片岡愛之助の教訓「新しいことをやりつつ、古典を大切にする」

2023.9.27 07:30

舞台『西遊記』で主演を務める俳優・片岡愛之助

(写真9枚)

● 「そもそも歌舞伎は、変わったことをするもの」

──そのなかでも、孫悟空のおもしろさはどこにあると思いますか?

コミカルなところじゃないかと思います。(ドラマ版の)堺正章さんの孫悟空は、軽いノリと勢いがあって、でもそのなかに正義があるというのが好きだったので、そこは近づきたいですね。あとは筋斗雲に乗って出てくるとか、如意棒という伸び縮みする棒があるとか、分身するとか、すごく夢が詰まったキャラクターでもあります。

今回は演出の堤(幸彦)監督が、最新の舞台用LED技術と、人間の生身のアクションを組み合わせることで、よりおもしろく、最先端の表現を作られると期待しています。

分かる人には分かる…『西遊記』にちなんだポーズを取る愛之助

──堤さんは舞台『真田十勇士』(2014年)でも中村勘九郎さんを主演にしていましたが、やはり歌舞伎俳優の所作にお詳しいのでしょうか。

その辺りをうかがったことはないんですが、歌舞伎には普通の演劇ではあまりしない動きとかはあります。たとえば演技の途中で一瞬ポーズをとって制止する・・・いわゆる「見得を切る」というのは歌舞伎独特のもので、ほかの役者さんはなかなかできないんです。でも舞台表現としてはすごく効果的ですし、最近では「劇団☆新感線」さんとかも、すごく上手く使ってらっしゃる。

──今回の『西遊記』もそうですが、『ONE PIECE』や『風の谷のナウシカ』など、アニメや漫画が原作の現代的な歌舞伎作品が、これまでにない勢いで作られています。

僕も先日、新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)』を観てきたんですけど、非常によくできてました。客席もいろんな層・・・色とりどりの髪色の方から、普段から歌舞伎をご覧になるような方もいらっしゃって。やっぱり間口を広げるために、そういう作品をどんどん上演することは大事ですし、そもそも歌舞伎は成り立ちを考えれば、変わったこと、その当時の最先端のものをするもの。歌舞伎はもともとは「かぶき者(もの)」から来ているわけですから。

昨今の「歌舞伎界」について語る片岡愛之助

──そもそも、派手なファッションで変わった振る舞いをする人たちのことをそう呼んでいたわけで。

そして最先端の話題・・・たとえば近松門左衛門は、実際に起こった心中の話を何本も芝居にしました。(鶴屋南北作の)『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』では、騙された恨みからストーカーになった男が女を殺して、その首を持ち帰って、それを見ながらお茶漬けを食べるんです。

──完全にワイドショーネタじゃないですか。

高尚な芸術と思われがちですが、全然そうではなく、今も昔も、庶民のための娯楽なんです。最先端のものが何度も上演されて、時代が変われば「古典」と言われる。『ONE PIECE』だって、300年も経てば「ああ、古典の『ONE PIECE』ね」と言われます。だから新しいこと、変わったことをしていくことも、実は歌舞伎の歴史をきちんと紡いでいくことになるんです。

昔から最先端のものを取り入れてきた歌舞伎、今後も「新しいもの」を取り入れることでその良さを保っていきたいと語る愛之助

──そういう愛之助さんも、フラメンコを取り入れた歌舞伎や、『リング』の貞子を登場させる歌舞伎など「傾いた」作品を作られてます。

ただこういう新しいことをやりつつも、古典を大切にするのが一番大事ですし、僕が当然やらなければいけないこと。先人が積み上げた古典をしっかり学んでから、新しいことを作っていくのが、明日へのつながりになると、父(片岡秀太郎)も言っていました。(歌舞伎の)「型」がちゃんとできてないと、新しいこともただのハチャメチャになってしまいますからね。

舞台『西遊記』

期間:2023年11月3日(金)~5日(日)
会場:オリックス劇場(大阪市西区新町1-14-15)
料金:S席1万5000円、A席9500円、B席5500円

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本