演出家・ウォーリー木下、「特別な人」と13年ぶりの伝説作を語る

舞台『素浪人ワルツ』に出演するいいむろなおき(左)と演出を手がけるウォーリー木下(右)
『東京2020パラリンピック』開会式の演出を務めた、演出家・ウォーリー木下。その開会式にも出演した、世界レベルのテクを持つマイム俳優・いいむろなおき。この2人が関西で作り上げた舞台『素浪人ワルツ』が、13年ぶりに再演される。
人間の動きと映像が融合する、ミュージシャンも役者のようにステージに上がる、俳優の日常と物語の境界線を曖昧にする・・・など、当時では珍しい舞台演出を、かなり早い段階で盛り込んでいた点でも、伝説と言える作品だ。実は同い年で、普段から仲がいい2人に、この作品とお互いの印象について語りあってもらった。
取材・文/吉永美和子 写真/木村正史
● 「公演ってこういう風にしてやっていくんだ」(いいむろ)
──2008年の初演は、台詞芝居とパントマイムと映像と「ザッハトルテ」の音楽が、完全にひとつの世界に溶け合い、どのジャンルのファンでも楽しめる作品になっていたことに、かなり衝撃を受けました。この舞台が生まれたきっかけは、なんだったのでしょうか?
いいむろ「神戸で『2人でなにか作りたいね』って喋っているときに、ウォーリーさんが『ちょっと、(大阪の)HEP HALLに行こうよ』と言い出したんです。そのまま電車に乗って劇場に行ったら、プロデューサーの人に『公演をやらせてください。僕ら2人が一緒なら、おもしろいものになるはずです』って交渉をはじめまして(笑)」

ウォーリー「いや、そんなこと言わないよ! 絶対言わない!」
いいむろ「でも、それに近い感じのことは言ってたと思う。『すごい強引だなあ。公演ってこういう風にしてやっていくんだ』って、感心したのを覚えてるから」
──当時のHEPは、音楽ライブを企画したり、アートと演劇を融合させたプロデュースをおこなうなど、かなり劇場の間口を広げる努力をしていましたよね。
いいむろ「そうそう。まさに僕らも、その流れに乗っかれました」
ウォーリー「当時は既存のバンドに、生演奏で舞台に参加してもらうことすら、割とめずらしかった頃でした。でもHEPさんは、そういうジャンルレスな試みに積極的だったので、一緒に作品が作れたことは幸いだったし、今の僕の活動にもつながったと思います」
──そこであえてテーマを時代劇にしたのって、なにか狙いがあったんですか?
いいむろ「よく覚えているのは『僕が死んでいるところを作りたい』と言われたこと。要は僕を動かさないようにしたい、というところからはじまったと記憶しています」
ウォーリー「いいむろさんは放っておくとすぐ動くので(笑)、ジッとしている姿が見たかったんですよ。あとは西洋のフランスでマイムを学んだ人を、和の世界に入れたらどういうことができるかな? という興味もありました」

いいむろ「たしかに『和』を意識したことは、それまであまりなかったかな。でもそれを、ウォーリーさんじゃない人に言われたら、ちょっと引いてたかもしれない。外国人受けしそうな、日本の魂がどうのみたいなマイムになったら嫌だけど、ウォーリーさんならその辺のことは、軽やかに乗り越えてくれそうな感じがありました」
ウォーリー「もうひとつやりたかったのが、舞台上にいる俳優が完全に役にはなりきらず、ある程度自分を保ったまま最後まで行く芝居。その少し前に、演出家とダンサーがその場で振付のルールを決めて、即興的に作っていくというダンス作品を観て『演劇でも同じことができないかな?』と思ったんです。それでまずは、台本ではなくエッセイ風の短編小説を書いて、みんなに読んでもらうことからはじめました。そこから感じたことや、思い出したことを話し合って、出てきたアイディアをどんどん繋げていくという」
いいむろ「この芝居は、僕が『いいむろなおき』の状態のまま、トカゲの死体の話をするところからはじまるんですけど、それもたまたま稽古中に僕が話したリアルな体験談を、ウォーリーさんが取り入れたんです。みんなでワイワイやっているなかで偶発的にシーンが生まれたり、だんだん物語が立ち上がってくるという作り方でしたね」
舞台『素浪人ワルツ』
期間:2023年7月22(土)・23日(日)
会場:近鉄アート館(大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-43 あべのハルカス近鉄本店 ウイング館 8F)
料金:全席指定 4800円、U-25 3800円
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