「公式なのかよ」小林製薬『糸ようじ』音MADが14万いいねの大反響、制作陣は“ギコギコはしません”世代

2時間前

ネット民を虜にした「小林製薬」のプロモーション動画『糸ようじスルッと入るタイプWEB「最狂ギコギコRemix」篇(1YS-0034)』

(写真3枚)

製薬会社「小林製薬」(大阪市中央区)が突如公開した『糸ようじ』のプロモーション動画が、Xで約14万いいね、YouTubeでは再生回数221万回という大反響を呼んだ。一見すると通販番組のような映像だが、再生が始まるとネットユーザーにはおなじみのネタが次々と飛び出す“音MAD”形式の動画で、「公式なのかよ」「本職の仕業」と驚きの声が相次いだのだ。

企業がネットミームを取り入れた広告は珍しくないものの、「分かっていない」「ネット文化を消費しているだけ」と厳しい反応を招くケースも少なくない。そんななか今回の動画は、「冷笑しようと思ったら大敗北した」「感心するよりゾッとする」と古くからのネットユーザーからも高く評価され、ネット文化への深い理解がうかがえる完成度の高さが話題となっている。

なぜここまで支持を集めたのか。制作チームに話を聞くと、その根底には「インターネット文化へのリスペクト」があった。

■「ネット文化へのリスペクト」から始まった挑戦

動画制作の出発点となったのは、同社が抱える「20~30代の歯間ケア習慣化」という課題だった。厚生労働省の調査によるとデンタルフロスを使ったオーラルケアの実施率はまだまだ低く、全体の約半数にとどまっているという。

担当者は、「糸ようじの使用に『痛そう・面倒そう・自分にはまだ早い』という心理的ハードルを感じている方が少なくないなか、従来型の広告では届かない層にどうやって届けるか。そんな問いに真剣に向き合った結果が、今回の動画です」と制作の経緯を明かす。

そこで着目したのが、すでにネットミームとして自然に受け入れられていた「ギコギコはしません」というフレーズだ。「ギコギコはしません」といえば、テレビショッピング・QVCの名物実演販売士、福島豊氏がパン切り包丁の実演時に口にしたキラーフレーズだ。

このフレーズと「スルッと入る糸ようじ」の本質的な特徴である「ギコギコせずにスルッと入る」が完璧に一致していることが決め手となったとか。

『糸ようじスルッと入るタイプWEB「最狂ギコギコRemix」篇(1YS-0034)』の一場面

近年ではネットミームを使った宣伝をする企業も増えているが、表面的なアプローチではなく、あくまで「製品の本質的な価値とカルチャーが本当に一致するか」を徹底的に検証した上で、制作に踏み切ったという。

そしてネットミームを使い製品の価値をストレートに伝える方法を突き詰めた結果、たどり着いた表現が「音MAD」形式だ。制作にあたり何より恐れたのは、「ネット文化を雰囲気だけ真似た企業広告」というネガティブな印象になること。そこで制作チームは当時の空気を身体で知っている「ギコギコはしません」世代のメンバーで固めた。

『糸ようじスルッと入るタイプWEB「最狂ギコギコRemix」篇(1YS-0034)』の一場面

■「本物だと感じてもらえるか」 “ギコギコ世代”が徹底再現

インターネット文化へのリスペクトがベースにあるということで、演出面にもこだわった。企業広告であれば通常「綺麗に仕上げがち」になるところを、あえて音MAD特有の粗さや質感を再現。さらに「知っている人が見たときに本物だと感じられるか」を最優先の基準とし、ブランドチームと制作チームで何度も議論を重ね、インターネット文化のオマージュを詰め込む工夫を凝らした。

その結果、Xでは14万いいねを記録する大反響があり、ネットユーザーからも受け入れられているわけだが、担当者は「私たちが目指したクオリティへの最大の評価だと受け止めています」と振り返る。

同社といえば、以前にも笑顔で鼻うがいをする姿がインパクトを与える『ハナノア』のCMなどユニークなアプローチをおこなってきた。それもすべて「この製品の価値を、最も届くべき人に、最も届く形で伝えるには何か」という想いがもとになっており、今回の動画もその延⾧線上にあるという。

最後に担当者は、「今後も、製品と生活者、そして文化の接点を真剣に探り続けることで、生活者の皆さまに驚きや気づきを届けられるよう、特定の表現形式に縛られることなく挑戦を続けてまいります」と意気込みを語った。

取材・文/つちだ四郎

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