【どうする家康】最高のカタルシス、徳川四天王の完成に興奮

2023.8.23 16:30

「蜻蛉切の槍」「鹿の角の兜」「大きな数珠をたすき掛け」とおなじみのフル装備で登場した本多忠勝(山田裕貴) (C)NHK

(写真6枚)

松本潤主演で、徳川家康の人生を描く大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。8月20日放送の第32回『小牧長久手の激闘』では、酒井忠次、本多忠勝、榊原康政、井伊直政からなる「徳川四天王」がついに完成。彼らが「小牧・長久手の戦い」を勝利に導く一方で、もうひとりの重臣の出奔フラグが立ち、SNSは興奮と不安のジェットコースターとなった(以下、ネタバレあり)。

■ どうする家康、数正だけが語る不安

大軍勢を前に小牧山城に籠城する家康をおびき出すため、羽柴秀吉(ムロツヨシ)は家康の本拠地・岡崎に兵を向ける、と本多正信(松山ケンイチ)が予測。家康は小牧山城の普請を担当した榊原康政(杉野遥亮)へ、ひそかに兵を外に出すための堀を作るよう命令し、本多忠勝(山田裕貴)や井伊直政(板垣李光人)も協力する。

完成した堀を使い、康政は秀吉方の池田恒興(徳重聡)と娘婿・森長可(城田優)を急襲。直政の「赤備え」も加わって、見事に討ち取る。秀吉の援軍も忠勝が阻止し、家康たちは勝ちどきをあげた。小牧山城で全員が勝利の喜びに湧くなか、秀吉の恐ろしさと巨大な力をその目で確認した唯一の家臣・石川数正(松重豊)だけは、この先の不安を語るのだった・・・。

■ 躍進する榊原康政、今回の戦でMVP

自ら改造した抜け道を使い、戦場へ向かう榊原康政(杉野遥亮) (C)NHK
自ら改造した抜け道を使い、戦場へ向かう榊原康政(杉野遥亮) (C)NHK

最強の仲間が徐々に集まり、少しずつ成長を重ねて、大きな敵を前にして全員がそろい踏みをする・・・、少年漫画や特撮ではおなじみのシーンを体現したのがこの32回。「徳川四天王」をはじめとする家臣たちが、最終形態ともいえる姿になって秀吉軍に立ち向かっていく様を、ナレーション(寺島しのぶ)が講談のように意気揚々と紹介していくという、今作で最高にカタルシスのある展開となった。

なかでも胸熱だったのは、ここまでは「小生意気な小僧」として、先輩たちや忠勝をイジるような立ち位置が多かった、榊原康政の躍進。家康の無茶ぶりに次々に応えて小牧山城を魔改造したり、正信が振った「秀吉の罵詈雑言を考えよう」コーナーでは、酒井忠次(大森南朋)がストップをかけるほどひどい文面を思いつくなど、まさにこの戦のMVPと言っていいだろう。

SNSでも、「康政花開いたね。武芸でも素晴らしい」「最初の頃は無課金勢装備とか言われてたのに、ひとかどの将として戦っているんだもんな」「こんなに力強く立派な武将に。成長し続ける小平太(康政)に、感動で胸がいっぱいです」という感慨深げなコメントが寄せられた。

■ 半年以上を経て、徳川四天王が完成

赤く染まった軍「井伊の赤備え」を率いる井伊直政(板垣李光人)(C)NHK
赤く染まった軍「井伊の赤備え」を率いる井伊直政(板垣李光人)(C)NHK

そして井伊直政が登場したときから待ちかねていた「井伊の赤備え」が、ついに初お目見え。さらには忠勝も、蜻蛉切の槍+鹿の角の兜+大きな数珠をたすき掛けという、肖像画やゲームなどでもおなじみのフル装備で登場。今回は戦場での活躍がなかった代わりに、海老すくいならぬ「天下すくい」の舞を見せた忠次を加えて、放送半年以上を経てついに完成した「徳川四天王」の姿に、SNSでは興奮が最高潮に。

「キター! 井伊の赤鬼! 井伊の赤備え!」「エビすくい、遂に天下すくいに昇格!」「本多忠勝しっかり蜻蛉切の演出してくれた上に、各武将の顔メイン名乗り。なんだこの錦絵な大河は! 最高か??」「徳川四天王全員に見せ場を作ってくれた事に感謝です! 誰ひとり欠けてもいけなかった」など、それぞれの武将に感激の言葉が寄せられた。

■ 悲劇のフラグそのもの、石川数正の言葉

あまりにも完ぺきな構図に「これが最終回かな?」と思うほどの結末だったが、そう簡単にいかないのが家康の人生と、「上げて落とす」の落差がおそろしい古沢良太の脚本。ラストでは、形ばかり総大将の織田信雄(浜野謙太)を利用する気満々の秀吉と並び、唯一「秀吉には勝てない」と確信する石川数正の姿が、まるで悲劇のフラグそのもののようだった。

SNSでも「ああ・・・石川数正がすれ違い始めてる」「石川数正さんの出奔ゲージが溜まっていく」「今回、徳川四天王紹介回であると同時に、じゃあ、なんでそこに石川数正は含まれていないの? という前フリ回でもあるのか」という、すでに別れの予感をひしひしと感じるようなコメントがあふれた。

祝杯の場から離れて思いにふける石川数正(松重豊)(C)NHK
祝杯の場から離れて思いにふける石川数正(松重豊)(C)NHK

最終回で振りかえったときに、この回がまさに徳川家臣団のピークだったと思うことになるかもしれない。しかし大事なもの・・・、特に自分の手元から離れるとはまったく考えてなかったものが離れたとき、人は大きな成長を遂げるはず。来週は辛いストーリーになるかもしれないが、さらに殿がここから一皮むけることを期待して耐えようではないか。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。8月27日の第33回『裏切り者』では、小牧・長久手の戦いの敗戦からの秀吉のあざやかな逆転と、秀吉と家康の間で板挟みとなる家臣・石川数正が、思わぬ行動に出るまでが描かれる。

文/吉永美和子

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