松下洸平の“家康”は予測不可能?「どうする家康」松本潤の“気弱”から一転【豊臣兄弟】

18分前

『豊臣兄弟!』第41回より。月代姿で大坂城に現れた徳川家康(松下洸平)(C)NHK

(写真10枚)

豊臣秀吉の名参謀と言われた弟・豊臣秀長(小一郎)のサクセスストーリーを、仲野太賀主演で描く大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)。

10月25日放送の第41回「家康の野望」では、歴代大河のなかでも、かなりひねくれた性格の松下洸平版家康が、なぜ秀長にたらしこまれたのかを分析。さらに豊臣家のゴッドマザー・なか(大政所)の存在の大きさを、改めて感じる回にもなった。


■ 徳川家康、秀長を暗殺しようとするが…第41回あらすじ

豊臣秀吉(池松壮亮)が次々に人質を送り込むのに根負けし、上洛を決めた家康。しかし、その真の目的は、家臣の石川数正(迫田孝也)を奪われた代わりに、秀吉を支える小一郎を暗殺することだった。

秀吉との謁見の前日、小一郎のもてなしを受けた家康は、尋ねたいことはなんでも尋ねていいという小一郎の言葉を受けて、大坂城を攻める方法や、これまでにあった一番辛かったことを尋ね、小一郎もすべて正直に答える。

『豊臣兄弟!』第41回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第41回より。豊臣秀長(写真右、仲野太賀)の熱意に胸打たれ、にらみつけながら葛藤する徳川家康(写真左、松下洸平)(C)NHK

小一郎は、これまで失ってきた人たちのことを思って「殺し合いはもうたくさん。戦ごときに大事なもん奪われてたまるか」と熱弁し、さらに家康に理想の世の姿を問う。それを聞いた家康は、刺客が放った矢をみずから受けて、小一郎の命を助けた。

そこに現れた秀吉と対面した家康は、ただ大事なものを守るために頂点に立ちたかっただけという胸の内を明かし「そなたらの目指す世も悪くはなさそうじゃ」と、秀吉への臣従を受け入れた。

■ 松潤版は“気弱な平和主義”…松下洸平は?

『豊臣兄弟!』第41回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第41回より。豊臣秀吉(写真手前、池松壮亮)の前に、月代姿で表れた徳川家康(写真中央、松下洸平)(C)NHK

“三英傑”のなかでも、取り分け人物像の描き方の幅が広い徳川家康。最近なら『どうする家康』(2023年)で松本潤が演じた、気弱だけど平和を願う意思は誰よりも強い家康像が記憶に新しい。

心の内が割とわかりやすかった松潤版・家康に対して、『豊臣兄弟!』で松下洸平が演じる家康は、平気で嘘をつくし自分に関心のないことはすぐ忘れちゃうし、まさに「狸」の名がふさわしい人物だ。そのため、なにがきっかけとなって豊臣方に着くことになるのかが、まったく予想ができなかった。

『豊臣兄弟!』第41回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第41回より。豊臣秀長(写真右、仲野太賀)と話す徳川家康(写真中央、松下洸平)に、お酒をつごうとする長尾吉房(写真左、上川周作)(C)NHK

その決定打を打ったのは、やっぱり主人公の秀長だった。家康が上洛して秀吉に謁見する前日、秀長が家康を接待し、秀吉とも非公式に会談を行っていたことは、実はちゃんと記録に残っている。

その史実を生かして、上洛しても臣従を誓うどころか、秀長が死ぬのを待たずに「殺してやろうホトトギス」状態となっていた家康を、秀長が腹を割って話し合って誠意を見せたことで、家康が心を許す・・・という決着の付け方となっていた。

『豊臣兄弟!』第41回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第41回より。豊臣秀長(写真左、仲野太賀)をかばい、肩で矢を受け止める徳川家康(写真右、松下洸平)(C)NHK

家康のガードを緩めるきっかけになったのは、秀長のハードモード過ぎる過去を打ち明けたこと。野党に理不尽に殺された百姓時代の友人、争いに巻き込まれて死んだ許婚、山崎の戦いで戦死した義理の息子・・・。戦国の世でなければ、今も生きていたはずの大事な人たちを奪われた記憶。

それは、今川義元(大鶴義丹)のせいで可愛がった小鳥を殺されたり、織田信長(小栗旬)からのプレッシャーを受けて、妻子を死に追いやった家康の過去と、ピッタリと重なった。

『豊臣兄弟!』第41回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第41回より。徳川家康(写真右、松下洸平)にこれから作りたい世を問う豊臣秀長(写真左、仲野太賀)(C)NHK

そんな辛い経験を二度としないために、奪う側に回ろうとした家康だったけど、秀長に「どんな世を作りたいか?」と聞かれたときに、「誰からも奪われない立場」になってから何がしたいのか? というビジョンが皆無だったことに気づかされた。

しかし、自分と似たような経験を持つ秀長は「誰もが寿命をまっとうして、笑って死ねる世の中」という、一歩も二歩も先を行く理想郷を描いていた。そこに家康は、少なからず衝撃を受けたはずだ。

『豊臣兄弟!』第41回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第41回より。徳川家康(写真右、松下洸平)に、見せかけでいいから臣従の意思を見せてほしいと頼む豊臣秀長(写真中央、仲野太賀)と秀吉(写真左、池松壮亮)(C)NHK

さらに、秀吉も交えて話し合った末に、彼らは自分から略奪をするのではなく、むしろなにか大事なものを与えてくれる・・・と思えたからこそ、その国造りに協力することになったのだろう。

ここから家臣として、そしてもう一人の“兄弟”として秀吉の天下一統に協力する家康だが、石川数正がかつて家康に伝えた、唯一の天下取りの方法「豊臣兄弟より長生きする」も、しっかり狙っているようだ。ここから秀長と家康がどんな関係を築いていくのか、それがどうやって江戸幕府の理念につながっていくのかを見守っていこう。

■ イケメンに魅了、母・なかの“徳川家滞在記”

『豊臣兄弟!』第41回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第41回より。母・なか(写真右、坂井真紀)と再会し、抱き合うあさひ(写真左、倉沢杏菜)(C)NHK

さて、家康を配下にする金星を上げた秀長だったけど、それをアシストしたのは間違いなく、人質として家康のもとに送られた妹・あさひ(倉沢杏菜)&母・大政所(なか/坂井真紀)だ。

家康の正室となったあさひが、豊臣家代表として家康と対等に接しているというのは非常に新鮮な構図だったが、井伊直政(阿久津仁愛)が大政所を接待する一方で、家を薪で囲っていく・・・というのは、『どうする家康』でも見たおなじみの構図だった。

大政所と入れ替わるように家康が上洛し、家康になにかがあったら報復として大政所を亡き者とするために、いつでも家に火を点けられる状態にした・・・というのは、家康の家臣がなかなかアナーキーな人間ぞろいだったことを伝える有名なエピソード。

ただし、これをやったのは直政ではなく、近年はなぜか大河ドラマに登場することのない重臣・本多重次(「一筆啓上」の手紙で有名)だったそうだ。

『豊臣兄弟!』第34回より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』第34回の場面より、徳川家家臣・井伊直政(阿久津仁愛)(C)NHK

ちなみに直政は、実際に美男子で名高かったことと、「赤鬼」と呼ばれる猛将ながらも、大政所には丁寧に接したために、侍女もふくめて寵愛を受けたそう。大坂に戻る際には警護役に指名されたというから、やはり女性はいつの世もイケメン好きなようだ。

ただ、大政所は人質ではなくて、純粋に体調を崩したあさひを見舞うためにやってきたという説も最近は出てきているので、将来はまた違う大政所の徳川家滞在記が見られるかもしれない。

『豊臣兄弟!』より。(C)NHK
『豊臣兄弟!』より。豊臣秀吉の母・なか(坂井真紀)(C)NHK

この『豊臣兄弟!』の大政所は、こんなレベルまで出世するとは微塵も思えない放蕩息子の時代から、秀吉の言うことをあきれるほど純粋に信じていた。だからこそ、兄弟が千利休(吉岡秀隆)の苦すぎるお茶で禊をするほど悩んだ人質の願いを、親不孝だなんて1ミリも考えずに受け入れられたのだろう。

秀吉にとって、秀長が自分の手足となって動く最高の相棒だとすれば、大政所の存在は自分のやっていることが家族のため、人のためになっていることを確信させてくれる精神的支柱だったわけだ。

このとんでもなく太い大黒柱があったからこそ、秀吉はあそこまで大きすぎる仕事ができたのだと、この回で改めて感じさせてくれた。

そして彼の仕事が大きければ大きいほど、その大黒柱と手足を失ったときのカタストロフィーは、常人なら到底耐えられないほどのレベルになるということも、同時に予測できるのである・・・。

◇

大河ドラマ『豊臣兄弟!』はNHK総合で毎週日曜・20時から、NHKBSは18時から、BSP4Kでは12時15分からスタート。11月1日放送の第42回「北野大茶湯」では、秀吉が聚楽第落成記念に、大規模な茶会を催すことに。そこで様々なトラブルが起こると同時に、元室町幕府将軍・足利義昭(尾上右近)が再登場する。

文/吉永美和子


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