トムジェリ主題歌の瑛人「通じるものがあれば友だちになれる」
「大きな世界に向かってピースオブケーク(楽勝)でイイじゃんってこと」
──今回の曲のなかでもそういう友だち関係について触れていますよね。
大嫌いだけど大好きなヤツ、ひとりいるんですよ。KANというダンサーなんですけど、酔っ払ったらすぐ俺の頭をひっぱたいてくるヤツ。高校からの友だちで、一緒に酒を飲むとよくケンカしちゃう。昨年、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に一緒に出たときのことなんですけど、よく観ていた音楽番組に高校からの友だちと出るってエモいじゃないですか。
──確かにそうですよね。
一緒に出演したあと、「やったね」と乾杯して飲んで、そんでまた喧嘩した(笑)。「だからお前とは飲みたくねえんだよ」って。あいつは子どもだからさ、酔っ払うと俺にちょっかいをかけてくるの。ドンって小突いてくるから俺がやりかえすと、次はボンってやってくる。「オッケー。KAN、今日はもうやめてね」と言うけど、あいつはバカだから頭がクラッとなるくらい強く叩いてくるんです。
──で、瑛人さんも「お前さあ!」となるわけですね。
そう、ぶん殴っちゃう。でもね、最近は3回くらい我慢してる。ウチに飲みに来て、何をされても手を出さない。そんなヤツなんだけど、遊びたくなる。で、この前インスタにもアップしたけど、寝ているあいだに顔に落書きするの。ずっとそんな関係なんだよね。
「お前と飲むのは嫌なんだよ」とか文句言いながら、暇になったら誘うし。だから自分たちがトムとジェリーに重なるんですよ。KANはダンサーとしてすごいし、リスペクトしている。ダメダメなところも知っているし、かっこ良いのも分かっている。
──そういう友だちは貴重ですね。映画は二ューヨークが舞台の話ですが、歌詞のなかに「横浜」「みなとみらい」というワードが出てくるのも興味深かったです。
もともとトムとジェリーってふたりだけの小さな世界でやり合っていたじゃないですか。俺もそうやって小さな世界で遊んでいたし。「キッパリDon’t need」という歌詞があるけど、これは「大きな世界にはいろんな人がたくさんいて、そこには偏見なんかもあるけど、俺はそんなことしないよ。大きな世界に向かってピースオブケーク(楽勝)でイイじゃん」ってこと。俺の世界って横浜だから、そういうリアルな部分を書いたんです。
──だけど瑛人さんは今まさに、世界が広がっているんじゃないですか。
どうかな。世界が広がっているというか、いろんな人に会うようになったなって感じですね。
「こういう生き方もあるんだよって伝えていきたい」
──これまで散々インタビューされて、もしかするとうんざりしているかも知れませんが、『香水』の大ヒットについて尋ねても良いですか。
うん、全然良いですよ。
──『香水』は、曲が一人歩きするくらい大ヒットしましたよね。でも爆発的に広がっていろんな使われ方をすると、自分が伝えたかった意味合いや本質が変わってしまうことがある。もちろん聴き手の自由な解釈があってこその作品なワケですけど。
でも自分の曲は押し付けないというのがテーマだし、「俺はこういう風に生きているんだよ」って感じだから。聴いてくれる人の手を無理やり引っ張るのが苦手で、「こういう世の中でこういう生き方もあるんだよ」という、ちょっとしたメッセージが届けばそれで良いかなって。
──なるほど。
もちろん俺のなかには情熱とバイブレーションがある。そこから曲を作っている。だけど「それに気づいて欲しい」とは思わなくて。「あ、瑛人ってこんなアホみたいな生き方をしているんだな」とか、そういうことでも何でも良いから、ちょっとでも知ってくれたら嬉しいですよね。そういう部分を隠さずに歌い続けたい。確かに『香水』はバズったけど、そこに関するジレンマはないですね。
──「今、旬のアーティスト」という言われ方もしますよね。でも「旬」という言葉には違和感を持ちませんか。
まあ、旬といえば旬ですからね(笑)。だからそう言われることは嬉しいです。だって「旬」と言ってもらえること自体、すごく難しいから。初めてのレコーディングで初配信曲があれだけヒットして、今が旬なのかも知れないけど、俺はまだ下積みもほとんどないしこれから頑張らなきゃいけないんですよね。
──そういう風に捉えられるのはすごいですね。
『香水』がバズったときは、ただただ幸せだったし、楽しかった。だけど昔、みんなとセッションして、バイトしていた時間もおもしろかった。今また、そういう生活に戻ってもきっと楽しいと思う。でも、もうそこには戻らない。俺はずっと音楽をやっていく。そして「こういう生き方ってあるんだよ」と伝えていく。それが自分のやること。ただ、急ぎすぎずにゆっくりやっていきたい。だって『香水』がああいうことになったけど、まだ修業の身だから。
──修業ですか。
覚えなきゃいけないことがいっぱいあるからね。でも「ゆっくりいこう」と言いながら、たくさんの人の前で歌えるようになった状況だけは絶対にキープさせていく。その場所に感謝して歌いたい。だってそこに立てない人はたくさんいるから。一つひとつのステージに敬意を持ってそこに立ちたい。
──今年1月1日にリリースされたファーストアルバム『すっからかん』も素晴らしい作品でしたし、今後の楽曲も期待大です。
今後の楽曲のなかには、以前に作った曲へのアンサーソングがまずあります。これはリハ中に俺も泣いたくらい。あと、寝る前に聴けるようなものとか。それと「これをテーマに歌うんだ」というものもあります。曲紹介で「じゃあ新曲を聴いてください、『○○』」と言うとクスクス笑えるようなやつ。でもめっちゃいい曲。早くみんなに聴いてほしいです。
◇
『トムとジェリー』をテーマにしたコラボカフェは、大阪「心斎橋contact」と沖縄「OKINAWA BOX cafe&space」では4月11日まで、東京「HARAJUKU BOX cafe&space」では5月9日まで開催されている。
瑛人
映画『トムとジェリー』
2021年3月19日(金)全国公開
監督:ティム・ストーリー
声の出演:水瀬いのり、木村昴、霜降り明星(せいや、粗品)、飯豊まりえ
配給:ワーナー・ブラザース映画
瑛人
『「トムとジェリー」カフェ』
期間:2021年3月4日(木)〜4月4日(日)
会場:大阪市西区北堀江1-6-24「心斎橋contact」
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