奈良の風物詩「正倉院展」、今年の注目は奈良時代のアクセサリー

2022.10.31 18:15

聖武天皇と光明皇后の娘・称徳天皇が東大寺へ行幸した際の献納品「銀壺(ぎんこ)」。騎馬人物や鳥獣の細かな線刻文様が表された正倉院に伝わる最大の金属製容器

(写真7枚)

古都・奈良の秋の風物詩『第74回正倉院展』が「奈良国立博物館」(奈良市)で、10月29日よりスタート。初出陳8件、合計59件の奈良時代の至宝が一般に公開された。

正倉院宝物は、聖武天皇の遺愛品や大仏開眼会(だいぶつかいげんえ)などで使用された奈良時代を中心とした約9000点におよぶ工芸品などの品々。勅封(天皇陛下の命で封印すること)により、約1300年間も守り伝えられ、奇跡的に残ってきた。

なかでも今年の注目は、奈良時代のアクセサリーとも言える、ファッションアイテム類が出陳されている点だ。 「彩絵水鳥形(さいえのみずどりがた)」は、衣服の装飾として用いられた可能性がある長さ2.6センチの極めて小さな宝物で、美しく精緻な細工がミクロの世界で施されている。こちらは刺繡ブローチとして同展のグッズになっており、天平人気分で実際に身に付けられるのでおすすめだ。

刺繡ブローチとして実際に身に着けられるグッズになった「彩絵水鳥形」(1100円)

当時のファッションとして挙げられる、初出陳の腰飾りを下げる紐「紐類残欠(ひもるいざんけつ)」に初出陳品の小刀「黒柿把鞘金銀荘刀子(くろがきのつかさやきんぎんかざりのとうす)」、魚の形をしたサイの角製腰飾り「犀角魚形(さいかくのうおがた)」などのアイテムを付けたとされ、パネルとともに分かりやすく展示。

同館の井上洋一館長は、「小さなものだけれど、そこに当時の技術の粋が集められています。小さな世界から垣間見られる天平人のデザインセンスの良さをぜひご覧になって、自分のセンスと比べてみてください」と、コメントした。

そのほか、正倉院を代表する宝物として、同展のメインビジュアルを飾った「漆背金銀平脱角鏡(しっぱいきんぎんへいだつのはっかくきょう)」、ろうけつ染の屏風「鸚鵡﨟纈屛風 (おうむろうけちのびょうぶ)」「象木﨟纈屛風 (ぞうきろうけちのびょうぶ)」などに見られる、さまざまな動物などのデザインにも注目したい。

会期は11月14日まで。今年も当日券の販売は無く、「前売日時指定券」が必要となる。一般2000円ほか、ローソンチケットで販売中(売り切れ次第終了)。

取材・文・写真/いずみゆか

『第74回正倉院展』

会場:奈良国立博物館 東新館・西新館
会期:2022年10月29日(土)〜2022年11月14日(月)
休館日:会期中無休
開館時間:9:00~18:00(金〜日&祝日(11月3日)は20時まで、入館は閉館の60分前まで)

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本