大友啓史監督「あのショットが、この映画のキーショット」

2023.2.11 07:00

映画『レジェンド&バタフライ』のメガホンをとった大友啓史監督

(写真6枚)

「濃姫を暗喩させるような青白い蝶に・・・」(大友監督)

──その綺麗だけじゃない人物像が非常に面白い。そこに直結するところだと思うのですが、『レジェンド&バタフライ』というタイトルがものすごく意味深で。まぁ「レジェンド」は分かりますよね。「バタフライ」は濃姫・・・つまり別名の帰蝶。ただ、この映画では「帰蝶」とは一言も無かったと思いますが、「長篠の合戦」後の死体に吸い付いて、そこから信長の肩に止まる、あの青い蝶。蝶は何度か出てきますが、あのシーンはとにかく印象的でしたね。

あれはね、僕の好きなドイツの狂気的な監督で、えっと・・・。

──ヴェルナー・ヘルツォーク(笑)。

そうそう。そのヘルツォーク監督が撮ったドキュメンタリー『キンスキー、我が最愛の敵』(1999年)の最後で、インタビューされてる怪優クラウス・キンスキーの肩に蝶が止まるんですよ。僕、あのカットがすごく好きで(笑)。持って生まれた人にはこういうことが起きるんだ、と。あれをいつか映画でやってやろうって。

ヴェルナー・ヘルツォーク監督のドキュメンタリーについて語る大友啓史監督

──まさに、映画の神様が降りてきた瞬間ですよね。

キンスキーは蝶が止まったのに気づかずに一生懸命しゃべってる。で、その後、蝶と無心に戯れる時間があって。天命のもとに生まれた人というのは、それなりのものを背負わされているんだなと如実に示す優れたドキュメンタリーカットだったんですよ。

だから信長も、のちのちそれぞれの解釈で優れた才能であったり、カリスマであったりと我々は作ってきてるけど、あの戦国の殺すか・殺されるかの時代において、さまざまなプレッシャーに苛まれながら生きていて。

──隣国は強敵だらけだし。傘下の武将たちさえ油断ならなくて。

でも、400年後も生き残る人っていう、キンスキーじゃないけど、そうした運命に生まれた人というイメージ。それと、帰蝶のある種の想い・・・ベタですけど、飛んで行けるものなら海の向こうまで飛んで行きたい。帰蝶はそんな想いだったんだけど、信長はというと肩に止まった蝶に気づかずにいる。

──蝶は狂気の人間に惹かれて近づく。でもその狂気のなかには、ほかに類を見ない魅力があるという。

僕のなかで信長とキンスキーが結びついたのは、いろんなドキュメンタリーのなかで、蝶が動物の死体の血を吸ってるシーンが結構出てくるんですよ。血の鉄分かなにかが雌の蝶を引き寄せるみたいで、「長篠の合戦」のあとの死屍累々のなかで蝶が群舞してたら面白いかなと。それと、さもバタフライ=濃姫を暗喩させるような1匹の青白い蝶に死体の血を吸わせることにして。

ベタな言い方ですが、血を血で争う戦国の時代に人知れず咲いたものというか、それが400年後の我々の元にひっそり届けられる、みたいな。でも当事者である信長は、それを知らないという。今回のあそこのショットが、この映画のキーショットだと思っていて。よくぞ言ってくださいました、って感じです(笑)。

映画『レジェンド&バタフライ』国宝「朝光寺」での撮影風景 ©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

──確かにあの「長篠」以後が本作のポイントだと思います。そこからタイトルに含まれた深さみたいなものがグッと浮かび上がってくる。ネタバレになるので詳細は控えますが、やはり注目はラストのくだりですね。あれはまさに「胡蝶の夢」と解釈していいですか?

そうです、そうです。

──非常に壮大でスペクタキュラーなシークエンスですが・・・でも、あそこで終わってしまったらちょっとマズいな、と思いながら観てました(笑)。

絶対にマズい(笑)。もう絶対にマズいんですよ、それでは。

後編に続く

映画『レジェンド&バタフライ』

2023年1月27日公開
監督:大友啓史
出演:木村拓哉、綾瀬はるか、ほか
配給:東映
©2023「THE LEGEND & BUTTERFLY」製作委員会

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