「価格競争はしない」兵庫でジワジワ人気、ヤマダストアーとは?

兵庫の西エリアを中心に9店舗を構える「ヤマダストアー」、今回取材したのは5月中旬にオープンした「六甲アイランド店」
神戸・六甲アイランドに5月中旬、スーパーマーケット「ヤマダストアー」(本社:兵庫県揖保郡)がオープンした。店頭に並ぶ商品は、普通のスーパーにはないものばかりなうえに、スーパーにあるはずのものがほぼないという「ちょっと変わったお店」。いったいどんなスーパーなのか取材した。
まず六甲アイランドに住む知人に話を聞くと、「大盛況ですよ。ふたつのカゴいっぱいに商品を入れた人がたくさんいるので、多分、車で来た島外の方たちかと。島の友人たちとも、おいしかった商品情報を交換して盛り上がっています」と、多くの人に受け入れられている様子。

実際に同店に入ると、木材がふんだんに使われた什器が並び、しっかりした家具調のテーブルや椅子が置かれていて、内装から普通のスーパーとは異なる雰囲気がある。取材のために事務所に案内してもらうと、透明引き戸にカラフルなネオン管が灯る明るい空間になっていて、ここがスーパーのバックヤード?とさらに驚いた。
ほとんどの店舗が姫路市周辺というヤマダストアーだが、2021年オープンの「須磨離宮公園前店」に続き、9店舗目となる「六甲アイランド店」は播磨地域から飛び出している。店舗運営部部長の中野篤さんに話を聞いた。
◆ 従来のスーパーにはない「ワクワクする」売り場
──お店の造りも置いてある商品も珍しいと思いました。
ワクワクしたい、生活の質を上げたい、もっと世のなかに貢献したい、というお客さまがお買い物を楽しめるスペースとしてあり続けたいと思っています。一般的にはどこのスーパーでも売っているであろう商品は置いていないので、おもしろいスーパーだとは思いますね。

──確かに、「これはどういう商品なんだろう?」というものばかりで、興味がわいて楽しかったです。
昔から、品質のよいもの、おいしいもの、体に良いものを売りたいという方針でやってきました。さらに環境に良いもの、生産者さんや地域の活性化につながるような商品構成になっています。時代もそういった流れになってきていて、昔よりも応援していただけていると感じます。
──具体的には六甲アイランド店では、どのような商品が並んでいるのですか?
野菜は、基本的に地元の生産者さんの持ち込みになっています。


──道の駅みたいな感じということでしょうか?
そうです。六甲アイランドには農地があるわけではないので、野菜は淡路島や加古川の方から持ってきています。基本的にはお店の近くで作られたものを、生産者さんが市場に卸すのではなく、自分でパーケージングされて持ってくる。お客さまも気に入られた生産者さんのものを買われますね。
どんな作り方をしているのかが見えるというのがまず大事で、あとは「この農薬減らしてもらえないか」とか、「こんなもの作ってもらえないか」と、アプローチさせてもらう。生産者さんと一緒に成長していく感じでしょうか。鮮度も味も違うので、地場野菜のコーナーを目的に来られる方も多いです。
◆ 2580円の「しゅうまい」が売れるワケ
──なるほど。野菜以外のオリジナル商品もおもしろいものばかりですね。
そうですね。冷凍の「プリッと海老しゅうまい」は、エビの含有量やおいしさにこだわって作りすぎて2580円(16個入り)しますからね(笑)。さすがにやりすぎかと思いましたけど、一番売れています。

──いただいてみたら、プリップリのエビがゴロゴロ入っていて食べ応えもあって、リピートされるのもわかる気がします。ほかの商品もそうですけど、プライベートブランドで価格を下げるという流れではないのですね。
もう全然そんなことはないですね。うちはプライベートブランドが儲からないという謎の仕組みがあるので(笑)。良いものを作りたいという思いが勝ってしまう。牛乳も、低温殺菌牛乳をプライベートブランドにしています。

高知の「ひまわり乳業」さんに協力していただいて、ヨーロッパなどと同じように低温殺菌にして、飼料は穀物より牧草の比率を増やしていってもらっています。搾乳日から早くお客さまの手元に届くことにもこだわっていて、基本的に搾乳日の2日後には店頭に並ぶので、鮮度が高くて、牛乳本来の甘さやおいしさがあります。
──売り場でお客さんが、「この牛乳おいしいよね」って話していました。
やはり実際に食べて、飲んでもらえるとわかっていただけるので、喜んでいただけるお客さまは多いです。そういった会社の考え方をお伝えするために、ポップやチラシをつくっています。

──毛筆の文字で書かれたポップに熱い思いが溢れていますし、例えば「殺虫剤は使ってるけど、除草剤は使ってへんバナナ」とか、どれも正直で商品名が長いです(笑)。
裏側というのは、知っていただこうとしないとやっぱり伝わらないので。商品の良いところや、こういうところを見てほしいなっていうのを伝えるために力を入れていますね。商品名が長すぎてレシートを見ても何を買ったかわからないと言われることもありますが(笑)。チラシやポップを見て、食の問題や資源の問題などを考えるきっかけになればありがたいです。

◆ 「価格競争はしない」独自のスタンスで勝負
── 一方で、普通のスーパーには必ずあるような商品がありません。
どこにでもあるものだったら、1円でも安く買いたいとみなさん思うじゃないですか。ヤマダとしてはそこに未来はないと思っています。隣のスーパーより1円でも安くしていくと際限なく続いて、結局原価を落とすことになる。そうすると人件費を削るか、商品の質を下げるしかないですよね。そうではなくて、生産者さんが次はもっと良いものが作りたいとか、新しいものにチャレンジできる余力を残していることが大切だと考えています。
──安さではない価値を提案されているということですね。六甲アイランド店ならではのチャレンジもありますか?
六甲アイランドは外国の方も多いですし、今回初めてプリペイドカード方式のワインの試飲機を入れました。思った以上に喜んでいただいていて、みなさん楽しそうに飲まれています。毎日試飲機のワインカードが売れているので、六甲アイランドの空気感にとてもマッチしたのだと思いますね。

──六甲アイランド店がオープンしてから1カ月が経ちました。手応えとしてどのように感じられていますか?
島内にはダイエーさんとトーホーさんがありますが、お話を聞くと、こだわったものを買いに行く感じで当店を利用していただいているようです。当初は六甲アイランドにお住まいの方が買い物に来てくださるイメージだったのですが、ポイントカードなどの登録を見ると神戸・芦屋・西宮などからもいらしていただいていて、想定よりも広い範囲で喜んでいただいていると感じます。
──この先、神戸や大阪に進出される予定ですか?
物流もありますし、一足跳びにというわけには行きませんが、東の方に出店は考えています。来年は神戸市北区藤原台に出店する予定です。

◇◇
「ヤマダストアー六甲アイランド店」は「神戸ファッションプラザ ROKKO i PARK」(神戸市東灘区)の1・2階。営業時間は朝9時〜夜10時。
取材・文・写真/太田浩子
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