「人生最高の日」80歳が尼崎で初マサラ体験「RRR」で親孝行?

9時間前

「ナートゥ」で劇場が一体に(画像提供:関西キネマ倶楽部 塚口サンサン劇場にて)

(写真17枚)

インド本国のみならず、全世界で大ヒット。日本でも1年を超えるロングランを記録し、「宝塚歌劇団」星組で舞台化もされた大人気映画『RRR』。本作のメイキング・ドキュメンタリー映画『RRR ビハインド&ビヨンド』の公開と、ラージャマウリ監督の来日を寿ぐ、マサラ上映イベントが、4月19日に映画ファンにおなじみの「塚口サンサン劇場」(尼崎市)で開催された。本作でビームを演じた、NTR Jr.さんの5月20日、42歳のお誕生日を記念し、この日を模様を振り返る。

『今年も塚口ナートゥ』と題する同館での15回目となる『RRR』のイベントは、声援や鈴などの鳴り物、クラッカー、紙吹雪などで参加者同士で劇場を盛り上げる、通常の映画上映とは異なる独自の「マサラ上映」スタイルだ。

上映前、同劇場の戸村さんは「皆さん参加してくれないんじゃないかと思って、ガラガラになったらどうしようとドキドキで・・・。発売前は不安でいっぱいだったんです」と言う。しかし、そんな心配もよそに、今回もチケットは発売直後2分で即完売。涙を呑む人も多かったようだ。

そして、シアターが開場すると、思い思いの出で立ちで、個性いっぱいの参加者が続々入場。ラーマ、ビーム、ラージャマウリ監督のコスプレ勢に、華やかなサリー姿の参加者、そして、どこかでみたことがあるあの像を模した超力作も登場し、どんどん劇場内は賑やかに。

あれ、この金の像は!?(塚口サンサン劇場)
あれ、この金の像は!?(塚口サンサン劇場にて)
この金の像はシアターの最前列に鎮座(塚口サンサン劇場)
コスプレしてても、してなくても。みんな仲良くマサラ上映を楽しみます(塚口サンサン劇場にて)

◆ 御年80歳で、『RRR』のマサラ上映に初挑戦

今回、80歳で初めて参加した人物がいた。今回初めて『RRR』を鑑賞し、マサラ上映にも初挑戦することになったご夫婦。お父さんは御年80歳。

その理由は、息子さん夫婦の「激推し」。息子さんに話を聞くと「大好きな塚口のマサラ上映の盛り上がりを、父母にもどうしても一度でいいから体験してほしくて・・・」とのこと。家族にも自担を推しまくる、塚口ガチ勢だった。4人分のチケットを確保できたのも、何気にすごい。

「まずは鈴がいる、って言われて、購入しました!」と、ドキドキの初体験を前にマサラ上映に必要なアイテムをゲットし、腕に装着。シアター前で、今日息子さんに買ってもらったという新しい携帯電話で記念撮影もして、準備万端だ。

息子さん夫婦と一緒にはじめて劇場入り(塚口サンサン劇場にて)
息子さん夫婦と一緒にはじめて劇場入り(塚口サンサン劇場にて)
上映待ちの間もほかの参加者とおしゃべりを楽しむ(塚口サンサン劇場)
上映待ちの間も参加者とおしゃべり。とんでもないわちゃわちゃ感にふたりがドン引きしてないか、筆者も勝手に心配していたものの楽しそう…。良かった!(塚口サンサン劇場)

◆ ヤムナー川よりも深い、参加者たちの「RRR愛」そして「サンサン劇場愛」

栄養補給はタージマハル エベレストのカレーで(塚口サンサン劇場にて)

このイベントの恒例、上映前に前説を行うのは同劇場の戸村さん。劇場の真ん中通路を走って入場してくると、大歓声と大量の紙吹雪に包まれた。ステージに立つ戸村さんの姿に「トムお帰り~」の声。

そして、カラフルな紙吹雪の中には、サンサン劇場の太陽を模したキャラクターの形に切られたオレンジ色の紙吹雪も。筆者の頭上にも、この愛の塊が降ってきてびっくり。参加者たちの「サンサン劇場愛」は、ヤムナー川よりも深いのだ。

同劇場の戸村さんが、「ナートゥ」のダンスレクチャー(塚口サンサン劇場)
同劇場の戸村さんが、「ナートゥ」のダンスレクチャー(塚口サンサン劇場)

いよいよ『塚口ナートゥ』本編がスタートすると、マッリの歌に寄り添うように、鈴の音がやさしく鳴り、主人公のラーマとビームのパンチの数だけ無数のクラッカーが響く。主な登場人物だけでなく、名もなきイギリス兵の敬礼の足音にも、バッチリとあわせてくる。すばらしいクラッカー芸には、度々笑いが起きていた。

「ナートゥ」で劇場が一体に(画像提供:関西キネマ倶楽部 塚口サンサン劇場にて)
「ドスティ~~~!」(画像提供:関西キネマ倶楽部 塚口サンサン劇場にて)

ラーマの登場シーンに赤い紙吹雪、ビームの登場シーンには青い紙吹雪が舞い、ついに出会った2人ががっちりと握手をするシーンには、赤青だけでなく、インド国旗の3色カラーが高く舞い上がる。

そのほか、ジェニーの登場にピンク、ヴェンカタ父さんの活躍に白、ビームのむち打ちのシーンでは緑、ラストのお花畑のシーンでは、黄色。ラーマが釘を撒くシーンは、茶色で表現。シーンにあわせた紙吹雪の色彩が美しい。さらに色だけでなく、それぞれのモチーフを象った紙吹雪も次々に落ちてくる。これはもう「人力4DX」では?

ハイレベルな紙吹雪芸が展開された(塚口サンサン劇場にて)
超ハイレベルな紙吹雪芸が展開された。実際に現地で採取した紙吹雪の一部(塚口サンサン劇場にて)

そして、イギリス人のジェイクがタンゴ、スウィング、フラメンコを次々披露し始めると、客席のみんなもちょっとソワソワ・・・ラーマの「ナートゥをご存じか?」のセリフを合図に、「待ってました!」と全員起立。

戸村さんも後方から勢いよく躍り出てきて、その後は全員で怒涛ナートゥダンスだ。スクリーンのラーマとビームとともに参加者も力いっぱい踊り、手をたたき、紙吹雪を撒き続ける。これまで15回重ねてきたイベントだけに、劇場を包む一体感がすごい。

「ナートゥ」で劇場が一体に(画像提供:関西キネマ倶楽部 塚口サンサン劇場にて)
「ナートゥ」で劇場が一体に(画像提供:関西キネマ倶楽部 塚口サンサン劇場にて)

劇場内のボルテージが最高潮に達したのは、森の中での最終決戦。英国の司令官・エドワードの「撃ち方ヤメ」のセリフに、今回も最大の悪ふざけで応える参加者たち。過去最長・最多かと思われる多数クラッカーが打ち鳴らされ、スコット総督の指令はむなしくかき消された。

そして、最終形態の「神ラーマ」の登場に悲鳴に近い歓声があがり、劇場一体になって「ラーマン! ビーマン!」コールがスタート。筆者は紙吹雪でほとんどスクリーンが見えない状況になった。前から2列目にいるのに、まさかだ。

ラージャマウリ監督登場にこの紙吹雪(塚口サンサン劇場にて)
ラージャマウリ監督登場にこの紙吹雪、最後も劇場が一体に(画像提供:関西キネマ倶楽部 塚口サンサン劇場にて)

最後は、エンドロールの『Etthara Jenda(エッタラ・ジェンダ)』でインドの英雄たちと、創造神・ラージャマウリ監督を、歌い踊って称える。参加者ひとりひとりが、与えられるだけでなく、抜群のサービス精神と気遣いをもって、映画の世界を客席で体現し続ける3時間だった。

上映終了直後
の様子(塚口サンサン劇場にて)
上映終了直後の様子(塚口サンサン劇場にて)

◆ 80歳のお父さん、「ナートゥをご存じになる」

そんな混沌とした3時間だったが、最初に出会ったお父さんは無事だっただろうか・・・。楽しめたか聞きにいくと、「面白かった! 最高だった! たくさん声も出しました。今日は、人生で最高の日になりましたよ」と満面の笑みでピースサイン。

「今日誘ってもらってよかった。本当に自慢の息子なんですよ・・・今日の映画もなんですけど・・・」と語り始め、息子さんも「80年の人生で一番楽しかったみたい。また絶対に来たいと言ってました。でも興奮して話が止まらなくなっちゃって・・・」と苦笑い。とにかく、息子さんの「推し活」は大成功。『RRR』で親孝行、最高です。

上映後、80歳のお父さんの最高な笑顔がみれました。腕にはしっかり鈴、サスペンダーも(塚口サンサン劇場)

その後も、お父さんたちは、ほかの参加者たちと記念撮影をするなどし、帰り際に「次もまた、劇場で会いましょうね」とがっちりと握手。国も世代もすべてを超越する『RRR』という映画のすごさを、改めて感じた。

上映終了後に
みんなで記念撮影(塚口サンサン劇場にて)
上映終了後にみんなで記念撮影。お父さんお母さんも初参加者も一緒に(塚口サンサン劇場にて)

「いくつになっても新しいことに挑戦し続けたい」。そんな気持ちを持ちながらも、年齢を重ねると新しいことや場所が「ちょっとめんどくさい」となることもあるだろう。しかし、その気持ちを乗り越えた先に、新しい世界が待っているのかもしれない。

◆ 戸村さん『今年も塚口ナートゥ』どうでしたか?

上映直後の戸村さんを直撃インタビュー。まず出てきたのは参加者への感謝の気持ちだ。

「参加者がいなければ、こんなことはできないわけで、感謝の気持ちでいっぱい。15回目の開催となり、お客さんのクリエイティビティがどんどんアップデートされているのを感じます。こちらは場をつくっているけれども、参加するお客さんたちの映画愛に、しっかり道を作ってもらっていると、改めて感じました。いつもですけど、初参加の方をみんなでやさしく迎える雰囲気もあってよかったですね」と話す。

はじめての人大歓迎!やさしい世界(塚口サンサン劇場)
「初参加です」を持参した初参加者も。上映後には、一人で観るよりいろんな感情が何倍にも膨らんだ、と語ってくれた(塚口サンサン劇場にて)

またこれまでを振りかえり、「いままで決して順調だったわけでなく、いろいろあってここまできた。クレームだってたくさんあるし、スベって落ち込むこともある。だから私も勉強をやめることなく、今まで以上に学んでいきたい。至らない点があれば、お客さんにも指摘してもらって、しっかり修正していきたいと思う。できる限りみなさんのご期待に応える劇場にしていきたい」と、思いを語ってくれた。

これからどんな企画が登場するか、それにどのように参加者が応えていくか、「塚口サンサン劇場」のこれからが楽しみだ。

取材・文・写真/Lmaga.jp編集部

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