【どうする家康】10年後に一矢報いる家臣団、まるで卒業式

2023.10.4 16:30

『どうする家康』第37回より、酒を交わす三河家臣団 (C)NHK

(写真7枚)

古沢良太脚本・松本潤主演で、厳しい選択だらけの徳川家康の人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。10月1日放送の第37回『さらば三河家臣団』では、家康をここまで支えてきた三河家臣団が、秀吉の命令により解散することに。まるで卒業式のような別れの盃のシーンに、SNSは笑い泣きとなった(以下、ネタバレあり)

■ どうする家康、家臣団と離ればなれに

豊臣秀吉(ムロツヨシ)は関東の覇者・北条家の征伐に乗り出し、それが叶ったあかつきには、家康に北条の領地をすべて渡すと明言。しかし本多正信(松山ケンイチ)と側室・阿茶(松本若菜)は、その代わりに家康の現在の所領がすべて召し上げられることになると読んでいた。家康は家臣団の動揺をおそれ、このことを皆に伏せたまま小田原攻めをおこなう。

小田原平定後、関東への国替えと同時に、家臣たちを城持ち大名として独立させるという、秀吉の命令を受け入れた家康。それを家臣団に告げると、大久保忠世(小手伸也)を通じて、すでに全員が承知しており、「新たな領国を治めるのもまた、大いにやりがいのあること」と前を向き、離ればなれになっても心はひとつだと確認し合うのだった。

■ 10年後に一矢報いる、濃い絆の三河家臣団

SNSでは「#ど家箱推し勢」なんてハッシュタグができるほど、視聴者から愛された三河家臣団。それがサヨナラするってどういうこと? と、次回予告のサブタイトルが流れた瞬間、箱推し民たちは激しく動揺。しかしこの37回の蓋を開けてみると「三河からの転封」と「城持ち大名となることで、建前上は家臣ではなくなる」ということだった。

『どうする家康』第37回より、家康から三河を離れる旨が伝えられる家臣ら (C)NHK
『どうする家康』第37回より、家康から三河を離れる旨が伝えられる家臣ら (C)NHK

ケンカや誰かが死ぬという展開ではなく安堵したものの(ちなみに「海老すくい」の酒井忠次(大森南朋)は、この頃すでに隠居)、やはり「三河」の「家臣団」でなくなるのは事実。SNSでも「ど家箱推し勢としては受け入れがたい」「家康を江戸に追いやり家臣団をバラバラにさせ、秀吉はよっぽど家康を恐れているんだね」など、悲しみと憤慨の言葉が。

しかしそこは、ときに殴り合い、ときに励まし合い、ときに殿の命を狙った(笑)、家族よりも濃い絆とたくましさを持つ三河家臣団。「こんなことで俺たちの関係が崩れると思うなよ、バーカ!」と秀吉に言わんばかりに、さらに団結力を高めた10年後、関ヶ原の戦いで豊臣家に一矢報いることになるんだから、秀吉も余計なことをしてしまったもんである。

そして家康が、1人ひとりに思い出を語っていく別れの盃のシーンでは、SNSで「あの三河の田舎のえびすくい家臣団がよくここまで大きく強くなったよ」「徳川家臣団のみんなにかける殿の言葉が温かくてもう涙が止まらない」「ねぎらいと共に配属先の領地発表いいな。卒業式みたい」「今夜はまるで徳川家臣団の卒業式やん」などの言葉が流れた。

■ 大久保忠世の好アシスト、オチ要員の半蔵

しかし血の気の多い三河家臣団が、よく殿からの説明だけで納得できたな? と思ったら、知恵者の正信の策略で、家臣団の兄貴的な存在である「三河一の色男」大久保忠世が、こっそり事実を告げて皆に1回怒られることで、ガス抜きをしていたことが発覚。この意外な人物の好アシストに、SNSでは一気に忠世を称賛する声が止まらない状態に。

『どうする家康』第37回より、仲間にボコボコにされる大久保忠世(小手伸也) (C)NHK
『どうする家康』第37回より、仲間にボコボコにされる大久保忠世(小手伸也) (C)NHK

「忠世兄、株爆上げだ」「忠世さんww損な役回りをありがとう」「全員からボコられるという形で手短にまとめたか。別の意味で感心してる」「第37回は、忠世兄の回と言っても過言ではありませんね!」などの声に混じって、「正信、みんなが立てなくなるまで言った奴がボコられるのを解ってて、忠世兄ぃに説得役ぶん投げてるよね」という推測もあった。

そうしてみんなが領地をあてがってもらい、涙涙の別れか・・・と思いきや、すっかりオチ要員となっている服部半蔵(山田孝之)だけ領地がないことに気づき、家康と一緒に江戸に行くという流れは、SNSも湧いた。ただ、家康についていったおかげで、今も地下鉄「半蔵門線」はじめ、東京のあちこちに半蔵の名前が残っているわけだから、まさに「人間万事塞翁(さいおう)が馬」だろう。

『どうする家康』第37回より、ひとり領地をもらえず落胆する服部半蔵(山田孝之) (C)NHK
『どうする家康』第37回より、ひとり領地をもらえず落胆する服部半蔵(山田孝之) (C)NHK

実際SNSでも、あからさまに落胆している半蔵に対して一斉に「服部半蔵さん、400年後にも自分のファーストネームが地下鉄の名前として残ることが確定」「領地がもらえない半蔵に対して、実況TLが、君は門と地下鉄で名前が残るから! って慰める人が多くて笑った」「殿と一緒に江戸って聞いて『おい半蔵、ちょっとそこ変われ』って一瞬思っただろ三河家臣団たち。正直に言いなさい」などのコメントが並んだ。

『小牧・長久手の戦い』では「徳川四天王が完成形となって大敵に立ち向かう」など、少年漫画を思わせる胸熱な演出の多い『どう家』だが、卒業式のような家臣団の別れのシーンもまた、今回のドラマの名場面のひとつとなるだろう。また、大久保忠世の出演はこれが最後だと演じる小手伸也がトークショーで明言。出番はさほど多くなかったものの、今回の忠世のように「縁の下の力持ち」に徹してドラマを締めていた小手に、改めて拍手を送りたい。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。10月8日放送の第38回『唐入り』では、明国を手に入れようとする秀吉が、肥前名護屋城に家康を含めた諸大名を集め、朝鮮と戦を繰り広げる様が描かれる。

文/吉永美和子

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