よう知らんけど日記

第63回 仕事のことも書いてみようキャンペーン中

2014.2.10 18:09

1月☆日
消しゴムはんこを彫ってみました。といっても、絵柄が印刷されててその通りに彫ったらいいだけのキットやけど。
読書、映画、写真系が仕事直結となって趣味がなくなってしまったのと、仕事と全然関係ない、できれば「無心に手を動かす」職人的ななんかやりたいなーと長く思ってて、刺繍も何回かチャレンジしてんけどできあがったものの使い道がいまいちないので続かず。最近、サインするときにおまけではんこを押すので、ええかなと思いまして。これはなかなかにいいですね。消しゴムがやらかいからするーっと彫れるし。細かい作業はいーっとなりがちなイラチですが、なんとか乗り切り、「雷神」完成しました(フェリシモです。日本美術シリーズで、雷神とか仁王とかある)。
それにしてもナンシー関はセンスも技術もすばらしかったんやなと。彫り作業体験してみて思います。絵もうまいし、あの独特の感じを、消しゴムをカッターで彫って出すんやもんなあ。

1月☆日
エンダイブを食べてます。近所のスーパーで売ってて、へー、エンダイブってこういう形状なんやと思って買ってみたらおいしかった。イタリアンとかでサラダに入ってる縮れた葉っぱね。苦みのある野菜好きなんです。クレソンとか。ピーマンやらゴーヤも。
スーパー行くと子供の頃はなかった食材ようさん売ってて、そういう題材のエッセイを書いたこともあるねんけど、小説や作家さんの随筆とか読んでると出てくるから、わたしが知らんかっただけで文化度高いとこは違うかったんやろかと思ったり。確かにうちは食のバリエーションが少ない家庭やったし。向田邦子の料理本にも生ハムとかチコリとかアーティチョークとかアボカドとか書いてあって、え、そんなんわたしアボカド初めて食べたん24歳ぐらい(1997、8年。働き出してからやね)ですよ。向田邦子さん亡くならはったの1981年やねんけど、そんな前からあったん? Wikiってみたら1970年代後半から輸入量が増え、って書いたあるわ。おしゃれな人は食べてはったんやねー。エッセイで「子供の頃は見たことなかった○○が」ってうっかり書いたら読んだ人に「そんなん、あんたが知らんかっただけやで」て思われてるかもしらへんなあ。編集さん、気がついたらつっこんでくださいね。

1月☆日
仕事のこともちょっとずつ書いてみようキャンペーン中。今週は書評&推薦文の締め切りがありました。
書評は原稿の枚数は少なくてもさくっとはいかないものでして、ある程度その作家の今までの作品とか、類似した小説の中での位置づけとかふまえないとあかんし、なによりその作品のおもしろさが伝わるように書かなあかん責任というかプレッシャーというか。好きな小説やとなおさら自分自身がちゃんと読めてるのかなって、心配になる。そう思うと、いろんな方にわたしの本を選んで書いてもらえてるのは、なんてお礼を言うていいかわからんくらいうれしいです。ありがとうございます。

今回、書いてたのはイギリスのトム・マッカシーの小説『もう一度』。とある事故で記憶の一部を失った男が、事故で得た多額の示談金をつぎ込んで記憶の光景を実際に再現しようと、建物を丸ごと買って改装、人を雇って隣人を演じさせ…と、どんどんエスカレートしていく話。なんでこんなことやってんの? と読みながら思いますが、だんだん狂気に踏み込んでいくその行動には切なさがつのります。
液晶画面ばっかり見て日常生活を送ってる人、知らないはずの風景にふと懐かしさを覚えてしまう人、是非読んでみてください。

1月☆日
テレビ画面が大きくなってうれしいのでついつい見てしまう。『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京)がおもろかった。終電逃してたむろってる人に声かけて「タクシー代出すから家行っていい?」っていう番組。おぎやはぎがVTR見ながらコメントはしてるねんけど、実際について行く部分はスタッフだけ。
30代サラリーマン男2人のルームシェアは漫画と酒しかなくて散らかりまくりで朝の4時にギター弾いてスピッツ歌ってくれるし、ガテン系35歳のにいちゃんは家に彼女(バツイチ子供2人)が来てて出会いはファミマでアイスクリーム見てるところにぶつかったとか言うてるし、英会話講師カナダ人のにいちゃんはミニスカ美人(外国人にモテそうな黒髪ロング&アイメイク強め系)をお持ち帰りしようと必死やし、28歳設備工事会社社長は泥酔で家着いた途端に爆睡、部屋には大量の酒。世の中ってこんなにいろんな人がそれぞれ生きてはるのやなあ、とこれぞ「リアル」な番組でした。
テレビ東京って通りすがりの人がおもしろい地味な番組の宝庫。最近ゴールデンに昇格した『YOUは何しに日本へ?』『モヤモヤさまぁ~ず』もいいし、終わってもうたけど『田舎に泊まろう!』も好きやってんなあ。

1月☆日
前回も書いた『ドキュメント72時間』(NHK総合)。今回は260人居住の巨大シェアハウス。スタジオが使えたり共有スペースでイベントも多くて、常ににぎやか。そんなちょっと暑苦しい(すんません)リビングではなく小部屋で一人資格の勉強に励む20代女子が「入る前は自分は社交的だと思ってたけど入ってみたらみんなすごい仲良くしてて全然無理で自分の欠点に気づいた」と話してた。いやいや、それは欠点とちゃうよ! 単に「違う」っていうだけ。シェアハウスに住んでたって別に四六時中全員と仲良くせんでええと思うよ。かと思えば、同棲してた元彼を置き去りにして外国人と同居を始める女子がいたり……。

ちなみに、わたしはシェアハウス絶対無理。テレビで見てるだけで謝りたくなる。家に帰ってきたら一人にしてほしい。短期の旅行でさえ、一人部屋ないと厳しい。え、柴崎さん小説でシェアハウス的なん書いてるやん、とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、小説の中でも主人公はそういうとこに外から遊びに行ってるだけなんですねー。垣間見るぐらいがおもしろいと思います(羨ましい気持ちもあり)。人の家に泊まり歩く話もあるけど、泊めてもらうときは意外に個室的スペース使えたりするしね。260人が住んでるとこって、どんな感じなんかなあ。

1月☆日
お昼頃に南向きの窓を見たら、上のほうに日が当たってる。この窓、真南向いてるねんけど、すぐ前の家の影になって冬至前後は日が当たらへん。それが、あ、ぎりぎり日が当たってる!って気づいて時計見たらちょうど正午。あー、今日からまたちょっとずつ日が当たるようになるんやなあ、と感動してたら、ほんまに一日ごとに日が当たる時間&面積が増えていく。1週間経ったら、え、もうこんな早い時間から!? って思うくらい、日の当たり方が変わってる。太陽は、毎日毎日違う軌道を動いていくのやなあ(もちろんほんまに動いてるのは地面のほうやけど)。
「大寒」やけど、日差しは春を先取りやな。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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