現役バリバリの100年建築「京都市庁舎」改修…創建時の姿復元など、見逃せないポイントは?

3時間前

1927年に竣工した「京都市役所本庁舎」は政令指定都市の市役所では最古の建物で、2025年に国の登録有形文化財に登録された。これまで大切に守られてきた建物の歴史を尊重した改修の秘密に迫る

(写真30枚)

昭和2年(1927年)に完成した「京都市役所本庁舎」(京都府中京区)。日本各地で歴史ある建物が惜しまれつつ次々に取り壊される中にあって、京都の近代建築を多く設計し「関西建築界の父」と呼ばれる武田五一氏監修で、国の登録有形文化財に指定された建物は、今も現役バリバリ。この本庁舎を含む市庁舎の一体的な整備が進められ、4月28日に店舗区画「ててまち」がオープンする。

そんな京都市庁舎の整備は、耐震性能の向上やバリアフリー化、執務室の分散化などの問題を解決するために、1990年から検討が進められ、2017年より新庁舎の整備工事に着手。さまざまな問題を解決しながら、2027年に100周年となる「本庁舎」のデザインをできるだけ残し、北と西の庁舎を建て替え、押小路通を挟んだ北に分庁舎が新築された。

「郡上おどりin京都」は、毎年6月の第一金曜・土曜、京都市役所庁舎前広場で開催
建物のすぐ目の前は「京都市役所庁舎前広場」として、休日にはフリーマーケットや音楽、食のイベントなどが開催される京都市のランドマーク的存在だ。写真は毎年6月に開催される「郡上おどりin京都」の様子(2025年6月撮影)

南側の御池通から見る本庁舎は、パッと見たときに洗浄で壁が明るくなったくらいしか、変化が感じられないかもしれないが、実は内部は復元をしながら、利用しやすく変貌を遂げている。今も、中では多くの職員が働き、市役所を訪れる人はもちろん、だれでも使用できるオープンスペースも複数ある。

「京都市庁舎」
「京都市庁舎」には、誰でも休憩などで利用可能な複数のパブリックスペースがあり、開かれた市役所となっている

設計をおこなった「日建設計」(本社:東京都千代田区)設計グループの佐賀淳一さんに、本庁舎改修のポイントを取材。歴史を尊重したデザインと最新の設備を兼ね備えた建物内の見どころを紹介する。

「京都市庁舎」
「京都市庁舎」の解説をする「日建設計」大阪オフィスの佐賀淳一さん

◆ さすが京都!な景観に配慮した改修計画と新庁舎建設へのこだわり

「京都市庁舎」
外から見ただけでも、モチーフ使いなど、ネオ・バロック様式を堪能できる建物「京都市庁舎」

本庁舎は、レトロ建築や近代建築好きにも魅力的な建物として人気がある。多彩な東洋的モチーフで装飾された左右対称の堂々とした外観も印象的だ。

西洋建築の流行にアジア的な要素(イスラムやインドなど)を取り入れた、ネオ・バロック様式に基づく設計
「京都市庁舎」西洋建築にイスラムやインドなどの遺跡を思わせるモチーフを取り入れた、ネオ・バロック様式に基づく設計

今回の改修では、執務室の環境を整えるため、スチールサッシの単層ガラスから、アルミサッシの複層ガラスに変更した。通常アルミサッシにするとどうしても枠が太くなってしまうが、スチールの細いラインをアルミでも維持し、見た目のバランスが変わらないように工夫している。執務室以外の階段室などでは、スチールサッシと古いガラスが残されているので、探してみるのも楽しい。

「京都市庁舎」
残されたスチールと単層ガラスにも注目「京都市庁舎」外観
「京都市庁舎」
「京都市庁舎」の内部から見た窓

この外観を主役にするため、南側からは北庁舎や分庁舎は見えないように設計されている。また、東の河原町通から見える新庁舎はガラス張りになっていて、北側に建つ武田五一氏監修の建物(旧島津製作所本社ビル、現在の「フォーチュンガーデン京都」)や景色を映して溶け込んでいる。

「京都市庁舎」
「京都市庁舎」と「フォーチュンガーデン京都」の間の新庁舎はガラス張りで完全に周囲に溶け込んでいる

「武田五一の建物に挟まれて、新庁舎は主張せずに存在感を消そう、というのがファサードのコンセプトです。ただし、ひさしのラインを本庁舎と合わせるなど、水平ラインを統一することは意識しました」と、佐賀さん。

北側はこのような形に、周囲の商店との調和をひさしによって実現「京都市庁舎」

一方で建物内部は、本庁舎の外壁が北庁舎の内部に取り込まれたようになっていて、ユニーク。室内にいながら外壁の装飾などが観察できるのだ。外壁の横に設けられたパブリックスペースで、昼食のお弁当を食べる、なんてこともできるようになっている。

「京都市庁舎」
建物内に現れたもともとの外壁は、かなりのインパクト「京都市庁舎」
「京都市庁舎」
取材時「京都市庁舎」屋上のパブリックスペースには、楽しそうなファミリーの姿も

◆ 通常一般公開していない非公開ゾーン「市会議場」と「正庁の間」100年前の姿に

「京都市庁舎」
「市会議場」は雰囲気を変えずに、バリアフリー対応が進められた。中央のアーチが印象的「京都市庁舎」

本庁舎の改修で特に注目されるのが、「市会議場」と「正庁の間」だろう。約100年にわたって使用されてきた「市会議場」は、今回の改修で吹き抜け部分が広くなり明るくなった。会議場そのものの面積も広くなったので、車椅子でも出席できるようにスロープが設置されたほか、「カニ歩き」で移動しなくてはいけないほど狭かった議席の間も広げられた。

「京都市庁舎」
「市会議場」を記者席などがある、ひとつ上のフロアから見下ろす「京都市庁舎」

デザインの面では、これまでの会議場の雰囲気から変わっていない。議席正面のアーチや一部の照明(LED化はされている)はオリジナルが残された。格子の光天井は、安全上掛け替えられたが、幾何学模様のステンドグラスはそのまま使用し、仮に割れても落下しないよう下に合わせガラスが入れられている。

「京都市庁舎」
「市会議場」幾何学模様のステンドグラス「京都市庁舎」

また触れると柔らかな布団のような感触の「緞子張り(どんすばり)」された、縁起の良い芍薬文様の光沢のある深いグリーンの壁布は、工事中に建築当初の色がわかる布が出てきたことから、それに合わせるため本番の「織り」の直前に急遽変更されたというエピソードも。

「京都市庁舎」
「市会議場」芍薬文様の光沢のある深いグリーンの壁布。以前の色見の再現にもチャレンジ「京都市庁舎」
「京都市庁舎」
本会議の様子本庁舎3階傍聴席で傍聴が可能。ここも外壁だった部分が今は内部にあるユニークなつくり「京都市庁舎」

◆ 設計図に残らない、色の復元はどうやって?

「京都市庁舎」
式典や来賓の歓迎行事などで使用する「正庁の間」、レトロな内装も再現「京都市庁舎」

また、式典や来賓の歓迎行事などで使用する「正庁の間」は、改修工事に入る前は、天井が張られたごく普通の無機質な執務室として使われていた。今回の復元で、かわいらしいピンクとブルーの柄や、柱の上部にあるつぶつぶとした独特な装飾があらわれている。

式典や来賓の歓迎行事などで使用する「正庁の間」
独特な装飾が随所にみられる「正庁の間」ピンクとブルーが基調で可愛らしい「京都市庁舎」

こういった色の復元は、古い建物ならではの難しさがある。「正庁の間」だった執務室は、天井内にピンクとブルーの装飾が残されてはいたものの、その色が建築当初の色だとは断定できない。設計図に色は記載されていないため、古い写真に頼ることになるが、不鮮明だったり変色してしまっていたりと正解を見つけるのは難しい。

「京都市庁舎」
「京都市庁舎」の「正庁の間」

そのため設計者だけでなく建築史などを専門とする学識者とともに、「武田五一なら…」と考えて復元を試みるそうだ。今回は近代建築を研究する武庫川大学・石田潤一郎教授と検討を重ねて決定したと佐賀さん。

「京都市庁舎」
工事開始後に、昔の床タイルが出てきたことから、当初のデザインが変更された中央エントランス「京都市庁舎」

ちなみに、創建当時の姿に戻す改修がおこなわれた中央エントランスの床も、解体作業中に昔の床タイルが出てきたことからデザインが変更された。このように古い建物の改修は、工事が始まってから設計が変更されることも多いのだとか。

「京都市庁舎」
「京都市庁舎」入ってすぐの正面玄関には、佐々木真弓氏が制作のステンドグラス

◆ 新規オープンの「ててまち」は4月28日から営業開始

「京都市庁舎」西洋建築の流行にアジア的な要素(イスラムやインドなど)を取り入れた、ネオ・バロック様式に基づく設計
頼もしい政令指定都市最古の現役市役所「京都市役所」

実際に本庁舎で働く職員からは「改修されて空調がよく効くようになり、免震工事がされ老朽化の問題が解消された」という声が聞かれた。各庁舎へスムーズにアクセスできるようになり、地下鉄東西線「京都市役所前駅」や「ゼスト御池地下街」とも地下通路でつながり、利用者の利便性も向上している。

「京都市庁舎」
「ゼスト御池地下街」からつながる地下スペースにもパブリックスペースが広がる「京都市庁舎」

そして、寺町通の賑わいの創出を目的とした西庁舎・北庁舎1階の店舗区画「ててまち」もいよいよ4月28日に開業。出店は、「スターバックス」、「まるき製パン所」、「京のお肉処弘」、「京都カレー製作所カリル」、「十割蕎麦専門店 10そば・26(にーろく)ダイニング」の5店舗。オープニングキャンペーンとして、各店舗1会計あたり税込1000円以上利用の先着100名(合計500名)に、「ててまち」限定トートバッグがプレゼントされる(一部対象外)。

「京都市庁舎」
新旧の建物が調和する「京都市庁舎」の中庭

「ててまち」や周辺を訪れた際には、「京都市庁舎」のレトロ建築ならではの風情とその歴史に思いを馳せてみては?

取材・文・写真/太田浩子 写真/Lmaga.jp編集部

「京都市庁舎」西洋建築の流行にアジア的な要素(イスラムやインドなど)を取り入れた、ネオ・バロック様式に基づく設計
「ててまち」とともに、外からも中からも楽しめる「京都市庁舎」をチェックしてみよう
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