「元からあるもので何か新しいメニューが開発できないか」という声から生まれました。
例えば、ソフトクリームとワッフルは2個も食べられないけど、ドリンクとフードどちらも欲しいしどちらも試したいという人もいると思うんです。それぞれ買うと値段も高くなっちゃうんですけど、このメニューならちょっとずつ試せて比較的安い値段で買えるかなと。

──根底にお客さんへの思いやりが感じられます。
フードの提供が遅くならない範囲内で、豊富なバリエーションを楽しんでもらいたいという思いがあります。
やっぱり大きな映画館は企画力やそれを補うパワーがあるんですけど、当館はそうではありません。その分1人1人が頑張ってチャレンジしていこうという空気感がありますし、出したアイデアも通りやすいという強みがあると思っています。

◇
「あべのアポロシネマ」では、ほかにも上映前に館長によるマナー啓発映像が流れたり、ロビーで「らほつ饅頭」の館内CMがアナウンスされたりと、ほかの映画館ではなかなか見られない取り組みがおこなわれている。同劇場を訪れた際は、映画鑑賞以外の楽しみを探してみるのもオススメだ。
取材・文・写真/つちだ四郎
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