【どうする家康】サイコパスに振り切った、ムロ秀吉の最期

2023.10.17 17:00

『どうする家康』第39回より、無責任な言葉を発する秀吉(ムロツヨシ)につかみかかる家康(松本潤)(C)NHK

(写真5枚)

古沢良太脚本・松本潤主演で、徳川家康の厳しい選択だらけの人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。10月15日放送の第39回『太閤、くたばる』では、豊臣秀吉が秀吉らしく「くたばる」姿に圧倒されたとの声とともに、異端の役を演じきったムロツヨシへの賛辞もあふれた(以下、ネタバレあり)。

■ どうする家康、秀吉の無責任ぶり

明国に無茶な和議案を突きつけるが、それが決裂したことを理由に、二度目の唐入りを諸大名に命じる豊臣秀吉(ムロツヨシ)。しかし、再び天下安寧に陰りが見えはじめたころ、突然倒れてしまう。

『どうする家康』第39回より、二度目の朝鮮出兵を下す豊臣秀吉(ムロツヨシ)(C)NHK

死期を悟った秀吉は家康を呼び出すが、そこで語るのはただただ息子・秀頼を案じることばかりで、家康は「最後まで天下人の役目を全うされよ」と秀吉を諭した。

それを受け、「世の安寧など知ったことか。なんもかんも放り出して、わしはくたばる」と言い放つ秀吉。家康は、「まだ死なさんぞ。大嫌いじゃ!」と怒りをぶつける。

すると秀吉は家康が好きだったと告げ、信長が譲るはずだった天下をかすめとったことを詫びる。そして、「天下はどうせおめえに取られる。うまくやりなされや」と言い遺し、家康もそれを受け入れるのだった・・・。

■ 今回の秀吉らしい退場「くたばる」

初登場時から、ひょうきんな立ち振舞の間にフッとよぎる不気味さ&残忍さで「サイコパス」と恐れられたムロツヨシ版の秀吉。それゆえ家康にとっては、完全に敵役的な立ち位置にあったが、先週の予告で退場が示唆されると「さすがにサブタイの『くたばる』はひどくね?」という声が。しかしいざ蓋を開けてみると、確かにこのサブタイしかなかったと思えるほど、今回の秀吉らしい衝撃の退場となった。

『どうする家康』第39回より、茶々(北川景子)が見つめるなか血を吐き苦しむ秀吉(ムロツヨシ)(C)NHK
『どうする家康』第39回より、茶々(北川景子)が見つめるなか血を吐き苦しむ秀吉(ムロツヨシ)(C)NHK

唐入りによる大名たちの疲弊や、災害などに起因する治安の乱れで、同回で本多正信(松山ケンイチ)が述べた通り「乱世に逆戻り」と言うほど不安定だった秀吉政権の末期。それにケリを付けることも、お家の安泰を確信することもなく、寿命の限界が来てしまった秀吉が、自分から「わしはくたばる」と自嘲気味な言葉を使ったのは、その状況の哀れさを自覚していたからかもしれない。

SNSでも、「あの秀吉なら自分の死に様を『くたばる』と言いそう」「老いても欲望と才覚は昔のままという描き方にしたのすごいわ。これだけ生き汚い秀吉なら『くたばる』って表現がぴったり」「耄碌したというより、片隅に怜悧な判断力を残したまま、死期を悟って愉快犯的に死んでいったという感じで面白い」、などの感想が。

そして家康に、すべての後始末を頼むという別れにも「うまくやりなされ・・・秀吉の本音かな?」「家康に天下を渡す代わりに、面倒なこと押し付けて逃げ切る決着の仕方か」「『信長からも秀吉からも愛され、呪いを受けて、乱世を終わらせる役目を引き受けることになった家康』という肖像はうまいなー」などの、さまざまな考察が語られた。

■ サイコパスに振り切ったムロ秀吉

かつて取材で話を訊いたとき、「自分の得意分野(コメディ)を、突き詰めるぐらいの勢いでやり切ったら『逆が見たい』という人が、必ず現れる」という話をしていたムロツヨシ。

病床で家康を見つめる豊臣秀吉(ムロツヨシ)(C)NHK

まさに、「笑いをほぼ封印して、徹底的にサイコパスに振り切ったらどういうムロツヨシが見られるのか?」の究極の形態と言えるのが、この秀吉だったように思う。間違いなくシリアス系ムロの代表となるキャラのひとつであり、大河ドラマの伝説に残る豊臣秀吉だっただろう。

SNSでも「最期まで得体の知れない恐ろしさがあったムロ秀吉。見事でした」「死なせるには勿体無いほど物語を支配していた」「最高の秀吉様をありがとうございました!」などの、ねぎらいと感謝の言葉が。

ムロは公式サイトの動画でスピンオフを希望していたが、万が一実現するのであれば、「陽キャな人たらし」サイドに振り切ったムロ秀吉も見てみたいと願っている。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。10月22日放送の第40回『天下人家康』では、秀吉逝去後に家康がどんどんその存在感を増していくのと同時に、石田三成(中村七之助)と確執が生まれていく様子が描かれる。

文/吉永美和子

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