白石和彌監督「俳優・香取慎吾を再確認」

2019.6.28 21:30
(写真5枚)

「相手がどんな演技をしてきてもすべて受け止める」(白石監督)

──そして、この映画では、吉澤健さん、不破万作さん、麿赤兒さんというすごい顔合わせが実現しています(笑)。

そうなんです。この3人は、唐十郎さんが主宰されていた劇団「状況劇場」のご出身なんですよね。こういった、1960年代のアングラ演劇の匂いのする役者さんと香取さんをぶつけたいというのが、自分の裏テーマとしてありました。

──1960年代の方たちだけじゃないですよね。ほかにも黒田大輔さんや、宮崎吐夢さん、寺十吾(じつなし・さとる)さんら、現在のアングラの匂いがする役者さんも香取さんに大いに絡んでいます。

バレましたか(笑)。実は香取さんの周囲を、新旧の、アングラの匂いのする役者さんで固めています。そのなかで、香取さんがどんなお芝居をするのか興味があったんです。でも、香取さんは結局、相手がどんな演技をしてきてもすべて受け止めることができるので、常に堂々としていましたね。香取さんの俳優としての大きさを再確認しました。

キャスティングには「自分の裏テーマ」があったと語る白石和彌監督

──もうひとつうかがいたいのが、加藤正人さんの脚本のことです。加藤さんは、この映画の前に、廣木隆一監督の『彼女の人生は間違いじゃない』(2017年)を書かれていて、あの映画は、福島出身の廣木監督が故郷への思いを撮った作品でした。なので、この映画では、加藤さんが自分なりの東北復興を描こうとしたのではないか、と。

それはありましたね。加藤さんと一緒に、シネハン(シナリオ・ハンティング)で東北を回っているとき、どう描くべきかというデスカッションはよくしましたから。

最新作『凪待ち』のキャンペーンで大阪を訪れた白石和彌監督

──そこで印象的だったのが、吉澤さんが自分の漁船に香取さんを乗せて、「津波はすべてを奪ったけれど、今また海は豊かに甦っている」と話すシーンでした。

実はあのセリフは、三陸の漁師さんが実際に話していたことなんです。「この海は津波に根こそぎ奪われて、1度死んだ。けれど今、海は以前にもまして豊かになっている」って。自然はそういう甦り方をするんだと。でも、それって人間関係にも言えることかもしれないですよね。リセットじゃないけど、とことん壊れた方が、実は豊かな甦り方をするのではという。それをこの映画の主人公は体現してみせてくれている、そういう思いはありました。

──だからなんと言うか、監督の映画はやっぱり、ろくでなしにやさしいですよね(笑)。

どうなんでしょうね(笑)。でも、そういう観方でこの映画を観てもらって、生きる勇気を得たって言ってくださる人がいるのなら、それはそれでうれしいですけどね(笑)。

映画『凪待ち』

2019年6月28日(金)公開
監督:白石和彌
出演:香取慎吾、恒松祐里、西田尚美、ほか
配給:キノフィルムズ

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