「30年前の自分に、ちゃんとやれよと伝えたい」ウッディと歩んだ30年、唐沢寿明が語る『トイ・ストーリー』

30年間『トイ・ストーリー』のウッディの日本版声優を務める唐沢寿明
1996年の日本公開から30周年を迎えたディズニー&ピクサーの人気シリーズ『トイ・ストーリー』。世界初の長編フルCGアニメーション映画として映画史を塗り替えた作品は、世代を超えて愛され続けている。
主人公ウッディの日本版声優を30年にわたり担当してきたのが俳優の唐沢寿明だ。7年ぶりの新作『トイ・ストーリー5』公開を前に、ウッディとの歩みや作品への思いを聞いた。
■米スタバで聞いた、ウッディ起用の知らせ
俳優がアニメーション作品の吹き替えを担当することが、今ほど一般的ではなかった時代。唐沢がウッディ役に決まったきっかけは、意外な形で訪れた。
複数の俳優の中から選ばれたそうで、その知らせを受けたのは、CM撮影で滞在していた米ロサンゼルスのスターバックスだった。「吹き替えの経験がなかったので、正直どうしたらいいのか迷いました」と当時の戸惑いを明かす。

まずは作品を見てから判断しようと、すでに米国で公開されていた『トイ・ストーリー』を鑑賞した。「映像にまず驚きましたね。実写とアニメーションが融合したような感覚で、フルCGアニメーションはすごいと思いました」。
経験のために挑戦してみよう──そんな気持ちで引き受けた仕事だった。ただ一つ気になったのは、USオリジナル版でウッディを演じるハリウッド俳優のトム・ハンクスとの声の違いだった。「僕の方が声が高いので、それで大丈夫なのか確認してほしいと伝えました。でも問題ないと言われて安心しました」。

■「ウッディは、ずっとそばにある特別な存在」
当時はもちろん、シリーズ化など想像もしていなかった。「本当に1本だけの作品だと思っていました。まさかこんなに長く続く作品になるとは」。
それから30年。ウッディは唐沢にとって特別な存在になった。「ずっとそばにある存在ですね。ここまで長く同じ役を続けることは、俳優人生でもまずないです」。
一方で、自身を「本職は俳優」と位置付ける姿勢は一貫している。以降も声優の仕事は多くを断ってきたという。「声優さんは声そのものが武器だけれど、俳優はそうではない。だからキャラクターに俳優なりに感情を乗せていくしかないんです」。

■「俳優が声をやっていいんだ」30年目で実感
長い年月の中で、唐沢の中にも変化が生まれた。「USオリジナル版ではトム・ハンクスさんが今もウッディの声を演じている。だからこそ、『俳優が声をやっていいんだ』と、ようやく最近思えるようになったぐらいです」。
最新作『トイ・ストーリー5』では、おもちゃたちがタブレット端末という現代的な存在と向き合う。「おもちゃVSテクノロジー」という構図が描かれるが、その根底にある物語の本質は変わらないと見る。
「デジタル機器が出てくるのは今の時代として当然。ただ、その根っこにあるのは昔から変わらない普遍的な物語だと思います。デジタルとアナログの対立ではなく、デジタルをただの悪者にしないのがディズニー&ピクサーらしさです」と語る。

シリーズの魅力について尋ねると、即座に言葉が返ってきた。「キャラクターの完成度ですよ。捨てキャラクターが一人もいない」。
ウッディやバズ・ライトイヤー、ミスター・ポテトヘッド、スリンキー・ドッグら初期からの仲間を挙げ、「最初にこれを考えた人は天才だと思う。おもちゃが子どものいないところで動き出すなんて発想自体が画期的ですよね」と感嘆していた。
■ 親から子へ受け継がれる作品
そして、30年続く理由について、唐沢は「映画と一緒に子どもが成長できる学びの要素がちゃんと入っている。だから30年前に見ていた子どもが親になって、自分の子どもにも見せるという循環が生まれているのでは」と分析する。
現代ではスマートフォンやタブレットとの付き合い方も大きなテーマだ。「子どもだけを責めることはできないですよね。大人だって見てしまうんですから」。

その一方で、想像力を育てる遊びの重要性も強調する。「人形遊びには想像力が必要です。外で体を動かすことも含めて、そういう時間は大事にしてほしいですね」。
もし30年前、初めてウッディを演じた頃の自分に声をかけるとしたら──。少し考えた後、笑いながらこう語った。「『ちゃんとやれよ』ですね(笑)。30年続くから、ちゃんとやれよって」。
■ ウッディの声がキャリアの“最終兵器”!?
30年にわたってウッディを演じ続けてきた経験は、俳優としてのキャリアの中でも特別な重みを持つようになったそうで、「こんなに長く続く仕事は他にないですからね」と唐沢。
ドラマや映画で数々の代表作を持つ一方、『トイ・ストーリー』は世代を超えて自身を知ってもらうきっかけにもなっているという。
「今の若い子たちは僕のドラマを見ていない人も多い。でも『ウッディの声をやっている』と言うと、『えっ!』って驚くんですよ」。冗談めかして「最終兵器みたいなもの」と語るが、長年の積み重ねがその言葉に説得力を与えている。
■「久しぶりの再会を楽しんで」
最後に、新作を待つ観客へメッセージを寄せた。
「久しぶりに戻ってきたウッディとバズが、ケンカしながらも一緒に進んでいきます。相変わらず“また同じことをやっているな”と思うけれど、その安定感がいいんですよね。涙するシーンもあり、ロマンティックなシーンもあり。ジェシーの活躍も見どころです。昔見ていた人にも、もう一度楽しんでもらえたらうれしいですね」。
『トイ・ストーリー5』は7月3日に全国の映画館で公開される。
取材・文・写真/西部マキコ
スタイリスト/勝見宜人(Koa Hole inc.)
衣装:BOB(タキヒヨー TEL03-5829-5671)
映画『トイストーリー5』
2026年7月3日(金)全国公開
監督:アンドリュー・スタントン
共同監督:ケナ・ハリス
日本版声優:唐沢寿明(ウッディ役)、所ジョージ(バズ・ライトイヤー役)ほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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