朝ドラ・エールで痺れた、説得力あるケレンの効いた演出とは

2020.5.28 20:15

第30回より、ずぶ濡れでハーモニカを弾く裕一(窪田正孝)(C)NHK

(写真19枚)

「この週の白眉は、金曜に訪れた」

すべてを諦めかけた裕一は、借りた傘を返しに権藤家を訪れる。そこで障子越しに祖母が、「あの子は跡取りさえ作ってくれればいいんだから」と言ってのけるのを聞いてしまうのだ。種馬か。

縁側に傘を放りだし、憤怒のあまりに降りだした豪雨が溜まった水たまりに倒れ(ここ俯瞰)、部屋に戻って泥まみれでハーモニカを吹く裕一。そこで実家に乗り込み、決然と「僕はこの家を出ます」と絶縁宣言するのだ。

とにかくこのドラマ、照明と撮影にエッジが効いてて巧い。やや強引にしろ、くだくだやるより説得力のあるケレンの効いた演出(この週の監督は松園武大)には痺れる。

裕一の繊細さ、傷つきやすさを心配し、安寧を一番とする母(菊池桃子も押しは強くないがいい演技だ)の思いやりを振りほどいて、東京へと彼は旅立つ。

駅には父が待っている。「俺、家族捨ててきた」という裕一に、「お前が捨てたって俺はお前を捨てねえ。ま、俺みたいになんな」と見送る父。ディレッタントな役が似合う、唐沢寿明らしいここ一番の見せ場であった。

第30回より、父・三郎(唐沢寿明)に別れを告げる裕一(窪田正孝)(C)NHK
第30回より、父・三郎(唐沢寿明)に別れを告げる裕一(窪田正孝)(C)NHK

しかもこの15分はまだ続きがある。東京に独り出てきた裕一と対面するや、自分から抱きついていく音(もう女性上位!)。コロンブスレコードとの契約。「喫茶バンブー」(竹取物語ね)の裏にある家を借りて、縁側でもうイチャイチャ。

いや、これくらいの推進力が欲しいのだ、朝ドラの前作とは真逆である。予想通り、木枯正人=古賀政男もすでに顔を出したし、演じるRADWIMPSの野田洋次郎は主演作『トイレのピエタ』ですでに普通の演技者では予想できないものを演じていただけにとても楽しみ。

【今週出てきた曲】
●ヴェルディ/歌劇「アイーダ」より凱旋行進曲(川俣に帰る裕一のバックに)
●メンデルスゾーン「歌の翼に」(音が湖で歌っていると“謎の男”にアドヴァイスされる曲)
●グリーグ「ペール・ギュント」より「朝」(川俣銀行の鈴木くんが婚約宣言するときに)

文/ミルクマン斉藤

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