演出家・ウォーリー木下、「特別な人」と13年ぶりの伝説作を語る

2023.7.19 20:30

舞台『素浪人ワルツ』に出演するいいむろなおき(左)と演出を手がけるウォーリー木下(右)

(写真7枚)

● 「演出の存在が見えない舞台ができた」(ウォーリー)

──「佐々木小次郎が巌流島に向かう道中を描く」とか、「副音声が無言劇の部分を解説する」などのアイデアは、当初からあったんですか?

ウォーリー「最初主人公は『江戸時代の素浪人』というだけで、特定の人ではなかったんですけど、作っていくうちに『なにか目的を持った人にしたい』と思って、佐々木小次郎になりました。副音声を入れたのは、マイムを全部言葉で解説されたら、いいむろさんが嫌だろうなあ、と思って(笑)」

いいむろ「意地悪から生まれた(笑)」

2人とも1970年代生まれの同級生、インタビュー中も冗談が止まらない

ウォーリー「『今、壁をやっています』とか。でもそうすると、壁をやっているときに『壁じゃないこと』の解説を入れたら、二重三重の意味が作れることに気づきました。それを(初演の)安元美帆子さんや、(今回の)佐々木ヤス子さんのような、ちょっとユーモラスな雰囲気のある女性にやっていただくと、見ていてリラックスできると同時に深くなる」

いいむろ「たしかにね。今回も副音声のプライベート話が混じってくるんですけど、佐々木(ヤス子)さんの話もおもしろいですよ」

──初演のときは、できあがった作品に対してどう思われましたか?

ウォーリー「いいむろさんの代表作ができたと、勝手に思いました(笑)。それと、演出の存在が見えない舞台ができたということ。たとえば音楽のライブでは、アイドル系は別にして『ステージ上の人が演出されている』ってことを、あまり意識しないじゃないですか? あの感じを演劇の舞台でもやりたいとあこがれていたから、実現できてうれしかったです」

いいむろ「自分が動き回って(舞台空間を)埋めなくても、音楽や映像や副音声などのいろんなものが埋めてくれるのを感じましたし、『今まで動きすぎだったんだなあ』と、ちょっと思いました(笑)。あとはやっぱりウォーリーさんが、自分では思いつかないようなアイデアを出したり、無茶振りをしてくれて。若干の対抗心もあって、それをクリアしていくことで、自分はもっといろんなことができるんだという、自信も付きましたね」

稽古の合間を縫っておこなったインタビュー、背景をよく見ると・・・

──再演では、副音声のキャストが変わった以外に、なにか変化はありますか?

いいむろ「映像技術は進化しました。以前の舞台に投射された映像は、ベゼル(枠)がすごく太い感じがしていたけど、今はベゼルレスになって、没入感がすごくあります。実際に立って動いてみると、目が回りそうになるぐらい」

ウォーリー「初演のときは、あまり『こうしてやろう』と考えず、無意識に作った部分が多かったんです。それを『ここはもう少しパンチがあると、届く距離が増えるかな?』とか、あえて意識的にやってみるという作業をしているところです。あとは、どうしても初演の新鮮さは(演者から)失われているので、ライブでやる当人たちが飽きずにいられて、なおかつおもしろいようにするという工夫を・・・」

いいむろ「あとはやっぱり、初演から15年経っているんで、歳を重ねた渋みみたいなものは、計算しなくても出てくるんじゃないかと思います」

──ザッハトルテさんの演奏も、やはり渋みが出ていますか?

いいむろ「彼らはあんまり変わってないです(一同笑)。なんだったら、前よりふざけてる感じがあります」

舞台『素浪人ワルツ』

期間:2023年7月22(土)・23日(日)
会場:近鉄アート館(大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス近鉄本店 ウイング館 8F)
料金:全席指定 4800円、U-25 3800円

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