◆「万全の体制で泣く準備をして来て」（筧）

──そのコトー先生のピンチを通じて、志木那島の医療体制のギリギリ具合が、１６年前と変わってなかったという事実は、フィクションを超えた現実を突きつけられましたね。

中江「たぶん志木那島に限らず、日本の各地で起こってることだと思います。それは絶対にいつかあることだけど、人に頼ってみんなが安全でいることに安心して、ずっと目をつぶっていた。いつ起きてもおかしくなかったことが、２０年経ってついに来たという感じです」

──そのために、Ｋｉｎｇ ＆ Ｐｒｉｎｃｅの高橋海人さんが演じた織田医師の役割が大きかったです。

中江「外から来た人間じゃないと言えないんですよ、あれは。星野さん（小林薫）も言ってましたけど『わかっているけど、しょうがないんだ』という所でやってきたって」

──でもそこに、高橋さんや生田絵梨花さんなどの新しい世代がいたことで、厳しさも希望も両方リアルに感じられる世界になったと思います。吉岡さんや筧さんは、完成した映画をどうご覧になりましたか？

筧「コトーのファンは何十万人もいますし、僕もそのなかの１人ですけど、ずっと最後まで『あー、いいなあこれ。泣く泣く、ここ泣くわー！』と思いながら、（上映時間の）２時間１５分、まったく飽きないで終わりました。これ本当に、大切なんですよ！ ずーっと最後まで飽きずに、感動しながら観ていられるって、なかなかできないので」

吉岡「でも本当に、不思議な映画です。僕は筋をもちろん知っているし、しかも自分が演じているのに、ものすごくコトーを遠くに感じたり、逆に内面がすごく見えたりして、とても奇妙な感覚になりました」

──確かにいろんなことが詰まっていて、ひとつのジャンルで言い表せない感じがします。

吉岡「そうですよね。いろいろゴチャゴチャしてるのにひとつになっているとか、逆にワッとそこから離れて行っちゃうとか。揺さぶられて最後にフワーッとなる感じも、今までに観たことがないし、すごい映画になったなあ･･･と思います」

──それでは１６年ぶりの再会を楽しみにしている方や、あるいは伝説のドラマにはじめて出会う読者に向けて、メッセージをお願いします。

吉岡「『テーマがどうこう』という説教臭い映画じゃないし、ドラマを知らない人も知っている人も、志木那島に遊びにいく気分で、劇場に来てもらうと一番いいんじゃないかなと思います。今はなにを信じていいのかわからないような時代ですけど、それでも志木那島では変わらずにみんなが待ってますから、心が傷ついている人も、ぜひ会いに来てください」

中江「いや、まったくその通りですね（笑）。もしかしたらあの島には、本当にみんな住んでいるんじゃないかなあ･･･という風に見えたらいいなあと思っています」

筧「今回は必ずハンカチ５枚、バスタオル２枚ぐらいを持って、女性の方はマスカラが落ちるので、ノーメイクでマスクをして、万全の体制で泣く準備をして観に来てください･･･本当に大切なことを、僕は言ってます（一同笑）」

https://www.youtube.com/watch?v=SRd9MqL0jc0