小学生が手拍子&ノリノリ…子どもも虜の歌舞伎、京都で開幕

「あらしのよるに」劇中の様子、左から市村竹松、市村萬次郎
京都の「南座」(京都市東山区)で、中村獅童、中村壱太郎らが出演する新作歌舞伎『あらしのよるに』が、9月4日に開幕した。30年に渡ってロングセラーを続ける名作絵本を、歌舞伎ならではの和風かつダイナミックな表現で立体化し、小学生をはじめ、文字通り老若男女が大きな喝采を送った。
■ 客席に子どもたちの笑いが響く…その内容は?
狼のがぶ(獅童)と山羊のめい(壱太郎)が、嵐の夜にお互いの素性を知らずに出会ったことをきっかけに、種族を超えた友情をはぐくんでいく『あらしのよるに』。獅童の発案で生まれた歌舞伎版は、2015年に南座で初演され、歌舞伎ファン以外の心もつかんで大ヒット。日本各地で上演され、9年ぶりに南座に凱旋した。

歌舞伎版は、嵐の夜ではなく、狼たちが山羊の群れを襲うという、原作にはないシーンからスタート。どちらも命がかかってるという緊迫感に満ちた立ち回りに加えて、その最中にめいの母が犠牲になったり、狼のボスであるがぶの父が暗殺されるなどの、因縁話めいたエピソードも加わり、一気に「これ、ただの原作ものじゃないぞ?!」と観客を引き込んでいく。
それから数年後。嵐の夜に真っ暗な小屋のなかで意気投合して、翌日に再会したがぶとめい。がぶはめいを見て「美味そう」と思ってしまうし、めいはがぶの一挙手一投足に疑いを抱いてしまう。それでもお互い共通点が多くて、いろいろと話し込むうちに、かけがえのない友人となっていく2匹。しかし狼の集団も山羊の仲間たちも、2人の関係に疑念を抱き、ついには種族を巻き込んだ大騒動になってしまう・・・。

狼っぽい毛皮や爪、山羊のヒゲを思わせるフリンジなどの、最低限の装飾。そして俳優たちの手の形や足取りだけで、着ぐるみなんか着なくてもその動物らしく見えてしまうという、歌舞伎俳優の表現力にまず驚く。
そして現在の状況や登場人物の心の内などを「義太夫」が語るという手法を活かし、義太夫ががぶの心情を勝手にバラしてしまう・・・などの遊び心があふれるシーンも多く、そのたび客席に子どもたちの笑いが響く。壱太郎も指摘していたが、これほど子どもの笑いがあふれる歌舞伎公演は、ちょっと観たことがない。
とは言っても、体操の床の演技ばりにアクロバティックな立ち回りや、怒りや悲しみを体いっぱい使って伝えてくる演技、思わず「○○屋!」と言いたくなる見得の決まり方など、歌舞伎俳優の本気に圧倒されるシーンも盛りだくさん。
歌舞伎通なら「あ、ここはあの作品のオマージュか」という楽しみ方もできるけど、むしろ知らない人の方が「歌舞伎ってエンターテインメントやん!」と興奮してしまうのでは。そしてがぶとめいの奇跡の友情を通じて、自分が信じるものを信じ抜くという、その力と勇気をもらったような気分になるだろう。

九月花形歌舞伎『あらしのよるに』は、9月26日まで上演。チケットは一等席1万3000円、二等席8000円、三等席4000円、特別席1万4000円で、現在発売中。休演日や、学校団体の入っている日もあるので、公式サイトでご確認を。
取材・文/吉永美和子
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