16年ぶりにコトーが帰還、吉岡秀隆「本当に、不思議な映画」

2022.12.28 20:30

映画『Dr.コトー診療所』の吉岡秀隆(中央)、筧利夫(左)、中江功監督

(写真7枚)

◆「これって全然、医療ドラマじゃない」(吉岡)

──和田は一介の役場の職員で看護師でもないのに、コトー先生にずっと付き添っているという、ちょっとほかにはないバディ感があるキャラクターですよね。

吉岡「僕は本当に、和田さんがいてくれなかったらコトーにはなれないです。コトーはすごく難しい役で『このシーンは、どういう風に動けばいいんだろう?』というのが、本当にわからなくなることがあるんですけど、筧さんだったり(コトーの妻で看護師・彩佳役の)柴咲コウさんの一言でバッと変わって、だんだん面白くなったりする。今回もコトーがピンチのシーンで、筧さんのアイディアが反映されましたよね?」

筧「ああ、一切手を貸さなかったよねえ」

コトーの一番の理解者である市役所職員・和田一範(筧利夫) ©山田貴敏 ©2022 映画「Dr.コトー診療所」製作委員会

吉岡「『俺は近くには行くけど、絶対触らないよ。だってこいつ(コトー)、絶対起き上がってくるでしょ?』って言われて『ああ、そうだ。絶対和田さんは待つ人だな』って。ずっとそばにいて、その態度でオーラをかもし出してくれるから、やっぱり和田さんが一番カッコいいですよ(笑)」

──映画のあとで、現在配信されているドラマの再放送を観たのですが、診療所をはじめ、島の風景がまったく同じということに驚きました。

中江「いやもう、いろんなことが変わっていたら、ちょっと違う作品になってました(笑)。人も変わってないし、風景も変わっていない。それがすごくよかったですね。『戻ってこれたなあ』」という感じがして」

筧「建物もそのままあるし、風景もキャストもスタッフも同じだし『なんだこれは?』って(笑)。変わらないって、やっぱりいいなあと思いました」

吉岡「初日はウォーミングアップという感じで、自転車に乗って往診に行くシーンから撮ったんです。そのときに島民の人たちが『コトー先生!』って呼んでくださるのを見て『ああ、大丈夫だ』と、そのときはちょっと甘く考えていました。やっぱりこの人は怖いんですよ、五島健助という人は」

──先ほども「難しい役」とおっしゃってましたが、それはドラマの当時から感じていたことですか?

吉岡「(シーズン1の)2003年から、この男の信念はなかなか見えてこないんですよね。1人の医師としての悲しみみたいなものをキチンと入れ込んでおかないと、周りから見たときに『コトー先生』と思ってもらえないけど、僕自身が『コトーはこういう人』とわかった気になって演じると、まったく別の人間になって、フッとどこかに行ってしまいそうになる。なんか風のような、不思議な人なんです。だからとっても難しい」

映画『Dr.コトー診療所』のワンシーン ©山田貴敏 ©2022 映画「Dr.コトー診療所」製作委員会

──そして16年分の経験値を積み重ねても、やっぱり演じるのは簡単ではなかった、と。

吉岡「自転車に乗って、島の風に吹かれて『ああ、コトーはこうやって生きてきたんだな』ということを、肌で感じることができたんですけど、一方であまり彼に感情移入しすぎず、突き放して見るようにもしていたんです。そうでないと、今回はとてもじゃないけど乗り切れそうにないと思って、自分の姿もなるべく見ないようにしていました。でも東京に戻って、最初のオペのシーンを撮影するときに、つい自分の姿をガラス越しに見てしまった瞬間、本当に怖くなって、手の震えが止まらなくなって」

──一瞬でコトーに感情移入してしまった、ってことでしょうか?

吉岡「そうですね。(コトーに対して)『すごくひどいことを言ってしまった』と思いはじめたら、五島健助がすごくかわいそうでかわいそうで、台詞がまったく出てこなくなったりもしました。でもそんなときも、振り返れば和田さんや彩佳さんがいて、さらに20年近く前から一緒にいたスタッフの人もいた。今回の作品に限って言えば、それでなんとか乗り切れたという感じがします」

──まさに「コトーではなく、彼の周りの人たちが主役」を地で行く現場だった、と。

吉岡「そう。これって全然、医療ドラマじゃないんですよ。患者さんやその家族の心の方にスポットを当てているから、コトー先生は決して主役じゃない。特に今回はコトーが、すっかり島民として家族の一員になっているから、島民全員(主役)の話だと言えると思います」

映画『Dr.コトー診療所』

2022年12月16日公開
監督:中江功
出演: 吉岡秀隆 柴咲コウ
時任三郎 大塚寧々 高橋海人(King & Prince) 生田絵梨花
蒼井優 神木隆之介 伊藤歩 堺雅人
大森南朋 朝加真由美 富岡涼 泉谷しげる 筧利夫 小林薫
配給:東宝

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