外国人不法労働者を描く、リアルな声から生まれた映画とは?

左からアン、フォン、ニューが不法労働者となり日本で稼ぐために漁港で働く。(C)2020 E.x.N K.K. / ever rolling films
今や当たり前となった外国人労働者たちだが、同時にその不当な労働環境なども社会問題となっている日本。藤元明緒監督が映画『海辺の彼女たち』を撮るきっかけとなったのは、まさに技能実習生から悲痛なメールを受け取ったことだった。
今回の主役となるのは3人のベトナム人の女性たち。劣悪な環境から脱走して、ブローカーを頼りにたどり着いた新たな仕事先。しかし、パスポートを以前の職場に置いてきたままの彼女たちは不法就労となり、切実な問題に直面する。
同作品は現在、東京で5月1日から満員が続いており、大阪・名古屋も最初の週末(5月8・9日)は完売になるほど話題に。今回、撮影した背景や思いなどを藤元監督に話を訊いた。
取材・文/ミルクマン斉藤
「彼女たち自身のバックボーンも影響してた」
──前作の『僕の帰る場所』はミャンマー移民の家族の話でしたよね。藤元監督も行ったり来たりされ、あいだに撮られた短編『白骨街道』(『大阪アジアン映画祭2020』で上映)もミャンマーで撮られていたので、次もそうなのかなと思いきや、ベトナム人技能実習生の話でした。
「次はミャンマーで何を撮るの?」とよく言われたんですよ。でも率直に言って、これはもしかして僕の幅を狭めるんじゃないかという思いがありました。別に僕はミャンマーキャラで売りたいわけじゃない(笑)。
今、東南アジアからいっぱい人が日本に来てますよね、フィリピンとかインドネシアとか。でも報道とか見るとベトナムの方がいちばん多くて、実習先から逃げたあとでどんなコミュニティができているかとか、どんな人脈があるかとか、そういういうところを加味して、まずベトナムでオーディションしようって考えたんです。もし人材が全然いなかったら別の国でオーディションすればいいじゃん、って感じで。
──なるほど。最初からベトナムをそんなに意識していたわけじゃないんですね。
とりあえずホーチミンとハノイでオーディションをおこなったんです。僕と(プロデューサーの) 渡邉一孝さんと(撮影監督の)岸建太朗さんで渡航して。100人ぐらい集まったなか、結果この3人になったって感じですね。
──3人とも女優さんなんですか? それとも女優さん未満な感じ?
(ニューを演ってくれた)クィン・ニューは完全に初めて映画のオーディションに参加したみたいですね。ファッション雑誌とかのモデルの仕事してたんですけど「女優になりたいです」って。でもほんとに天才型で、言ったらすぐできちゃう。
──服の色的にも一番地味で、3人組の仲を取り持つような役柄ですね。後半、主演みたいな立ち位置になってくるフォンちゃんは?
彼女はホアン・フォンっていうんですけどテレビキャスターですね。一本、中国映画に出たことがあります。実家が農村部で、『第三夫人と髪飾り』って映画があったでしょ? ああいう自然がすごいところに住んでたんですが、女優になりたいからと言うことでハノイに。演技はそんなに達者ではないんですが、あ、これは主役だと。
──リアリティがすごいんですよ。岸さんのキャメラも彼女にずんずん密着して追っていく。ダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』のあたりの作品みたいに。
ちょくちょく言われます。ダルデンヌかケン・ローチかクリスティアン・ムンジウ(ルーマニアの映画作家。『4ヶ月、3週と2日』等)みたいって。

──まあ、それは短絡的に過ぎるような気もしますけどね。で、ちょっと3人を引っ張っていく感じの赤い服着たアンちゃんは?
彼女はファン・トゥエ・アンっていうんですけど、お姉さんが家族のために台湾に出稼ぎに行ってるんですよ。ということはこの映画では、そのお姉ちゃんをアンが演じることになるかもな、って話もあって。やっぱり彼女たち自身のバックボーンも影響してたのかなぁと思います。
3人ともそんなに低収入な家庭環境ではなかったんだけど、都市部ではなくて、これがベトナムの超上流階級の女性だったらできてなかったですね。それにアンはインディペンデント・フィルムにすごくアプローチしてて、東南アジアのワークショップに参加したり、割と土台ができていた一番の経験者なんです。
──インディーズ界も盛り上がってるんですね。いや、ここ数年のベトナム映画の洗練され具合ったらないじゃないですか。商業映画もすごいいレベルになってるし。まあ、東京の映画祭ならどっちかっていうと芸術系ばかりになっちゃうんだけど、大阪アジアンのディレクターの暉峻さんはほとんどエンタテインメント系のベトナム映画を選んでくる。
こだわってるんですね。
──うん、それがすごく面白い。『サイゴン・クチュール』とか『ハイ・フォン:ママは元ギャング』とか『走れロム』とか、10年ほど前の作品と比べると映画の質が変わってきてる気がしてちょっとめざましいんですよ。だから俳優陣の質も厚いのかな、と。
そうだと思います。もともと狙ってた女優さんが一人いたんですよ。21、2歳くらいで、主演にはその子が良いなと思ってベトナム行ったら「最近女優辞めました」みたいなことで。
──この『海辺の彼女たち』にしても、たびたびニュースで採り上げられたりする脱走技能実習生の話だし、実際辛い話ではあるし、社会派映画として受け取られるのは、それはそれで間違いじゃない。だけど、僕はそこで終わってない気がするんですね。ぶっちゃけて言えばこの3人組、どこか「ももクロ」あたりを思わせるようなかわいさがあるんです。そのコンビネーションがね。
重すぎない、ってところが。
──そう。思わずさっきから言ってるけれど「~ちゃん」って言いたくなるほどそれぞれかわいいし個性があるし。キャラクターをわりあい早く認識できるのは、服で区別してるからというのも非常に大きいけれども。
そんなにすんなり顔って認識してもらえないと思ったんで、服を1着ずつにしました。本当の技能実習生の素人を使うのもアリだね、ってすごく迷ったんですけど、今そういう風に言っていただいて結果的に正解だったのかなって思います。多分、本物の実習生を使っても、映画的なリアルじゃなくて、本当にリアルすぎて目指すものとは違ったものになったかな、と。
『海辺の彼女たち』
脚本・監督・編集:藤元明緒
出演:ホアン・フォン、フィン・トゥエ・アン、クィン・ニューほか
配給:株式会社E.x.N
関西の上映館:シネ・ヌーヴォ(5月8日〜)、京都シネマ(5月7日〜)、神戸元町映画館(5月8日〜)
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