知られざる僧侶・忍性、2体目の上人像完成

2019.7.14 08:00

忍性の故郷・奈良県三宅町屏風にある浄土寺の藤田能宏住職の依頼で、彫刻家・吉水快聞氏が制作した日本で2体目の「忍性上人像」 画像提供:巧匠堂(写真/萩村裕子)

(写真8枚)
三宅町へ向かう直前の忍性上人像(左)と制作者で彫刻家の吉水快聞さん(7月12日・吉水さんの工房にて)
三宅町へ向かう直前の忍性上人像(左)と制作者で彫刻家の吉水快聞さん(7月12日・吉水さんの工房にて)

「人間臭くない拝める対象になる像」(吉水快聞)

──忍性は、師匠である西大寺の叡尊上人から「慈悲ニ過ギタ」と評されたほど、やさしい人柄のイメージがありますが、像を制作して実際どんな人物だったと思いますか?

吉水さん「それは叡尊が苦言をいってるんですよ。『人助けばかりしていないで、勉強もしろ』って。でも師匠に言われても(救済を)止めなかった、意志の強い人ですよね。アグレッシブに行動する人。ハンセン病は当時(感染が)恐れられていたのに、それでも病者をお風呂に入れたり、背負って運んだり、だから老人にしてはガタイが良いんですよ。やさしいだけじゃできない、その強さを像に入れ込みたかった」

──ほかにも見ておきたいポイントはありますか?

吉水さん「彫るのも彩色も基本的に自分でしているので、化粧技術も参考にして、実は目に下睫毛を描いています(笑)。見た人がほぉって驚くポイントですかね」

下睫毛までもが描かれている上人像。彩色などすべての行程をひとりでおこなっているが、眉、目、鼻の赤、口だけは日本画家に依頼したという
下睫毛までもが描かれている上人像。彩色などすべての行程をひとりでおこなっているが、眉、目、鼻の赤、口だけは日本画家に依頼したという

──SNSで吉水さんの忍性上人像を見たとき、西大寺所蔵の肖像画とそっくりで驚きました。「彫刻家」「文化財修復家」「僧侶」「大学の客員教授・講師」とさまざまな顔を持たれていますが、仏像をつくる人、修復する人、拝む人である吉水さんがこだわった部分は?

吉水さん「大きさなどは極楽寺の忍性像をベースに、お顔は2枚の肖像画も参考にしていますが、模刻ではなく、完全に新しいオリジナルなんです。仏師・快慶の研究もしているので、僧形八幡神像の雰囲気で『人の形だけど神さま』みたいな、人間臭くない拝める対象になる像にしています。そういう意味で難しかったのは顔。オリジナルだけど忍性って分かるようにしないといけないので」

梱包され、いよいよ故郷の三宅町へ出発する準備に入った忍性上人像
梱包され、いよいよ故郷の三宅町へ出発する準備に入った忍性上人像

新たに生まれた忍性上人像。その開眼法要は7月14日・昼1時から、「三宅町文化ホール」(奈良県三宅町)にて(入場無料)。

取材・文・写真/いずみゆか

 

『忍性上人像開眼法要』
会場:三宅町文化ホール
住所:奈良県磯城郡三宅町伴堂689
日時:2019年7月14日(日)・13:00~

「巧匠堂」吉水快聞

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