人気店が閉店して12年…神戸・板宿で「焼菓子専門店」として復活

棚にはタルト、チーズケーキ、ビクトリアケーキなど10~15種のお菓子が並ぶ
西宮・苦楽園で話題だった人気パティスリーが閉店してから12年。移転情報もウワサもなく、当時お店で人気だった焼き菓子「ファーブルトン」をもう食べられないと思っていたら…。板宿で「Star焼菓子研究所」(神戸市須磨区)として2025年3月に復活し、日々売り切れるほど人気らしいというウワサ。オーナーシェフ雑部博祥さんに、“空白の期間”についても取材しました。
■雑誌の表紙を飾ったこともある人気店
雑部シェフが「ポワソンダブリル」(以下、「ポワソン」)を1995年にオープンした頃、世の中はスイーツ&パティシエブームの走り。テレビや雑誌でもパティスリーのスターシェフが頻繁に取り上げられ、雑誌片手にパティスリー巡りを楽しむ人も多く見受けられた時代でした。もちろん「ポワソン」も、人気店として注目されていました。
数々の取材を受け、看板商品の一つであった「ファーブルトン」も注目を集めました。フランス・ブルターニュの郷土菓子で、堅焼きプリンのような食感、プルーンがアクセントのお菓子です。当時は珍しく、かわいいタルトのようなビジュアルで、関西の女性情報雑誌「SAVVY」の表紙を飾ったことも。はたからは前途洋々に見えた「ポワソン」ですが、2013年に惜しまれながら閉店することに。
■転職を続けていたら…思わぬ事態に
「理由の一つは、リーマンショックです。経営コンサルタントに相談したり、お菓子の価格を下げたり、もがいてもみましたが…。潔く店を閉めて職に就こうと思ったんです。47歳なら再就職ができると思ったんです」
オーナーから、雇われシェフとしての道を選ぶと、「うちの店でシェフパティシエとして働いてください」「ホテルのパティスリー部門を任せたい」と依頼は数え切れないほど。転職にも困ることなく、職場を転々としていきました。
「48歳から60歳まで、さまざまな職場で働くものの、なかなか続かなかったというのも事実なんです。そして、仕事は年を重ねれば重ねるほど、給料、ポジションなど条件が難しくなっていきました」
さらに、不整脈、狭心症で緊急手術を2回、離婚…と私生活でさまざまな出来事が重なります。
「『心臓が悪い人は雇うことができない』と言われたときには、『そりゃそうだな』と…自分が逆の立場でも同じことを言ったと思います。でも、ぼーっとしているわけにもいかない。派遣会社に登録し、食以外の仕事をしながら、2カ月に一度の検診に通い、貯金を切り崩す日々を過ごしていました」
■還暦を迎えたときに出会いが!
お菓子づくりの仕事をあきらめていたさなか、2024年11月に還暦を迎えたシェフ。通勤途中に偶然見つけた空き物件を目にしたときに、直感が働いたといいます。四つ角にあるガラス張りで元呉服屋という物件でした。すぐに不動産屋を訪ねて内見。

「やっぱり、ケーキに対する情熱は消えていなくて。ここで『ポワソン』ではできなかったこともしてみたいなとイメージが膨らんできました。かつてと比べると3分の1くらいの坪数。ほんと小さいんですけどね、ガラス張りで通りから中が見えるところも気に入って、気がつくと借りていました!」
一国の城を持つことができたオーナーパティシエの笑顔は明るく、本当に楽しそうです。
店名通り焼き菓子のみのラインアップに。「学生時代、フランス・リヨンにあるオーベルジュで住み込みで働かせてもらっていたのですが、そのときに経験した郷土菓子の魅力を伝えていきたいと思ったんです。焼き菓子は、僕のお菓子の原点なんです」とシェフ。

そして、もうひとつの理由は、「パティスリー『メゾン・ド・デセール』さんがご近所さん。70代のシェフが作るケーキ(生菓子)がおいしいので、うちは焼き菓子のみに絞りました」。周辺の同業者へのリスペクトと配慮、温かい心遣いからの決断でした。
オープンキッチンで焼き上がったお菓子をどんどん棚に並べ、タイミングよければ試食も振る舞ってくれます。
小さな店内に、ガレットブルトンヌ(380円)、ガトーナンテ(430円)、フィナンシェ(180円)と、フランス菓子らしいものから、イギリス菓子のビクトリアケーキ、ガトーショコラ、チーズケーキ、ブラウニーまで、幅広いラインアップで所狭しと並びます。もちろんスペシャリテのファーブルトン(150円)も健在。

最近、焼き菓子の価格が高騰していますが、日々のおやつとしていただける価格帯にも驚きでした。
「お菓子を作りながら、ガラス越しに手を振りあったり、感想を教えてもらったり。板宿だからこそ広がる、フレンドリーな人のつながりを感じています。お菓子をつくる楽しさやお菓子のおいしさをダイレクトに伝えられる今のお店がいいな、楽しいなと。これまでで『いちばん幸せ』と感じています。寝る時間なくてフラフラですけど(苦笑)」。

「これからの人生、お菓子をつくって生きていこうと思います」と、楽しそうな雑部シェフに会いに行きたくなる「Star焼き菓子研究所」。営業は10時30分~19時30分、火・水曜定休。山陽電車・板宿駅から南へ5分。
取材・文・写真(一部)/いなだみほ
「Star焼菓子研究所」
2025年3月15日オープン
住所:兵庫県神戸市須磨区大田町3-4-22
営業時間:10:30~19:30 火・水曜休
電話:078-771-1567
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