「新しい扉を開いてくれた」退団20年湖月わたる×荻田浩一…ふたりで宝塚の思い出を振り返る

湖月主演による『夜明けの天使たち』上演の翌年、彩輝なお(当時は彩輝直)が同作で演じた役を主演にした『夜明けの天使たち―悲しみの銃弾―』も上演。湖月「おぎちゃんはそうやって、役者を見て広げてくださるんですよ」撮影:KIE MURAI
■ 『ロマンチカ宝塚’04』で印象に残るシーンは?
湖月「振付が入り、動きが変わるとそこで違うドラマが生まれたりもしますよね。このショーといえば、「サテリコン」(※船乗りが妖しげな世界に入っていくシーン)もすごく素敵でした。いろいろな色が紡がれていって、その世界にいざなわれ、飲み込まれる感じ。「青の洞窟」のシーンも好きでした。最後に大階段が出てくるところでは、いろいろな人と絡みながら踊らせていただいて」
荻田「そう、デュエットダンスはいつもやっているので、それとは違う終わり方にしようと。中詰で檀ちゃんとはしっかり踊ってもらったのでね」
湖月「明るい中詰でしたね!」
荻田「同じ劇団にいて、普段から稽古場でも会ったりはしているけど、演出と主演で関わらせていただくことは、本当に数が限られている。二度とないかもしれないと思うからこそ、効果がある作品を作りたいと、ただそれだけを思っていました。戦略的な野心などは抱かずに」
■ 轟悠率いる雪組公演『パッサージュ』で全部出し切った?専科時代の湖月も出演
――荻田さんが初めて手掛けられたレビュー『パッサージュ-硝子の空の記憶-』にも、湖月さんが出演されていましたね。
湖月「そう、『パッサージュ』もです! 専科のときに。あのショーも大好きでした」
――その後も「荻田ワールド」と評される独特な世界観のショーやレビュー、ミュージカルを創作され、2008年の退団まで観客を魅了されました。
荻田「演出家は最初に芝居の演目でデビューすることが多く、僕も当初は芝居が続いていたので、芝居の作家になるのかなと思っていたら、劇団から「一度、ショーを作ってみないか」とお話があって。それこそ、もう二度とショーを作る機会はないと思って『パッサージュ』に臨みました」
湖月「へー!」
荻田「僕は入団2、3年前から宝塚の舞台を観始めたのだけど、当時の僕が感じていた宝塚レビューのきれいなところ、いいところを自分なりに詰め込みました。これが最初で最後かもしれないから、後悔がないようにと。だから2作目のレビューのお話をいただいたときは困りました。一作目で全部やっちゃったから(苦笑)」
湖月「そうなんだ! 『パッサージュ』のプロローグ、黒燕尾の男役さんや色とりどりのドレスの娘役さんが、次々と出てくる演出も素敵でしたよね」
荻田「この作品が2001年の上演で、もう四半世紀前!」
湖月「そんなに⁉ オソロシイ(笑)」
■「退団してからさらに、宝塚という特別な世界が愛おしくなった」

――おふたりは退団後もご一緒されている舞台がありますが、やはりずっと交流が続いていたのでしょうか。
湖月「時々、みんなでごはんを食べに行ったりしますよね。ここぞ、というときに」
荻田「はい、たまに!」
――退団後も活躍されている湖月さんについて、荻田さんからはどのように見えていたのかお聞かせください。
荻田「宝塚を辞められたとき、あまり女優さんになる気はなかったのでは、と思ってて(笑)」
湖月「アハハハ」
荻田「背が高いですし。でも歌や踊りは続けたいという思いがあり、変わらず自分のやりたいことに真っすぐ向き合って、今に至るんだろうなと思います。昔と同じくブレない人、というのが大きいですね」
湖月「ありがとうございます」

――湖月さんは退団後、幅広い役を舞台で演じられながら、宝塚OG公演では「現役でもいけるのでは⁉」と思うほどの変わらないスタイルや、ダンスのキレを維持されているように感じます。どのようなことを意識されてきたのか、ぜひ教えてください。
湖月「すべては作品との出会いだと思うんです。自分がこうなりたい、と思ってなれるのではなく、毎回作品に真摯に向き合っていくなかで自然に…。私は宝塚90周年の時代に在団していたのですが、退団後しばらくして、宝塚100周年に向けてのイベントが増えたんですよ」
荻田「そうそう、梅田芸術劇場さん主催で、100周年に向けてのOG公演をやっていきましょう、というのが始まって」
湖月「おぎちゃんと一緒にやらせていただいた『DREAM,A DREAM』もそうですよね。そして私にとって、2008年に『愛と青春の宝塚~恋よりも生命よりも~』という作品に出会ったのも大きかったです。宝塚の生徒の役を初めて演じ、戦争を乗り越えられた先輩方への尊敬や感謝、偉大さを実感しました。タカラジェンヌを舞台上で演じることで、あらためて宝塚歌劇団というものに感動し、退団してからさらに、宝塚という特別な世界が愛おしくなりました」
荻田「そうだね、辞めてからね」
湖月「そこからのOGイベントだったので、やっぱりファンの皆さまの夢を壊したくない、夢を見続けてほしいという思いがあり、ダンスや肉体に対して常に意識していたところはあると今は思います。まぁ、自分が嫌なんでしょうね! ベストな状態で舞台に立ちたいと」

■「ダンスを続けている元宝塚のスターは少ない。わたるはその数少ないひとり」(荻田)
荻田「ダンスを続けている元宝塚のスターさんは、どうしても少ない。ミュージカルに出演しても、役柄的に踊らない役が多くなるから」
湖月「そうですよね。あまり踊りってないですよね」
荻田「だから踊りを続けるのは、相当本人の意思が強くないといけないけど、わたるはその数少ないひとりです!」
湖月「OG公演でもダンスシーンをいただくことが多く、「湖月わたるはまだまだ踊れる」と思っていただけるのがやっぱりすごくうれしいので、そこに応えたいという気持ちはあります。それに、年齢を重ねるごとに、どんどん楽しくなっていくというか…。ダンスを続けるのは大変なのですが、今私は原点に戻っているというか、基礎的な訓練をきちんとやっておけば、どんなダンスにも対応できると先輩方からも伺うので、それを実践しています。
もちろん現役時代のほうが身体はキレキレですし、迫力があったと思うのですが、今はすごく、精神と肉体がリンクしていて、今だからこそ踊れるダンスがあるのかなと。なので、体力が続く限り、踊っていけたらと思っています」

――素敵ですね! ちなみに基礎的な訓練とは、どんなことをされているのでしょうか。
湖月「(振付家の)前田清実先生には、「とにかく基礎はクラシックなので、やはりそのレッスンを受けておけば、どんな振付もその体でできるよ」と言っていただき、ピラティスとバレエを続けています。
そして私は身長が174cmと高いので、腰が浮くと、大きいからこそ格好悪くなってしまう。だから下半身の強化は必要だと思っています。宝塚在団中は毎日のように娘役さんをリフトし、それが日々筋トレ、みたいな感じだったのですが(笑)。今はパーソナルジムで、下半身を重点的にトレーニングしています」
荻田「筋肉は大事だよね(笑)」
湖月「そう、筋肉は裏切らないです!」
◇ ◇
荻田浩一氏が構成・演出する『TUMBLEWEED』では、湖月がかつて演じた伝説の女性ガンマン「カラミティ・ジェーン」の物語を、朗読×ダンス×歌で新たに創作。元雪組男役スターの彩凪翔と、声優や俳優として活躍する朴璐美が共演する。さらに湖月と縁あるゲストを迎えたスペシャルショーも披露。その詳しい内容を伺った、第2弾の対談インタビューも後日公開予定。
本作は2026年11月に、「宝塚バウホール」(兵庫県宝塚市)、「よみうり大手町ホール」(東京都千代田区)、「御園座」(愛知県名古屋市)で上演される。
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