【光る君へ】兼家の恐ろしさに呆然、ヒール・道兼には同情も
平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。1月14日放送の第2回『めぐりあい』では、成人を迎えたまひろと道長の再会にほのぼのとする一方、出世に本気を出してきた藤原兼家の仁義なき謀略の数々に、呆然とする展開となった(以下、ネタバレあり)。
■ 第2回「めぐりあい」
母・ちやは(国仲涼子)が藤原道兼(玉置玲央)の凶刃に倒れてから6年。成人したまひろは、絵師(三遊亭小遊三)の元で、ほかの人のために歌を代筆することを生きがいにしていた。あるとき、子どもの頃にしばしば会っていた三郎(藤原道長/柄本佑)と街角で偶然再会。まひろは現在代筆業をしていることを明かし、三郎はそこを訪ねることを誓う。
しかし代筆業をしていることが、乳母・いと(信川清順)を通じて、父・藤原為時(岸谷五朗)に露呈。為時は絵師に手を回し、その居場所をなくしたが、そんな時に三郎が来訪。家を抜け出していたまひろが、散楽の直秀(毎熊克哉)を追っていた放免(検非違使直属の下級役人)に適当な方向を指し示すと、放免がとらえたのはちょうどその場にいた三郎だった・・・。
■ 平安貴族のダークサイドに震え上がる
衝撃の展開が過ぎた子役時代の1話を終え、第2話から待望の吉高&柄本が登場。そしてサブタイ通り早々に、少女漫画のような「めぐりあい」を実現し、SNSは「まひろが道長の言葉で自分の気持ちに気づいていく様が、なんとも可愛らしく愛おしい」「『好きな人がいるならいい歌を作ってあげるわ』 いや多分道長が好きなのは君だよ」「こんなの見せられたら成就祈願しちゃうんですけど?!」などの胸キュンの言葉が飛び交った。
しかしそんな平安ボーイミーツガールの爽やかさを上書きするように、平安貴族たちの政治抗争の厳しさに、視聴者があらためて震え上がることとなった今回。前回コラムで、「娘が帝の皇子を産むことが出世の最短ルート」という話をしたが、道長の父・兼家(段田安則)は、娘が円融帝唯一の皇子を産んだことで、見事にそのルートが開けた。しかし一刻も早く孫を即位させるために、実家に引き取って人質にすることを目論んだり、帝にこっそり毒を盛ったり・・・前回の不妊の呪詛に続き、今回もやりたい放題だ。
SNSでも、「明るくて楽しいシーンは少女向けラノベみたいなのに、ひと皮むけば兼家が帝に毒盛ってるバイオレンス平安」「隙あらば帝を弑しようと画策するマフィアのドンみたいな兼家」「懐仁(親王)を連れて東三条殿(実家)に帰ってこい。孫を手元に置いて人質にして、円融天皇に退位を迫るって、兼家ほんま兼家」「貴族でもやってることが893そのもの」など、そのダークサイドに震え上がる声が続出した。
■ 兼家の行動に呆然、ヒール・道兼に同情も
その兼家の恐ろしさがピークになったのは、帝に毒を盛る役割を、次男の道兼に命じたときだ。道兼がまひろの母を殺したことをしっかりキャッチしてその現場を目撃した下男を始末し、「お前のために我が家全体が穢れちゃったんだから、その借りは返すよな?」とばかりに、汚れ仕事を押し付ける。道兼の暴走だけでもショックだったのに、それが兼家にとって最高の汚れ役を手に入れる、絶好の機会になるとは、なんともエグい伏線だった。
SNSでも、「あのときの道兼の従者も始末したって、ええー! 民草の命が軽い!」「道兼さんヤベーとか思ってたら、兼家さんがさらにヤベーやつだった」「(安倍)晴明に呪わせるだけでなく、息子に汚れ仕事をさせる兼家父ちゃんよ」「毒親Level100すぎる。道兼以上に闇に染まっているのこの人だ」「やっぱカエルの親はカエル」などの、呆然としたような言葉が並んだ。
そして本作最強のヒールなのかと思いきや、一転して気の毒キャラに転じることになった道兼には、「前回から弾除け扱いされたけど、えぐい使い方されてんな」「なんてことだ。穢れの多重債務者になってしまったのか、道兼」「初回にあの所業で怒りしか覚えなかった道兼に、ほんのり同情する第2回になるとは思わなかった」「道兼を見届けるために視聴継続を決めた」という、あわれみのような声が集まった。
脚本の大石静が、「戦がある時代に匹敵するくらいスリリングに描けるのではないか」と語っていた平安貴族の世界だが、確かに自ら刀を振るうか否かの違いだけで、武家と同じぐらい・・・いや、自分で直接手を汚さないよう周到に立ち回る分、陰湿度は貴族の方がはるかに上ということを、たった2回ですっかり植え付けることに成功した。まひろと道長もいつかはこの世界に巻き込まれるのだろうが、それまでは存分に純粋にキュンキュンしておいてもらいたいと願う。
『光る君へ』はNHK総合で日曜・夜8時から、NHKBSでは夕方6時から、BSP4Kは昼12時15分からの放送。第3回『謎の男』では、囚われの身となった道長を案じる一方で、兼家の計略で間者のような役割を引き受けることになったまひろの姿が描かれる。
文/吉永美和子
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