三池監督、玉砕の先にある映画の可能性

2015.3.11 12:00
(写真5枚)

「まだ俺、何にも始まってないじゃんって(笑)」(三池崇史)

──これはいわばケニアと五島列島が対応するように進む話ですが、そのどちらのシークエンスにも素人さんが大胆に使われていて、プロの俳優と真正面からの芝居を見せますよね。それが素晴らしいアイデアであり、効果的だなぁと思ったんです。

あれは意図したことではなく、そうせざるを得なかったんですよね。作品がその道を選んだってことです。ケニアには子役ってものが無いんですよ、映画が無いから。同じことが五島列島のおばあちゃんにもいえて。まあ、リスクは高いし「えー? そんなん映画になるんですか?」って言われましたけど。確かに上手くはない、けど、映画の中に登場してもまったく問題ない。今の東京、日本で、あの年齢で役者をやってて、あんな味を出してる人はいますか? いないんですよ。(老齢の俳優層を)支える底力が日本に無くなってる現実があるわけです。でも、その中で消去法的に選んでいって作っていくのが今の映画なんですが、今回はそのこびりついた垢を全部落とした。今までこうだからこうあるべきだ、と思っていたことを全然信じないようにした。それを新たに実践して、「ほら、でもやっぱりイイじゃない」っていうのを確信させてくれる映画でしたね。いや、もういろんなことが新鮮でしたよ。「まだ俺、何にも始まってないじゃん」って思った(笑)。

© 2015「風に立つライオン」製作委員会
© 2015「風に立つライオン」製作委員会

──この20年間、日本映画界で図抜けた作品量と質を誇る三池監督にしてそれですか。すごいなあ(笑)。

だって、あのおじいちゃんおばあちゃんたちの芝居を作れないですよね? 真木さんとか「受け」が上手くて。当然(素人さんは)トチるわけですけれども、そのときにイヤな顔をしない。「あ、間違えた、またぁ」って。現場もプレッシャーかけないし。でも(素人さん)本人はドキドキなんですよね。どの人にも共通してるのは、最後のカット撮って「OK! はい、これで終わりです」って言ったら「ホンマですかぁ?」って、その衣装を着たまま帰りますもん(笑)。一刻も早くそこから逃げたいっていう。すごい緊張してたんだなって。ただ、その人たちにとってもこの映画を観て、恥ずかしいなと思いながらもちょっとした宝物にはなると思うんですよ。

──そうですね。やはり映画というものにはそうした「格」みたいなものもあるし。ま、三池監督はそんな「格」をどんどんぶっ壊していって、逆に映画本来の持つ破天荒なパワーを甦らせた張本人であるわけですが(笑)。

広く多くの人に感動してもらうことは難しいですけれども、ただ映画に出てもらった人たちがあれを観て、孫に「ばあちゃん出てるよ」って、そんなところを同時に提供できるのが、キャパシティが広くて可能性が大きい映画って媒体なのかな、と。それが僕らエンタテインメントを作る人間の基本じゃないかなって。でも、映画ってどんどん狭くなってますよね。役者も含めていろんなメディアで人気のある人たちや、いろんな「物語」も最後に映画に行き着いて、「『映画化』されたらそれで終わり」って、墓場みたいな(笑)。そうじゃなくて、そこからまた始まっていくってものを蒔ければな、と。

映画『風に立つライオン』

2015年3月14日(土)公開
原作:さだまさし(「風に立つライオン」幻冬舎文庫)
監督:三池崇史
出演:大沢たかお、石原さとみ、真木よう子、ほか
配給:東宝

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