今、関西の劇団に元気がない！ そんな声がちらほらと聞こえてくる中、実際のところ渦中の劇団やその周辺の関係者はどう考えているのか？ そこで関西演劇界の未来について語り合うべく、中の人、外の人を交えて座談会を開催！ なかなか集まることのない面々が、しっぽり呑みながら思うところを語った約３時間。どんな本音が飛び出したのか･･･。

日程：11月某日
会場：味園（大阪市中央区千日前2-3-9）
出席者：
益山貴司（劇団子供鉅人・主宰。谷町六丁目で10年間活動した後、2014年夏、東京に拠点を移す）
池浦さだ夢（男肉 du Soleil・団長。大阪でカンパニーを立ち上げるも、活動拠点を京都へ移遷）
川下大洋（劇団そとばこまちの立ち上げメンバーで、関西演劇界の重鎮。現在はpiperなどで活動）
高瀬和彦（劇団ババロワーズ・主宰。充電期間を経て、2015年復活予定。仮の姿はサラリーマン）
笠原希（ライトアイ代表。舞台の制作・宣伝、地方都市公演などのプロデュースを手掛ける）
星川大輔（関西を代表する小劇場［HEP HALL］のプロデューサーとして様々な舞台を知る）
上田ダイゴ（マーベリックコア代表。平日観劇の文化を！と「火曜日のゲキジョウ」をプロデュース）
鳥井由美子（子供鉅人をはじめ、小劇団をウラで支えるフリーの舞台制作）
西岡眞博（ＣMディレクター。本業の傍ら、クリエイティブユニット・team谷四の代表も）
西尾孔志（映画監督。2014年は『ソウル・フラワー・トレイン』と『キッチンドライブ』を制作）
野口絵里子（関西の芸術文化活動を支援するおおさか創造千島財団に勤務。専門は近現代美術史）
中村悠介（谷六発信のローカル・カルチャー誌『IN/SECTS』など媒体の編集や執筆を手がける）
吉永美和子（地域問わず駆け巡る演劇ライター。様々な媒体へ記事の書き下ろしや公演パンフ編集も）
hime（シネマコンシェルジュ、司会者、ライター。執筆のほか、小劇場では役者の顔も持つ）

「関西の劇団って、本当に元気ないの？」

──いきなり本題ですが、実際のところ関西の劇団って元気ないのでしょうか？

ｈｉｍｅ：「何に比べて？」とか、「元気あるやん！」とかご意見あるでしょうが･･･。

益山：僕らが芝居を始めた10年前で、すでに「元気ない」って言われてた。「東の遊眠社、西のそとばこまち」という象徴的な80年代があって、それ以降は“失われた時代”みたいな。

川下：いいか悪いかは別として、パワーが分散してる感じはするね。80年代は、いろんなものが一緒くたで、まとまったパワーがあった。情報も何もなかったから、「映画俳優になりたい」って思っても「なれるわけないし、とりあえず自分たちでやるか！」って劇団立ち上げて、パワーの有り余った「何者になりたいかわからない」人が、わ～っと巻き込まれて役者をやって。見る側にも「こんなの初めて観た」って衝撃があった。今は、そういう人たちがNSCに行くよね。笑いの才能ある芸人が、本気で時間割いて稽古した芝居なんかはめちゃめちゃおもしろい！

池浦：いや、俺ら元気なつもりですよ！ 今がピークです。「昔、ピスタチオが関西で一万人集客してた」とか、そんな話聞いても、都市伝説レベルでピンと来ないし、俺らの周り･･･子供鉅人とか、悪い芝居とか元気ですもん。

吉永：うん。関西の方がおもしろい事やってる部分もあるけど、知られてないのが問題だよね。現在のコアファンて100人か･･･200人いる？って感じで、それがグルグル回ってる。昔は周りの人たちを巻き込むパワーもあったし、10倍以上の人たちが流動的に動いていた。チラシを劇団員総出で撒いたりしてさ。今はとにかく「もっと宣伝しろー！」って思うなぁ。

西尾：確かに、見たいと思っても「どこで」「何をしてるのか」探し方も分からない。プロデューサーの不在、メディアの不在、を感じるなぁ。昔は、『ムイミダス』（関西小劇場の役者を使った読売テレビ製作のバラエティ番組）とかで、おもしろい人たちを発掘してたじゃない。雑誌めくると、映画も演劇も美術の情報も載ってたから、平行して興味が湧いたし。

笠原：今は、何でもインターネット上で完結してるよね。情報もコンテンツも溢れてて、それ見て満足しちゃうんじゃないかな。宣伝する側もそれに陥ってて、Facebook、twitterで宣伝して、実際には自分のフォロワーにしか伝えられないのに「やったな～」って満足してしまう。外の人は知らないままないのに。

上田：今って、そもそも、そういうのしたくない人が演劇やってんですよ。宣伝て“ビジネス”でしょ。そんなのダメダメ、もっと怠けたいの。努力しなきゃいけないのならサラリーマンでしょ。席数20～30人のカフェ公演が多いのもそういう流れで、客数に関わらず「アウトプットしたい」だけなんですよ。

（一同騒然。質問が相次ぐ）