妄想が実現、本多正信らしい口八丁の再登場【どうする家康】

2023.8.3 17:00

すっとぼけた表情で百地丹波をたぶらかし家康を助ける本多正信(松山ケンイチ) (C)NHK

(写真3枚)

松本潤主演で、徳川家康の人生を描く大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。7月30日の第29回『伊賀を越えろ!』では、伊賀越の最中の思いがけない再会と同時に、予想もしなかった別れの知らせに、SNSが大いに揺れ動いた(以下、ネタバレあり)

■ どうする家康、久々の本多正信は信じられる?

明智光秀(酒向芳)の命で首を狙われ、畿内を逃亡中の家康たち。服部半蔵(山田孝之)の提案で伊賀を抜ける道を選ぶが、道中で伊賀の頭領・百地丹波(嶋田久作)に捕まり、光秀に献上するため首を討たれそうとなる。そこに現れたのは、三河一向一揆のときに家康の元を去り、今は伊賀で軍師をしている本多正信(松山ケンイチ)だった。

正信は、「信長の首は出てきていないから生きている可能性があり、もし家康を殺したら、伊賀は信長に滅ぼされる」と吹き込む。その働きかけで解放された家康は、正信に「気が向いたら、浜松へ来い」と声をかけて別れる。無事に三河に帰り着いた家康だが、堺で別れた穴山梅雪(田辺誠一)が、家康の身代わりに討たれたという知らせを聞くのだった・・・。

■ 高度なひと芝居でピンチの家康を救助

三河一向一揆で一揆方に付いたため、家康の元を離れた知将・本多正信。その帰還の時期については、実は未だにはっきりとわかっていない。それを受けて筆者は、第9回のコラムで「伊賀越の時に『あれー殿、なにやってんですか?』ってテンションで戻ってきてくれないかなー」という適当な妄想を記したけど、それがまさかこの第29回で実現するとは!!

三河から渡り渡って、伊賀で軍師となっていた正信。三河時代と違って、自分の命を引き換えにしてでも、いわゆる「庶民」に近い忍びたちを助けようとした家康に心を動かされたのか、さっそうと家康の前に。しかし相手が一筋縄ではいかない伊賀者だけに「斬首をけしかけるふりをしているけど、実は止めている」という高度なひと芝居を売ってきた。

家康(左・松本潤)らを助け、家臣に戻れるよう駆け引きをする本多正信(松山ケンイチ) (C)NHK
家康(左・松本潤)らを助け、家臣に戻れるよう駆け引きをする本多正信(松山ケンイチ) (C)NHK

この正信らしい助け舟に「『死んだに決まっとる! 首は出とらんが』このテンポ最高だよ」「胡散臭い芝居で百地丹波を翻弄、胡散臭いけれど流石の知将、松山ケンイチが中の人として抜擢されるだけある!」「山伏の格好で、口八丁だけでピンチをどうにかする。正信による『勧進帳』じゃんこんなの」など、絶賛する言葉が並んだ。

そして家康の元に戻りたい気持ちはあるも、それを素直に口に出さずやっぱり駆け引きしちゃう展開にも、「要約:わしをもう一度家臣に入れろ」「三河から追放だったから、浜松(遠江)なら帰って来れるよね」「家康に会えてめちゃめちゃうれしいんだなとしか思えん。絶好調がすぎる。百点満点の登場だ!」という、期待のコメントであふれた。

■ 武田家臣にも手厚い『どう家』、穴山に花道を

そんな再会に喜ぶ一方で、永遠の別れになってしまったのが穴山梅雪だ。彼は畿内逃亡中に、落ち武者狩りで殺害(自害説も)されたと伝わるが、これまではナレ死とか匂わせで処理されることが多かった。しかしそこは、武田家臣団にも手厚い『どう家』。実は家康の身代わりを務めて死んだという「その手があったか!」という花道を作り上げていた。

家康と間違って斬首した穴山梅雪の首を見て怒る明智光秀(酒向芳) (C)NHK
家康と間違って斬首した穴山梅雪の首を見て怒る明智光秀(酒向芳) (C)NHK

これにはSNSも、「穴山梅雪! 最後に凄い仕事を(泣)」「アナ雪(梅雪)が瀬名の慈愛の統治構想に心酔してたこと、主君を失った人生は虚しいと語っていたこと、だからこそ最終的に自分が何を残せるかを考えてこうした。泣けるわ」「裏切り者と言われる貴方は、最期の最期で忠義の臣になれたのですね」という感動の声が上がった。

穴山梅雪の死は「武田家の裏切り者」とのレッテルもあって、因果応報的な扱いを受けがちだ。しかし家康は梅雪の死後、家の再興のためにいろいろ働きかけている。それを考えると、やはり2人の間になにかがあった可能性は大きく、それに対するひとつの回答と言えるのが、今回の身代わり話だろう。「『裏切り者』と思われても、守りたい正義があった人」という解釈で臨んだという田辺誠一の静かな熱演、多くの人にしっかりと伝わったに違いない。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。8月6日放送の第30回『新たなる覇者』では、羽柴秀吉が着々と織田家の実権を握っていく一方、家康が関東の雄・北条家と対決するところが描かれる。

文/吉永美和子

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