よう知らんけど日記

第64回 ほんま今年は気候が極端やなあ。

2014.2.27 18:10

1月☆日
商品のネーミングって難しいやろなあと、変わった名前の品々を見ると思います。ダジャレになってるのやと、その会議の様子を想像してみたり。で、大変なんは重々承知なのですが、なんでその名前にしてしまったのかとか、個人的な趣味かもしらんけどかえって買う気が薄れる名前もあり……。「天使の○○」って、定番というかよく見かけるけど、あれは売れるんやろか。お菓子関係が多いけど、化粧品なんかもちょいちょいある。ふわっとやさしいイメージなんやろうけど、なんとなく安っぽく感じてしまうねんなー。おばちゃんファンシー的な。そもそも「天使」って、日本の人はそんなに明確な意味で使ってへんと思うねんな。たぶん森永のマークのエンゼル的な羽根生えた赤ちゃんぽいのが定番やけど、あれなにする人? って改めて説明してって言われたら困るもんね。曖昧やからこそ、とりあえずふわっとぷっくりみたいな意味で多用されてるんやろうけど。「天使」ってキリスト教の絵に描いてあるのは不気味やったりするし、映画の『ゴッド・アーミー』とかSF短編の『地獄とは神の不在なり』(テッド・チャン)とかの怖い天使のイメージのほうがわたしにはリアリティあったりする。『エヴァンゲリオン』の「使徒」もそういう恐ろしい天使系やね。
脱線したけど、商品の話に戻ると、宣伝文句の「奇跡のナントカ」も買うの躊躇する。そんなに「奇跡」転がってないやろ、と。

2月☆日
大阪~。
新幹線、いつも乗る直前に切符取るので、このところA席(3人掛けの窓側)が続いてて、せっかく冬の天気いい日でも富士山ゆっくり見られない。でも、A席、海側からでも富士山見えるポイントあるって知ってますか、みなさん。

静岡駅のちょっと西。大阪から東京に行く時のほうが見えやすいのでその向きで説明すると、新幹線の進行方向=前のほうに見えます。大阪行きの場合やと、めっちゃ振り返って見なあかんから後ろの席の人に不審がられてしまうけど、晴れた日やとけっこうよく見える。E席から見るのよりは遠目やけど、駿河湾越しでなかなか風光明媚。
この日もよう見えました。

2月☆日
詳しいことはまだお知らせできないのですが、ある企画で大阪の建物をいろいろ巡っております。この日は、中之島、北浜、本町周辺の近代建築をあれこれ。いやー、あらためて歩いてみると、ようさんあるね、戦前の建物。京都は古い建物多いけど木造の町家とか寺院がメインやし、東京は建て替えられる率が高いから、日本でいちばん煉瓦のレトロビルが狭い範囲にようさん残ってる街なんちゃうかなあ、大阪。とくに、こういうビルが建てられた1920~30年代って、大阪は工業で発展して(東洋のマンチェスターいうやつね)、それに東京は震災ではあったから、一時期日本一の人口やったんよね(今は2位じゃなく3位です。2位は横浜。首都圏やべー)。
外観を残して建て替えたビルもあり、中にはお店や事務所が入って活用してるビルもあり、いい感じにちゃんと街に根付いてる建物がようさんありました。大阪はあんまり伝統とか古い財産を外に向かってアピールせえへんねんけど、街の雰囲気としても観光としてもええもんいっぱい持ってはるから生かしてほしいなあ。そのビルが建てられた往時のような東洋一(大阪は日本一より東洋一が好きな気が)の都ではないけれど、これから日本は高齢化でコンパクトな街づくりをしていかなあかんわけやし、先取りして程良い街の大きさと資産を活用した街にしていったらええと思う。
大阪に戻ってどこかのビルに事務所借りよかなと、真剣に考えてしまうほどでした。
(不動産サイト見たらちょいちょい募集でてました)

2月☆日
ぬるい。冬どこいったん、と思うような、コートいらんぐらいのぬるさ。ほんま今年は気候が極端やなあ。 そういえば、今年は寒い冬っていうてたけど、東京はまだ雪も積もってないしなー。

2月☆日
と、思ったら寒い。めちゃめちゃ寒い。そして大雪情報が。何十年ぶりの大変なことになるとか言うておる。
家出んでもええように食料買うとこ、とスーパーに寄ったら、人がやたら多い。みんな考えることは同じ。
そしてパンの棚空っぽ。買い占めってほどではなく、現代の流通って需要を細かく予想して在庫は減らして配送を増やすことで対応してるから、イレギュラーなことが起こると、すぐこうなっちゃうのよな。
ソチの開会式をちら見しながら、ほんまに降るんかいな、と静かな空を見ながら寝たところ……、

2月☆日
はい、真っ白です。積もってます。天気予報すばらしい。天気予報がない昔の人って、どうしてたんやろか。いきなり台風とか大雪とかで驚いたのか、もっと自然の観察で予測してたのか。ま、たまに世の情報にまったく関心がない人がいて、え、雪!? てな人もおるから、そんな感じやったんかなあ。
今回の雪は、低気圧の風も強くてプチ吹雪初体験。隣の家にはつららもできてる!

前日、外に出んでいいように買い物したくせに、あまのじゃくなんで、大変な天候でゴーストタウン状態の外を見てると今日はがらがらであろうスーパーに行ってみたくなり、好奇心に負けて外に。ほんまに横風に雪なので、傘差してても全身すぐに真っ白。道はどこの雪国やねんとつっこみたくなるほど、吹き溜まりができて30センチぐらい積もってる。近所の子供がかまくらつくってるし。たどり着いたスーパーは、お客さん少ないけどいてて、店員さんがやけになって投げ売り状態。ここの特売アナウンスの男性、普段は標準語でしゃべってはるねんけど前に数を数えたときに「い~ちにぃさぁんしぃ~」ってなったので「あなた関西人ですね」と密かに思ってたのですが、この日は終始関西アクセント全開。ノリノリでマグロ刺身激安試食し放題をアピールしてはりました。ちょっと食べたらあまりにもおいしかったので中トロ買ってしまった。
帰ってきたら、さっき自分が歩いていった形跡が消えて完全に新雪に。いやー、貴重な経験しました。

2月☆日
で、翌日は都知事選。天気は台風一過的に良くなって、青空はいいけど雪が溶けまくり。一見、昨日の新雪のままやけど、踏んだら水が染み出してくるし、街中シャーベット状態。一応、アウトドア対応の靴で出てきてんけど、長靴でくればよかったと後悔するくらいの水浸し。雪が土手みたいになって溶けだした水が流れていかへんのよね。 あちこち雪かきしてはったけど、きっちりきれいに雪かき済んでるとこ、人が通るとこだけけもの道みたいによけてあるとこ、まったくほったらかしのとこの差が激しくて、こういうとき近所づきあいとか若い人手があるとか重要やなあと、つくづく思いました。

2月☆日
で、やっと雪が溶けたなーと思ったら、またもや白い。寒い。早くやんでほしい。
スーパー行ったらまたマグロ売ってるかなー。

などと、先週に比べたらたいしたことない予報をあてにして余裕で構えてたら、あれ、なんか、外がどんどん白く埋もれていくような……。雨に変わるとか言うてたのに、やむ気配なし。気づいたら雪の重みでマンションの植木が折れてました。えー。ニュース見たら、東京だけでも電車止まりまくり&追突したとか、アーケード落ちたとか……。東京に住んでてこんな大雪を体験するとは思いもよらず。引っ越して来た最初の冬に、翌日まで残る雪を初体験して雪かきの意味をやっとわかった軟弱者ですが、雪の怖さ&やっかいさをやっと実感することとなりました。

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柴崎友香(しばさき・ともか) 1973年大阪生まれ。映画化された『きょうのできごと』で作家デビュー。2007年に『その街の今は』で第57回芸術選推奨科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞大賞、第24回咲くやこの花賞受賞。2010年に『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞受賞。2014年に『春の庭』で第151回芥川龍之介賞受賞。著書に『青空感傷ツアー』『フルタイムライフ』『また会う日まで』『星のしるし』『ドリーマーズ』『よそ見津々』『ビリジアン』『虹色と幸運』『わたしがいなかった街で』等多数。
公式サイト:http://shiba-to.com/

権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
キレイ:https://naohirogonda.tumblr.com/
風呂ンティア:https://frontier-spiritus.blogspot.jp/

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権田直博(ごんだ・なおひろ) 1981年大阪生まれ。画家。さまざまな手法を使って作品を作り、すべてを絵ととらえている。風呂からパブリックスペースまで幅広く活動中。
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