タローマン藤井亮の新作、暗黒帝国アジャスター撮影現場に潜入

2023.11.6 11:01

「暗黒帝国アジャスター」を構成する怪人たち。基地のしつらえにそれぞれ悩みを持っているらしいが…?

(写真9枚)

1970年代の特撮テレビ番組の雰囲気を徹底的に再現しつつ、岡本太郎の言葉と作品を伝えるという斬新な番組『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』(Eテレ)や、作品すべてが嘘という企画展『大嘘博物館』などを手がけ、今もっとも注目を集める映像作家・藤井亮さん。

10月某日、ファン待望ともいえる彼の最新作の撮影が極秘でおこなわれるとの情報をキャッチし、大阪市内某所の現場スタジオに急行。独特の特撮スタイルの映像がどんなふうに作られるのか・・・撮影のようすを独占でお届けしたい(取材・文・写真/脈脈子)。

■ 怪しい照明のなか、おこなわれていた撮影

撮影現場は古めかしいビルの一角にあった。コンクリートむき出しの壁、無造作に積み上げられた廃材・・・。廃墟風にしつらえられたスタジオ内には30人ほどの大人がひしめいていた。

照明やカメラなどゴツい機材の数々のなかで、埋もれることなく異彩を放つショッキングピンクの物体。「ラブリーコングだ!」。関係筋から入手した藤井さん直筆のラフ画が、そのまま立体になっていた。

撮影の様子(中央が藤井亮監督)。ラブリーコングの趣味は、かわいい洋服をあつめることだそう

「ラブリーコング」は、突っ張り棒の国内トップシェアメーカー「平安伸銅工業」(大阪市西区)が手がけるDIYパーツブランド「ラブリコ」のプロモーションを担う怪人。頭には、映像公開を記念して発売される限定カラー・モーブピンク色をした「アジャスター」と呼ばれる部品が乗っている。藤井さんの新作とは、このアジャスターのプロモーション動画だ。

アジャスターは木材の上端に取り付け、床と天井でしっかり突っ張るためのものだが、「ラブリーコングもアジャストするんですか?」と投げかけてみると、「あれはもう、飾りですね」と藤井さん。ラブリーコングは突っ張らないそうだ。

誰でも手軽にDIYができるパーツ『ラブリコ』

■ 逆算から生まれた「暗黒帝国アジャスター」

極秘の撮影ということで、「ラブリーコング」なるキャラクターが出ること以外は謎に包まれていたが、撮影クルーたちの妙な会話から物語が少しづつ見えてくる。

「次のカットはテナントーですね」。

赤い衣装に身を包んだ、ひとつ目の怪人がカメラの前に現れる。テナントー? テナント? テナント・・・! 契約のもと不動産を借り受ける賃借人、テナント。彼はテナント物件のしつらえに悩んでいて、そこで「ラブリコ」が活躍するのではないか? そんなストーリーが自然と浮かぶ。

チラリ覗く生身の口元。藤井さんの作品ではおなじみの、あの人である

「ラブリコを使って解決したい困りごとから、逆算で考えていった」(藤井)という新作。世界征服を目論む「暗黒帝国アジャスター」の基地は、「ヤヌシ神オーヤー」から借り受けた賃貸物件。使い勝手の悪さを訴える怪人たちは、この悩みをどう解決するのか? これがストーリーの大筋だ。

■ 緩急がスゴイ、プロ集団の仕事を目撃

ストーリーが分かると、目の前で繰り広げられるひとつひとつのカットが可笑しくてニヤリとしてしまうが、撮影クルーたちはいたって真剣。微妙な光量、光色、カメラ位置、小道具の角度、スモークの量やタイミング、演者の立ち位置、画角。それぞれにこまかな調整を重ね、「よりよいものを創ってやろう」という気概に溢れている。

ひときわ目をひくのは「多足怪人オクトパシー」(中央)。伝統的なやり方で操られている

カットがかかるたびに笑いが起き、ひとたび本番テイクのカチンコが鳴ると、またグッと場が引き締まり全員が固唾を呑んで見守る。この緩急! これまでにも、藤井さんと数々の作品を一緒に作ってきたというチーム。まさにプロ集団の仕事ぶりを目の当たりにしたのだった。

なんの変哲もない、と言ってしまうとこのビルの「ヤヌシ神オーヤー」に失礼だが、ここでとんでもない作品が生み出されていようとは誰が想像するだろうか。撮影は延べ2日間にわたり、深夜まで及んだという。

動画になれば2〜3秒のカットでも、いっさいの妥協なくテイクが重ねられていく様子を見た以上、完成版は隅々まで見逃せない。プロたちが作りあげた素材はどう仕上げられたのか、その丁寧な仕事ぶりを細部まで刮目されたし。

暗黒帝国で「ラブリコ」はどう活躍するのか? その全貌は、平安伸銅工業の公式YouTubeチャンネルで観ることができる。

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