白石和彌監督「俳優・香取慎吾を再確認」

2019.6.28 21:30
(写真5枚)

「作り手としては、とてもラッキーでした」(白石監督)

──そう思われたのは、特にどのシーンの演技でしょうか?

例えば、リリー・フランキーさん演じる小野寺からお金を借りるシーンですね。あの申し訳なさそうにしながらも、チラッと出てくるうれしそうな顔。そして、それを隠そうとするちょっとズルい表情(笑)。あれなんて、普段から人間をよく観察していなければできないですよ。おそらく、香取さんは人からお金を借りたことなんてないでしょうし(笑)。

──劇中の香取さんは、リリーさん以外にも多くの人からお金を手渡しされますよね。そして、それをすべてギャンブルですってしまう(笑)。はっきり言ってろくでなしです。本当にこの役をよく引き受けられたなと思います。

タイミングも合ったのかな。この映画の撮影に入ったのがちょうど1年前なんですね。香取さんがそれまでとは違う、新しい芸能活動に乗り出そうとしていた、まさにその時期にこの映画が重なったんです。香取さんもいろいろと不安があっただろうし、それが主人公のもつ孤独感や閉塞感とリンクした気がします。映画の作り手としては、とてもラッキーでした。

映画『凪待ち』のワンシーン

──主人公がつきあっている女性を西田尚美さん、その娘で、母親よりも主人公と気が合っている少女を恒松祐里さんが演じていて、2人とも清々しくて印象的です。

いいでしょう、2人とも(笑)。西田さんは、僕が助監督をしていた作品に出演されていて、そのときの印象がすごく良くて、いつか自分の作品にも出演してもらいたいとずっと思っていたんです。だいたい僕の映画に出てくる女性は嫌な女や悪女が多いので、西田さんにこの役で出演してもらって、初めて普通の生活を送っているステキな女性を登場させることができて、うれしかったです(笑)。

──恒松さんは、朝ドラ『まれ』(2015年)や大河ドラマ『真田丸』(2016年)など、数々のドラマや映画に出られていますよね。

恒松さんは、以前に雑誌の対談でお会いして、その目力に驚いたんです。まだ世間のことをあまり知らない分、強い興味を持っていることをうかがわせ、また実際に社会に乗り出す勇気を感じさせる。撮影したときはまだ19歳で、なんとか10代のうちに出演してほしかった。彼女には、映画のなかで起きる事件の「前と後」の変化を意識して演じてもらいました。なので、そこにも注目して観てもらえるとうれしいですね。

映画『凪待ち』のワンシーン(左が香取慎吾、右が吉澤健)

──共演者の話でいうと、監督の作品の常連であるリリー・フランキーさんも、音尾琢真さんもますます個性的な魅力的な演技を見せてくれています。でも、今回特にかっこいいのは、西田さんの父親を演じている吉澤健さんですね。

吉澤さんは、僕の師匠である若松孝二監督にとってのスター俳優ですからね、下手な役はお願いできないですよ。

映画『凪待ち』

2019年6月28日(金)公開
監督:白石和彌
出演:香取慎吾、恒松祐里、西田尚美、ほか
配給:キノフィルムズ

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