コメディと思っていた夏目広次の名前違い、真相に視聴者号泣【どうする家康】

2023.5.20 13:45

家康になかなか名前を覚えられない家臣として描かれた夏目広次(甲本雅裕) (C)NHK

(写真3枚)

松本潤が徳川家康を演じ、厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。5月14日の第18回『真・三方ヶ原合戦』では、家臣団のひとり・夏目広次の命がけの忠義と、実は第1話から仕掛けられていた壮大な伏線回収に、SNSは涙と衝撃のコメントであふれた(以下、ネタバレあり)。

■どうする家康、広次は吉信だった

三方ヶ原合戦で退却戦を余儀なくされた家康。武田軍から逃れるためわずかな手勢に守られて軒下に潜んでいたところ、家康がなかなか名前を覚えられない家臣・夏目広次(甲本雅裕)に見つけられる。

家康らを逃がすために、身代わりとして家康の金陀美具足を着用する広次。家康は必死で止めようとするが、フラッシュバックしたように広次が子どもの頃に世話になった「吉信」だったことを思い出す。

実は吉信は、幼い頃に織田勢にさらわれた家康を守れなかったことを恥じて「広次」と改名。家康が彼の名前をよく間違えるのは、幼少の記憶が混濁していたからだった。

広次は子どものときのように「殿は、きっと大丈夫」とほほえんで家康の元を去り、思惑通り武田軍は、広次を家康と思って討ち取るのだった・・・。

■「名前違い」息抜き的な笑いかと思いきや

ある人物の決断に悲痛の表情を浮かべる徳川家康(松本潤)(C)NHK
ある人物の決断に悲痛の表情を浮かべる徳川家康(松本潤)(C)NHK

実際に「三方ヶ原の戦い」で家康の身代わりとなり、浜松に慰霊碑が残されている武将・夏目吉信。しかし資料には「広次」という名前しか残されていないというミステリーが、『どう家』では「家康がしょっちゅう名前を間違える」という、息抜き的な笑いに利用されていた・・・と、筆者は考えていた。

家康の「名前覚えなさすぎ」問題は、ネット上でも家康が家臣に関心がないことの現れだとか、むしろ広次の影が薄すぎるからとか、いろんな推察が上がっていたが、まさかの「改名前の『吉信』の思い出が強すぎたから」は、まったくの想定外。実際今回の回想シーンで、家康が今まで広次にかけていた名前は、どれも「よし」や「のぶ」が入っていたことも判明した。

この真相にSNSでは、「散々名前を覚えられん可哀想な家臣というコメディキャラだと思ったら、とんでもない涙を誘い有終の美を飾るとは」「覚えられなかったんじゃない、忘れられなかったんだ!」「家康が名前を間違い続けたことこそ、2人の絆の証だった。なにこの最強の伏線回収」など、衝撃の声が上がった。

■広次の行動に説得力を持たせた脚本

広次は「三河一向一揆」のときに裏切った重罪を許され、その恩に報いるために身代わりになった・・・、という伝承は一般的には知られていたものの、脚本の古沢良太はさらに「織田家の拉致から救えなかった」という悔恨を加えて、自己犠牲ともいえる広次の行動により強い説得力をもたせた。

その象徴として「名前違い」という、一見ライトなエピを盛り込んだのには、本当にお見事としか言いようがない。SNSでも「名前ひとつに、こんなに深い物語を背負わせられるんだ・・・古沢さん凄い」「何この設定。何この展開。何この真相。古沢良太頭おかしいんじゃないの!?(混乱の極みで最高に褒めてる)」などの絶賛コメントが。

『どうする家康』第18回より。理由をわかっていながらも家康からの問いに答えられない夏目広次(甲本雅裕) (C)NHK
『どうする家康』第18回より。理由をわかっていながらも家康からの問いに答えられない夏目広次(甲本雅裕) (C)NHK

そして広次を演じた甲本雅裕にも「主君の身代わりになる喜び、永遠の別れになる悲しみ、全ての感情が無い混ぜになった感情を表情だけで演じてくださった甲本雅裕さん、最高の演技」「『カムカムエヴリバディ』で視聴者を号泣させた甲本雅裕さんが、また視聴者の涙を奪いに来るとは」という称賛の言葉が相次いだ。

広次や本多忠真をはじめとする、多くの家臣が家康を守って散る「三方ヶ原の戦い」は、主人公の急成長をうながすビッグイベントになることは間違いなかったが、それでもこの夏目広次、いや「夏目吉信」の物語は、予想を遥かに上回るインパクトだったし、間違いなく本作の「神回」と言われる1本になるだろう。

『どうする家康』は、NHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夕方6時からの放送(BS4Kは昼12時15分から)。5月21日の第19回『お手つきしてどうする!』では、戦国時代の状況が大きく動くなか、家康が侍女・お万(松井玲奈)に手を付けてしまったことで、一騒動起こるさまが描かれる。

文/吉永美和子

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