だ、誰? 初登場なのに“感動エピソード”…池松壮亮「秀吉」が号泣する“2人の戦友”【豊臣兄弟】

『豊臣兄弟!』第22回より。不本意ながら、尼子家が守る上月城からの撤退を叫ぶ羽柴秀吉(池松壮亮)(C)NHK
豊臣秀吉の名参謀と言われた弟・豊臣秀長(小一郎)のサクセスストーリーを、仲野太賀主演で描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。
6月7日放送の第22回「播磨大誤算」では、秀吉の黒歴史とも言われている上月城の惨事が描かれることに。その狙いや、今回秀吉とともに戦った尼子の人々の壮絶な背景について語っていこう。
■ 秀吉を信じ、援軍を待つ上月城…第22回あらすじ
小寺(黒田)官兵衛(倉悠貴)の調略で、播磨の国衆たちはすべて織田方に付いたかと思われたが、東播磨最大勢力の別所長治(下川恭平)が寝返ったという知らせが入る。
さらに、秀吉が攻略した上月城にも、毛利・宇喜多の軍勢が攻め入ってきた。上月城は毛利家に滅ぼされた尼子家の再興を目指す尼子勝久(渡邉蒼)と、家臣・山中幸盛(廣瀬友祐)が守っていたが、秀吉の援軍が来なかったために落城した。

一方、有岡城城主の荒木村重(トータス松本)は、織田信長(小栗旬)に毛利への内応を疑われ、刀に刺した饅頭を食わされるという屈辱を受ける。
放免されて国へ戻った村重だったが、そこに与力の高山右近(市川知宏)と中川清秀(すがおゆうじ)が、毛利家の外交僧・安国寺恵瓊(立川談春)を引き合わせる。話し合いを拒否する村重に、信長は一度疑った者を簡単には許さないということを、恵瓊はほのめかした・・・。
■ 日曜20時に配慮?史実ではもっと残虐…
官兵衛が、秀吉が乗り込む前から国衆たちを織田方に寝返らせて、絵に書いたようなドヤぶりを見せていた第21回だったが、修羅の国・播磨(兵庫県)はそんなに簡単に平定できるものではなかった。
未だにどちらに付くのが有利なのかと迷ってる国衆たちを、完全にこっち側に引きずり込むにはどうしたらいいか? そこで秀吉たちが振るったのは「鞭と飴」でいうところの鞭の方だった。

上月城での残虐行為に関しては、今回は秀吉が行ったことではなく、そもそも城内で自害した人たちを磔にして、織田軍の容赦のなさを毛利方にアピールして服従させるという、軍師・竹中半兵衛(菅田将暉)の作戦という説になった。
史実的には多分秀吉がやったことだと思うけど、このデモンストレーションによって、信長は引きつづき秀吉を播磨攻略の任に付かせたわけだから、その点では半兵衛の読みは当たったということになる。

ちなみに、負けた側の女性や子どもを、見せしめとして磔・串刺しにすること自体は当時珍しくなかったし、信長の一向一揆殲滅(せんめつ)作戦では、もっと残虐な行為が各地で行われている。信長は戦略として結構「飴」を使うケースもあったけど、鞭を振るった場合のジェノサイドぶりが史上空前だったのは確かなので、余計に残虐非道のイメージがつきまとうのだろう。
『豊臣兄弟!』ではその辺りをどこまで書くかが見ものだったけど、さすがに夜8時という時間帯と、近年のコンプラとかトリガーアラートなどを考慮して、最小限の描写に押さえているようだ。
■ この2人、誰?秀吉が感情移入する「尼子家」

そして、今回の上月城攻略で、尼子勝久と山中幸盛という武将が秀吉の戦友として登場したけど、割と「この人がどういう人かは皆さんご存知ですよね? 知らなかったら各自ググってね」という感じでサクサクとドラマを進めていく『豊臣兄弟!』なので、「この2人は何者ですか?」と置いてけぼりになった人も、少なからずいるのではないだろうか?
毛利家とはとんでもなくディープな因縁を持つ、この2人に付いてお話していこう。

尼子家はもともと中国地方の山陰エリアで大きな勢力を誇っていたけれど、毛利元就(現当主・輝元の祖父)によって、この10年ほど前に滅ぼされた。
しかし、山中幸盛(山中鹿介の名前の方が有名かも)などの家臣たちは簡単にはあきらめず、最後の当主と親戚関係にありながらも、お家騒動のために出家していた勝久を擁立。そこからずっと、毛利に戦いを挑んでは敗走を繰り返すという、戦国版・漫画『逃げ上手の若君』(集英社)状態となっていたのだ。

ちなみに山中幸盛は、数ある戦国武将の配下のなかでも、トップクラスで優れた人物と言われている。生涯で60個以上の首級を上げるほど武芸に秀で、様々なアドバイスや心遣いの言葉が数多く伝わっている。
そのなかでも有名なのは、月に向かって「願わくば、我に七難八苦を与え給え」と唱えたという逸話。どんなに大きな苦難も乗り越えて、お家再興という悲願を果たすという熱い思いがこもった言葉で、彼の代名詞ともなっている。
月がその願いを聞き入れたのかどうなのか、中国地方をガッツリ押さえた毛利にはなかなか勝てず、勝久と幸盛は織田家に近づき、明智光秀(要潤)の軍に加わった。
そこでもいろいろ武功を上げていたようだが、秀吉が播磨攻めを開始するとそちらに合流。毛利を直接ぶっ叩ける絶好の機会ということで、きっと強く志願したのだろう。そういうバックグラウンドを考えると、元の領地に近い上月城を任されて、目をキラキラさせていた尼子軍の喜びの大きさが理解できる。
■ 秀吉が撤退した、その後の運命は…

しかし、播磨で最も大きな力を持つ国衆・別所家の謀反と、毛利・宇喜多の連合軍が上月城を攻撃するタイミングが重なったのが「そこまで七難八苦を与えなくていいだろう!」というほど不運だった。
勝久は息子ともども自害し、生け捕りにされた幸盛は毛利家に連行される途中で、毛利の家臣によって誅殺された。確かに尼子家を徹底的に潰すには、再興へのガッツがすごすぎる幸盛を亡き者にするのが、最適解だったのだろう。

そんなわけで、まだ播磨のゴタゴタは当面つづきそうだけど、ここまでいろんな国衆や、荒木村重までもが毛利の方に寝返ったのに、なんで毛利は信長の勢力をそこまで削ぐことができなかったのか?
どうやら来週以降には、その原因が浮き彫りになってくるのではないだろうか。そして、自分たちの差配一つで多くの人の命が失われる/救われるというプレッシャーをなんとか乗り越えた豊臣兄弟たちが、いかに逆襲していくかも期待しよう。
◇
大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。6月14日放送の第23回「さらば半兵衛」では、小寺官兵衛が荒木村重に囚われてピンチに陥るところと、織田の人質となっている彼の息子をめぐって、竹中半兵衛が最後の策略を巡らせるところが描かれる。
文/吉永美和子
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