若者の「魚離れ」に新提案…中トロを“レアカツ”で楽しむ専門店、心斎橋に登場

看板メニューの「中トロレアカツ(赤出汁付き)」(2900円)。ホタテフライも付いている
大阪・心斎橋に、中トロの海鮮レアカツを食べられるお店が誕生した。外側はサクッと香ばしく、中は中トロのとろけるような食感が広がる。
新鮮な魚をレア状態で揚げる新しいスタイルを提案するのは、単においしい食事を提供するだけでなく、日本の魚食文化を守るための新たな試みでもある。
「玄海」を運営する水産加工スタートアップの「ベンナーズ」(本社:福岡県福岡市)代表取締役社長の井口剛志(いのくちつよし)さんに聞いた。
■ まるで刺身のようなレア食感、揚げ方にこだわり
大阪メトロ「心斎橋駅」から歩いて数分、海鮮レアカツ専門店「玄海 心斎橋店」(大阪市中央区)がある。以前の海鮮丼を提供するスタイルから、海鮮レアカツを提供するスタイルへと、3月31日にリニューアルオープンしたばかり。

「玄海」が提案するのは、日本に旧来からある「カツ」という揚げ物の調理法に、新鮮な魚の魅力を掛け合わせた新しい食べ方だ。
看板メニューは、おろしポン酢とわさび醤油でいただく「中トロレアカツ(赤出汁付き)」(2900円)。サクサクに揚がった衣に、まるで刺身のようにしっとりとしたレア食感の中トロが包まれている。衣のサクッとした心地よい歯ごたえのあとに、中トロ特有の上質な脂の甘みが口いっぱいに広がる。
揚げ物でありながら重くはなく、魚本来の旨みをしっかり堪能できる仕上がりは秀逸だ。ほかにも、たっぷりのタルタルソースに、これまたたっぷりのイクラととびっこがのった「海鮮レアカツ サーモンホタテ」(2500円)、「ホタテレアカツ」(1900円)などが用意されている。

また、レアカツのおいしさを支える「米」へのこだわりも深い。「当店で使用している米は、メニューに合わせて、専門の業者にブレンドしてもらっています。すべてのメニューの中心に魚があって、お米も、まず魚ありきで決めています」。
■ 魚食文化の衰退を憂慮する、社長の想い
井口さんは、現在の水産業界が抱える課題に強い危機感をもっている。農林水産省の統計によると、日本人ひとりが1年間に消費する魚介類の量は、2001年の約40キログラムから、2022年には約23キログラムまで減少。およそ20年間で、ほぼ半減している。

「分かりやすい喩えでいうと、日本人ひとり1日あたりシシャモ2本分ぐらいしか魚を消費していないといわれているのです」。
魚は家庭で調理するには手間がかかるため、敬遠されがちだ。また、食生活の変化とも相俟って、とくに30歳未満の若い世代に「魚離れ」が深刻なのだという。
こうした状況を打破するためには、新しいアプローチが必要だと井口さんは考えた。昨今はインバウンド客で賑わう寿司屋が増加し、海鮮丼を提供する店舗も多く存在している。

「若者が好むガツンとくる揚げ物にすることで、魚を食べる機会を増やしたい」。利用客の70~80パーセントを日本人客に想定しているのも、日本の消費者にこそ日本の魚を食べてほしいという想いがあるからだ。
さらに、持続可能な水産業を実現するため、市場では価値がないとされている未利用魚の活用にも取り組んでいる。
「サバチーズフライ」(1000円)は、市場で規格外とされ使い道が少ない「ろうそくサバ」と呼ばれる小さな未利用魚が活用されている、1日10食限定のメニュー。同社が展開する魚のサブスクリプションサービスなどで培った水産加工のノウハウを活かし、チーズと合わせてフライにすることで食べやすい料理へと昇華させた。

■「あと10店舗は展開したい」多店舗展開を見据えた今後の展望
井口さんは、今後の展望として、まずは心斎橋店において1日100食の提供を目指している。年間にすると3万6000人に「海鮮レアカツ」を届けることが、魚食文化を守るための確実な一歩になると信じているからだという。
さらに今後2〜3年をかけて、大阪府内に数店舗、全国に最低でも10店舗を出店する計画を進めている。
「20代~30代後半の世代を中心に、新しいスタイルで魚食文化をつないでいきたい」。
外はサクッと香ばしく、中はとろけるような海鮮レアカツと、魚に合わせて特別にブレンドされた米を炊いたご飯の組み合わせは、これまで魚を敬遠してきた人にも魚の新しい魅力を教えてくれることを期待したい。
取材・文・写真/平藤清刀
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