事故物件住みます芸人・松原タニシ「嘘のない生活を」

2020.8.26 20:15

松原タニシが、長年アルバイトしていた「金龍ラーメン」にて。

(写真9枚)

「だれかに見られている気がするから美意識が向上」

──昔から家にまつわる怖い話は多々ありましたが、事故物件サイトを運営する大島てるさんも脚光をあびるなど、近年一気に注目されたジャンル。コンテンツとしてまだまだ広がりそうな可能性を感じます。

確かにそうだと思います。事故物件というジャンルがあらわれて、ホラーに対する価値観が変わってきたのではないでしょうか。これまでの怪談話は、フィクションやファンタジーとしての怖さで成り立っていた気がします。ある意味、別世界の話だった。

でも事故物件自体は本当に起きた話。となると急に身近になるというか、現実に感じられる。映画を観ていただくと分かりますが、自分にも危害が及ぶかもしれない。だからよりリアルに怖さを感じられる。

──そういえば森脇健児さんが約1年前、YouTubeチャンネル「やる気!元気!森脇チャンネル」内で、京都の心霊スポット、清滝トンネルで走るという企画をやっていらっしゃいました。で、怖さのあまりスピードが出て、500メートルの自己ベストを更新したという。

それは素晴らしい話ですね! 幽霊の力を借りて自己新を叩き出すのは、プラスなことじゃないですか。今までのような、死者を怖がるとか、気持ち悪がるだけの落とし方とは違う。エンタテインメントとしてホラーを扱うなら、それをどう昇華させるかが大切。僕がやっていることもまさにそういうことなんです。

僕の場合、事故物件で生活していたらだれかに見られている気がするから美意識が向上しました。人の目を気にして生活が正されていった。トイレで亡くなったおばあちゃんの匂いが取れないんですけど、ずっと臭っているから、「嗅覚がしっかりしているので、新型コロナに感染していないんじゃないか」と確認をしている。なんでもプラスに考えた方が良いんです。

最後は「金龍ラーメン」600円を完食して取材終了

──それこそ最近、WEB漫画なんかで「もし幽霊がかわいかったら、格好良かったら・・・」という風な作品も出ていますよね。

あ、そういうことです。ホラーを語る上で、怖い、ひどい、気絶するというだけではオチなくなりました。「幽霊をネタにして大丈夫?」と言われたりするけど、僕が呪い殺されたりしていないので、それをエンタテインメントにすることも問題ないと思います。

──事故物件住みます芸人として広く知られるようになって、意に沿わない仕事依頼も増えてきているんじゃないですか。

そうですね。だから依頼に対しては細かく打ち合わせをするようにしています。絶対に受けられない仕事は「こういう設定でいきませんか」と言われること。幽霊が見えることにしませんか、とか。

──そういう依頼があったらどうするんですか。

「いや、僕は見えないんです」とはっきり言います。事故物件住みます芸人は、霊が見えないからできたこと。でも、「見えることにしませんか」というのが、昔ながらのテレビ演出のイメージですよね。もちろんそうじゃない場合もありますけど。

──映画のなかでも、テレビのプロデューサーが「ヤラセだけはやめておこうね」と言いますよね。

あれは結構大事なシーンですよね。一度それをやっちゃうと、みんな信じてくれなくなりますから。そもそも「心霊現象が起きた」と言っても、証明しようがないじゃないですか。自分が住んでいる事故物件でも、証拠がないエピソードが多い。だからこそ、嘘のない生活をするしかないんです。

そういう雰囲気を見てもらって、あとは読者や視聴者に信じてもらえるか、もらえないかを託すしかない。ただ、一つでも嘘をつくと後ろめたさが出るはず。そうするときっとバレる。だから、事故物件の仕事に関してはこれからも嘘をつかずに取り組んでいきます。

『事故物件 恐い間取り』

2020年8月28日(金)公開
原作:松原タニシ「事故物件怪談 恐い間取り」(二見書房)
脚本:ブラジリィー・アン・山田
出演:亀梨和也、奈緒、瀬戸康史、江口のりこ、MEGUMI、真魚、瀧川英次、木下ほうか

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