大友啓史監督「あのショットが、この映画のキーショット」

2023.2.11 07:00

映画『レジェンド&バタフライ』のメガホンをとった大友啓史監督

(写真6枚)

主人公・織田信長役に木村拓哉、ヒロイン・濃姫役に綾瀬はるかを迎えた、東映創立70周年記念で制作された大作映画『レジェンド&バタフライ』。1月27日の公開から3日間で37万人を動員し、週末の興行ランキングで1位を獲得する好スタートとなった。

メガホンをとったのは、『るろうに剣心』シリーズで日本のアクション映画史に革命を起こした大友啓史監督。幾度となく映像化されてきた魔王・信長を、これまでとはまったく違う新たな視点で捉え、ダイナミックな映像美と緻密な人間描写に富んだ本作について、映画評論家・ミルクマン斉藤が話を訊いた(前編、ネタバレあり)。

取材・文/ミルクマン斉藤

「古沢さんはライト・コメディにしたいんだなと」(大友監督)

──率直に言いまして、むちゃくちゃ面白かったです!

それはうれしいですねぇ。そう言っていただけると。

──これほど面白い信長と濃姫の話は今までなかったんじゃないかな、と。僕の少年時代だと、NHKの大河ドラマ『国盗り物語』(1973年)とかありましたけど。

昔ありましたね。あれは誰だったっけ?

──信長役が高橋英樹さんで、濃姫役が松坂慶子さんじゃなかったかな?

ああ、そうだそうだ!

織田信長演じる木村拓哉(左)と濃姫役の綾瀬はるか ©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

──いかにも政略結婚の犠牲になった濃姫がやがて信長と・・・というイメージのある2人の物語が、今回はまったく違っていて、最初から濃姫にはマムシ(斎藤道三)の娘なりの覚悟と明晰な頭脳があって、それがどんどんドライブがかかっていく。コメディを得意とする古沢良太さんの脚本の巧みさもあって、女性上位のロマンティック・コメディの、古き良きハリウッドの台詞劇にも似た面白さという。

僕もいろんな脚本家の方と付き合ってますけど、古沢さんは本当にこの題材で描きたいことがしっかりあったんですよ。こんな話を今さらしてアレだけど、描きたいことがあるっていう脚本家というのは本当に頼りになるんですよね、ブレないから。1稿目も、僕は10分ちょいで読み終えましたから。

──そうなんですか(笑)。リーダビリティに満ち満ちている、という感じですか?

ト書き(台詞以外の、動作や行動の指示)はすごく少ないんですよ。でも、信長と濃姫の関係性、その変化はブレないんで。だから第1稿を読んで、これは現場でいろいろ肉付けしていけばできる、という安心感がありましたね。

おっしゃる通り、会話がめちゃくちゃ面白かったんですね。ライターが迷ってる脚本だと、まずはこっちでコアを作んなきゃいけないのでしんどいんだけど、古沢さんは濃姫と信長を使って、政略結婚から始まるライト・コメディにしたいんだなと。

──でも、これまでの監督の作品からすると、コメディとは距離がありますよね。

そうなんですよ。僕はどっちかというとリアリストなので、ロマンティック・コメディという発想とはかなり遠い。実は古沢さんとちゃんとした打合せしたのって、1回くらいなんだよね。大まかなプロットは話してたんですけど、とにかく古沢さんが忙しくて。

ごはん食べながら雑談して、で、その後じっくり3時間くらい話して、とりあえず1回書いてみましょうか、と。ロマンティック・コメディってやっぱりフランク・キャプラ(1930年代にアメリカで活躍した名匠)とか、ああいうハリウッドの作品群に相応しい言葉じゃないですか。どうしても洗練というのがテーマになってくる。

次頁「なりきれなかった男、というのも裏テーマ」(大友監督)

映画『レジェンド&バタフライ』

2023年1月27日公開
監督:大友啓史
出演:木村拓哉、綾瀬はるか、ほか
配給:東映
©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

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